第505話 実験開始
さてと基本の準備は完成だ。後は推進力となるダイクさんに少し確認を取るべき事があるから、そこを確認してからだね。固定する為に重要だし、地味に気になるんだよなー。
「ダイクさん、大根って魔法砲撃はどこから撃つんだ?」
「ん? 葉っぱからでも行けるし、二股に分かれた根の先のどっちからでも行けるぜ。この感じなら、根を使った方が良さそうだな。……よし、こんなもんか」
「あー、なるほど。そういう感じか」
ダイクさんは岩の板の端に寝っ転がり、二股に分かれた大根の根を水のドームの外側に向けていく。ふむふむ、そこから魔法砲撃を使った風の昇華魔法を撃つんだな。
そういう事なら、固定すべきは大根の胴体というか中心部分か。……よし、岩の追加生成をしてダイクさんの固定も完了!
「ダイクさん、これで行けるか?」
「おう、行けるぞ! ケイさんも制御は頼んだぜ!」
「どのくらいの速度になるかは分からんけど、やるだけやってみる」
「みんな、覚悟はいいねー?」
「はーい!」
「妙にドキドキするかな」
「……あはは、まぁなる様になるよ」
ハーレさんは楽しそうに、サヤとヨッシさんは若干不安げに返事をしていた。さてと、俺も自分自身の固定はしっかりと完了。後は、風の昇華魔法がどれだけの推進力になるかが問題だな。勢いあり過ぎて制御しきれないとかならなきゃいいけど、こればっかりはやってみないと何とも言えないからね。
「よし、ダイクさん、任せた!」
「おうよ! 『魔法砲撃』『並列制御』『ウィンドクリエイト』『ウィンドクリエイト』」
そしてダイクさんの大根の根から荒れ狂う暴風が吹き出していく。それと同時に途轍もない勢いで加速が始まっていた。
「「いやっほー!」」
「「きゃー!?」」
「うぉ!? これは予想以上!」
「速すぎて操作がキツいぞ、これ!?」
思った以上の速度で森林深部を吹っ飛んでいく。……いやいや、速すぎて操作がヤバい!? これだと途中で操作が追いつかなくなって、変な方向に吹っ飛んでいくぞ!? なんとか方向性の制御を保たないと……。
あ、比較的安定する方法を発見。かなり制御がぎりぎりだけど、制御自体は風の推進力に逆らわず流れに乗るようにして、姿勢を保つ事を重視していれば制御可能な範囲だね。だけど岩の操作の時間可能が恐ろしい勢いで減ってるな……。
<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『ハイルング高原』に移動しました>
え、もうハイルング高原まで辿り着いたの!? これはいくら何でも速すぎる! 安定化させる為の手段を模索している間に到着なんですけど!?
「ちょ!? ケイさん、これ速すぎてやばくねぇ!?」
「ダイクさん、奇遇だな。俺もそう思ってたとこだ!」
そんな軽口を叩いている暇はないけどな! えーと、これは即座に対応しなければ凄い勢いで雪山まで突っ込んで行きそうだぞ。……くっ、仕方ない!
「東に方向転換してこのまま平原まで突っ切る!」
「え、出来るのかな!?」
あくまで推進力自体はダイクさんの風の昇華魔法だ。ダイクさん自身を岩に固定しているから、強引にでも方向性を変えれば……あ、やばい。そんなにもう操作可能な時間がないから、方向転換しても……。
「……やっぱ平原は無理かも……。岩の操作の時間がもう切れる……」
「「「「「……え?」」」」」
「って事で、上空に変更!」
もうあっという間の速度に岩の操作や水の防壁を合わせるのに精一杯だった。……うん、あまりにもこれは速すぎたね……。
とにかく速度があり過ぎるこの状態をどうにかする為に、固定用の岩と水の防壁を強引に上空へと誘導していく。とりあえずダイクさんの昇華魔法の効果切れ、早く頼む!
