第504話 新たな移動手段の模索
「ふー、助かった、助かった! それじゃ俺は雪山の中立地点に用があるから、さらば!」
そうして、さっき捕獲したライさんは空中を足場に駆け出していった。え、空中を駆けてる!? 空中浮遊とはまた違った感じの移動の感じだけど小石でも足場に……している様子はないな。
「お、あれってペガサスとかで取れる『飛翔疾走』か? へぇー、カメレオンでも取れたんだな」
「ダイク、何か知ってるのー?」
「あー、そういやレナさんは小石を足場にする以外の空中移動方法は使ってないんだっけな。……大体、俺がその役目だったし……」
「ダイク、何か言ったかなー?」
「おう、言ったさ! 幼馴染って弱みにつけ込んで……はっ!? い、今のはなしで!」
「ダーイークー? なんでリアル情報をポロッと喋ってるのかなー?」
「ちょ!? すまん、今のは俺が盛大に悪かったー!」
「問答無用! 『魔力集中』『アースクリエイト』『並列制御』『土の操作』『連爪回蹴撃』!」
おー、ダイクさんがレナさんに蹴り上げられて、生成した小石を足場にどんどんと連続で蹴り上げていく。うわー、結構な高度まで蹴り上げられていったな、ダイクさん。
まぁ不用意にリアル情報を漏らしたダイクさんに全面的な非があるので、今回のはちょっとやりすぎ感はあるけど、自業自得ではあるな。
「ダイクさんとレナさんって、幼馴染なのか。なんとなく納得だな」
「あーあ、その情報を出す気は無かったんだけどなー。まぁ、ケイさん達の事なら割とわたし達も聞いてるから、内緒にしてくれるなら話してもいいよ」
「あ、それなら聞きたいかな!」
「私も聞きたいです!」
「……私も少し気になるかも」
「せっかくだし、聞いておくか」
なんだかサヤとハーレさんの食いつきが良いな? まぁかなり上空まで蹴飛ばされたダイクさんが落下してくるまでにちょっと時間もかかりそうだし、その間に聞いておこう。
「えっと、ダイクは私より2歳年下の幼馴染だよ。小さな頃はお姉ちゃんって慕ってきたのに、今は随分と生意気になっちゃってねー」
「ちょ!? レナさんが暴露すんの!?」
「先に喋ったの、誰だったっけー?」
「……はい、すみませんでした」
おっと、もっと降りてくるまでに時間がかかるかと思ったけど、あっという間にダイクさんが降りてきたね。水のカーペットに乗った上で、何か爆発的な推進力を得て来た感じだった。……まぁ勢い余って地面に激突して水のカーペットは解除になってたけども。
まぁこれで大雑把にだけど、ダイクさんがレナさんに連行されているという事が多い理由が分かった。リアルでの距離が近いからこそなんだろうね。
「とにかくその辺の話は良いから、灰のサファリ同盟に行こうぜ! ほら、レナさんもケイさん達も時間が無限にあるって訳じゃないんだしさ!」
「むぅ、まぁ今回は大目に見てあげましょ。って事で、ダイクの移動操作制御は使えなくなったし、ケイさんお願いできない?」
「ついさっきので思いっきり駄目になってるよな。よし、任された!」
移動操作制御ではなく通常で発動すればダイクさんも問題なく使えるだろうけど、ここは引き受けておくとしよう。
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 70/70 → 68/68(上限値使用:2)
よし、水のカーペットの生成完了っと。岩の板でも同じような事は出来るだろうけど、下が見えなくなる分だけ岩の板より水のカーペットが優秀だろうね。まぁ俺1人なら、最小限の大きさにしてというのもありだけど。
「それじゃみんな、乗ってくれ」
「ケイさん、代わりにサンキューな!」
「やっぱりケイさん考案の水のカーペットは良いねー!」
「アルさんのクジラも良いけど、私はこれも好きなのさー!」
「そだね。……あれ? サヤは乗らないの?」
「あ、うん。ちょっと試したい事があるんだ。やってもいいかな?」
「良いけど、試したい事って……あ、昨日、俺と一緒に取ったあれか!」
「うん、そうなるかな」
なるほど、昨日の青の群集の問題連中に報復する下準備の間に俺のロブスターとサヤの竜で全身を伸ばして大型化を取得したもんな。俺は昨日のうちに使ってみたけど、サヤはまだ使っていないから試しておきたいのだろう。
「それじゃいくね。『上限発動指示:登録1』!」
そうしてサヤがクマの方から竜の大型化を呼び出して発動していけば、次第に竜のサイズが大きくなっていく。ほうほう、今までのサヤの竜は70センチくらいだったけど、クマの背丈と同じくらいの大きさになったね。
この感じだと2メートルくらいかな? まだまだ大きくなれそうではあるけど、大型化を取得したばっかりでLv1だという事を考えたら充分大きくなったね。
「これでどうかな!」
サヤのクマが、大型化した竜に跨っていく。おー、これまでよりも安定感と威圧感が半端ないな。ふむふむ、見た目的にはかなりいい感じ。問題は移動速度だけど、竜自体がそれなりに早いのでよっぽど俺が飛ばしまくらなければ、多分大丈夫だろう。
「それじゃサヤの準備も済んだし、灰のサファリ同盟の本拠地に行きますか」
「「「「「おー!」」」」」
目的はレナさんが灰のサファリ同盟に預けているというLv20の成長体の2体を回収し、それから……あれ? 結局その後の目的地が決まってないような……。それについては移動しながら相談すればいいか。
という事で、灰のサファリ同盟の本拠地に出発である!