「きゃー!?」
「ヨッシ!? 大丈夫だよ!?」
「ケイ、いくら何でもこれは無茶苦茶過ぎないかな!?」
「……流石に昇華魔法を推進力に使うのはやり過ぎだったな……」
「……みたいだな」
何とか上空への軌道へと変更は出来たけども、まだダイクさんの風の昇華魔法は発動中である。……単独発動での昇華魔法でこれか……。魔法砲撃での威力強化もかかってるんだろうけど、迂闊に使えないな。……ただ、大急ぎで駆け付ける必要がある時はありといえばありか。
まぁ何とか雪山へ突っ込むコースは避けられたし、岩の操作はそろそろ切れるけど水の防壁を水のカーペットに変化させれば落下しても大丈夫だろう。
「ケイさん、前!?」
「レナさん、どした? って、あー!?」
レナさんに言われて目の前を確認してみれば、進行方向にタカの姿があった。……救いは黒いカーソルだって事くらいかな……。うん、もう避けられるタイミングじゃないね。すまん、タカよ。轢いていく!
<ダメージ判定が発生した為、『移動操作制御Ⅰ』は解除され、10分間再使用が不可になります>
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 48/68 → 48/70
そして空を飛んでいたタカに盛大にぶつかり水の防壁が消滅していき、ぶつかった勢いで吹き飛ばされたタカに追撃として、固定用の岩がぶつかってHPを消し飛ばしていた……。うん、あっという間の出来事でポリゴンになって砕け散って消えていったね。
<ケイが成長体・瘴気強化種を討伐しました>
<成長体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『理不尽な襲撃』を取得しました>
<スキル『奇襲強化Ⅰ』を取得しました>
<ケイ2ndが成長体・瘴気強化種を討伐しました>
<成長体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『理不尽な襲撃』を取得しました>
<スキル『奇襲強化Ⅰ』を取得しました>
え、なんか称号が手に入ったけど『理不尽な襲撃』って不名誉過ぎる称号だ! っていうか、奇襲の強化スキルってこんな取得条件だったの!? ……うん、確かに奇襲は奇襲だったけどさ。これは何かが違う気もする……。
「あっはっはっは! 『理不尽な襲撃』だって! 確かに、他のエリアから一気に吹っ飛んできて、避ける間もなく倒したら、そりゃ理不尽だよねー!」
「レナさん、笑い過ぎだって。で、風の昇華魔法の効果は切れたぞ」
「……色々思う所はあるけど、まずは降りるか」
かなりギリギリではあるけども、岩の操作の効果時間は残っている。ダイクさんの風の昇華魔法による上昇の勢いもなくなったので、とりあえず水平に戻して……あっ……!
「すまん、みんな!」
「わ!? 岩が消えたよー!?」
「ちょ!? 俺、魔力値0だからどうにも出来ないんだけど!?」
「あ、サヤさんはダイクをお願いー! わたしは自力でどうにかするから! 『アースクリエイト』『土の操作』!」
「分かったかな! ハーレは大丈夫?」
「私も大丈夫さー! 『上限発動指示:登録1』!」
「……助かったぜ、サヤさん」
「いえいえ、どういたしましてかな」
サヤの竜によってダイクさんは回収され、レナさんは自前で足場を作って降りていき、ハーレさんはクラゲをパラシュートにしてゆっくりと落下して、ヨッシさんはそもそも飛べるので問題なし。さて、みんなは大丈夫そうなので自分の対応をしていこうっと。
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 47/70 : 魔力値 194/200
<行動値を3消費して『土の操作Lv6』を発動します> 行動値 43/70
よし、まだ落下し始めだから、生成した石の足場で衝撃を受け止めるように操作すれば勢いを殺す事は普通に出来た。水魔法で防壁を展開しようかとも思ったけど、みんなもそれぞれの方法で降りているのでそこまでは必要ないだろう。
まぁそのまま落ちてても、ダメージ判定的に敵の攻撃判定は入ってないはずから、朦朧くらいにはなっても死にはしなかっただろうけどね。
とりあえず、地面に着地完了! そして目の前に立ち塞がるのはレナさんの姿である。……うん、無事だったとはいえ、さっきのはちょっとやりすぎ感は否定出来ない……。
「さてと、少し反省会でもしとく?」
「「どう考えても失敗でした! すみません!」」
「……あはは、ケイさんとダイクさんが思いっきり被ってるね」
うん、見事にここまでダイクさんと同じ台詞になるとは思わなかった。……でも、全く成果がない訳じゃないんだよね。
「ま、いっか。今回は大成果があったしね」
「そだねー! 奇襲の強化スキルの取得条件ってこんなのだったんだねー!」
「ん? あー、『奇襲強化Ⅰ』ってもしかして、複数の条件があんのか?」
「そうみたいだねー。これは私もちょっと予想外だったよー」
「え、レナさん、ダイクさん、それってどういう事?」
その言い方だと、他にも『奇襲強化Ⅰ』の取得方法があるみたいな……? え、もしかして他にも取得手段あるのか!?
「ある意味、こっちの方が難易度高い気はするけどねー。発見されたばっかだけど、他にもあるにはあるよ」
「えーと、確か敵に察知されてない状態から1撃で3割以上のHPを削るのを50回だっけな?」
「そうそう、それ。後はカウント期間の判定もあるんじゃないかって推測は出てるけどねー。回数だけならクリアしてるはずなのに、取れてないって人もいたみたいだしさー」
「そうなんだー!? 私も狙ってたけど、条件は満たしてなかったんだー!?」
ふむふむ、元々ハーレさんが狙ってた奇襲の強化の取得方法は既に確立されていたのか。やっぱり知らないとこで他の人が見つける事も多いですな。
でも、さっきの取得方法はまだ誰も見つけてない気はするね。見つかっていればレナさんかダイクさんが知ってそうな……って、あれ? 今回の『奇襲強化Ⅰ』って……。
「みんな、ごめん。話をするのは移動しながらでも良いかな?」
「あ、それもそうだな。移動はどうする?」
「それなら俺が水のカーペットを出すぜ。ケイさんのはしばらく使えんだろ」
「まぁ、そうなるな。よし、ここはダイクさんに任せた!」
「おう、任された。『移動操作制御』!」
ちょっと色々と確認したい事もあるけども、サヤの言う通り時間の都合もあるから移動しながらで良いだろう。……よし、全員ダイクさんの水のカーペットに乗り終えたね。
そういやあの状況でもしっかりとLv20の成長体を確保したままのレナさんは凄いものである。まぁハチとザリガニだから、大きくないっていうのもあるんだろうけどね。
「それじゃ、ダイク、出発だー!」
「おうよ!」
そうして、ネス湖の手前の平原を目指してハイルング高原を移動である。さてと、これで確認したい事を確認していけるね。
「さてと、さっきの『奇襲強化Ⅰ』なんだけど、反応的に全員が取得した?」
「うん、そうだねー! わたしも欲しかったところだから、ありがたかったよ」
「私も取得になってるかな」
「はい! 私もです!」
「私も同じく」
「俺もだな。これって、PTメンバー全員が取得判定になるのか?」
「……どうもそうみたいだな」
ちょっと不思議ではあるけども、乗り物としてあの状態にみんなが乗っていたから、全員の判定という事になるんだろうか? ふむ、一応推測は出来るけど取得条件がいまいち断定しきれないな。これは再現必須な感じだね。
「……あくまで推測だけど、エリアを跨ぐ程の長距離から攻撃を行うのが条件ってところか? 重要なのは発動時の敵との距離? んで、1人での実行は難しいから、PTメンバーも判定に入るようになってる……?」
「確かにケイだけでも、ダイクさんだけでも不可能ではあったかな」
「私もそう思います!」
「とりあえず、推論を含めて情報を上げて再現を頼んでみたらいいんじゃない?」
「……だな。よし、それじゃさっきの移動方法のやり方と注意点も含めて情報を上げとくか。レナさんも自分の専用欄上げとく?」
「んー、今回はケイさんとダイクの発見だから遠慮しとくよー」
「ほいよっと。それじゃ俺らの報告欄に上げとくわ」
そういう事なので忘れないうちにサクッと情報を上げてしまおう。まとめ機能を開いて……お、ベスタに頼んだ通りに『ビックリ情報箱』の後に『共同体名:グリーズ・リベルテ』と併記してくれてるね。
これで呼び名がグリーズ・リベルテに変わってくれれば良いんだけど、エンのとこでライさんを捕まえた時の周囲の反応を見た感じでは、それが可能なのか少し不安になってきた……。
さてと、そんな考え事をしながらだったけど、まとめへの情報提供は完了っと。これで誰かが再現をやってくれるだろう。……そういや『奇襲強化Ⅰ』の効果を見てなかったし、見ておくか。
『奇襲強化Ⅰ』
敵に認識される前に放った攻撃の威力や状態異常の成功確率が少し上昇する。
ほほう、少しの上昇ではあるみたいだけど、攻撃の威力と状態異常の強化はいいね。流石は理不尽な襲撃から得られるスキルである。そういやみんなに言う前に報告には書いちゃったけど、もう1つの気になってる事も話しておこうかな。
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