水のカーペットにみんなで乗って、その隣をサヤが竜に跨って飛んでいる。うん、今のところは問題なさそうだ。さてと今は空中だし周囲に誰かがいる様子もないから、ここなら大丈夫だろう。
「さっきライさんが来たので決め損ねたけど、フィールドボスの誕生はどこでやる?」
「はい! 赤の群集がもう情報を持ってるなら、ネス湖の手前の平原で良いと思います!」
「わたしはどこでもいいよー? 大体、どこも行ってるし」
「俺も同じく」
「……発火草茶で砂漠にも対応は出来ると思うけど、アイテムの消費は抑えたいね」
「あ、それもそうだね。それならやっぱりネス湖の手前の平原かな?」
「みんなの意見的にもそれが良さそうだな。よし、それじゃネス湖の手前の名も無き平原を目的地って事で!」
「うん、分かったかな! それなら成長体を回収したら、まずはハイルング高原だね」
「そうなるな」
「なんだか、ハイルング高原に行く事が多いねー!」
「まぁ、森林深部の隣接エリアだしね」
なんだかんだでハーレさんの言うようにハイルング高原へ行くことが多いけど、他のエリアへの移動経路になるんだから回数が多くなるのは当然といえば当然ではある。
……あ、そういや地味に森林深部の隣接の湿地エリアってまだ行った事ないな。まぁ特に用事もないから、別に良いか。
そんな風に目的地を決めている内に、灰のサファリ同盟の本拠地へとやってきた。……あれ、なんか竹を蔓か何かで結び合わせて骨組みを作り、その上に大きな葉っぱを敷き詰めた小屋のようなものが出来ているね。
そうか、灰のサファリ同盟はついに簡易的な感じのものとはいえ小屋まで作ってしまったのか。あー、その下でどうやらドライフルーツや葉っぱを乾燥させているみたいだね? お、報酬の竹のザルを活用しているっぽい。
なるほど、人工的な洞窟を作るとか聞いた気もするけど、方向性を変えて雨避け対策はこういう形にしたのか。流石にかなりの大雨だと対応しきれないけど、軽い雨ならこれで充分そうではある。
「えーと、ラックは今日はこっちにはいないはずだから……。うん、ちょっと手早く成長体を受け取ってくるね。サヤさん、乗せてってー!」
「あ、うん。分かったかな」
「ほいよっと。それじゃ上空で待機してるわ」
「了解でーす!」
レナさんはサヤのクマの肩に飛び移り、竜に乗った状態で灰のサファリ同盟の本拠地へと向かっていった。
そういやいつもラックさんが俺らの対応をしてくれてたから、ラックさん不在の時にやってきたのは地味に初めてか? ここには何度か訪れてはいるから顔見知りは多いけど、それほど親しい間柄の人はいなかったっけ。
まぁお互いに知ってはいるから普通に話は出来るけど、今は手早く済ませたいのでレナさんに任せるのが早いだろう。
それにしても随分とここの様子も変わったもんだな。大きな池には大量の癒水草が栽培されているみたいだし、崖上の畑に植わっているものの種類も増えている感じだね。……これは見つかったハーブの栽培も開始した感じかな?
「みんな、お待たせー! 受け取ってきたよー!」
「お、早かったな。……え、ハチとザリガニ……?」
「いやー、たまたま見つけてねー? この組み合わせ、面白そうじゃない?」
レナさんがそれぞれの手に持っているのは、まぁ特に変わった進化をしている様子のないハチとザリガニである。……これ、2体とも瘴気強化種かな?
「うん、どっちも瘴気強化種だね。とりあえず、詳しい話は移動しながらにしよっか」
「あー、それもそうだな」
時間を見てみれば一応まだ5時半もまだ来ていない。ハイルング高原を思いっきり飛ばしていけば、トラブルさえなければ6時までには討伐も出来るはず。……そうなると、サヤの竜ではまだ水のカーペットの移動速度には着いてこれないかな? 竜でログインしていて、自己強化と風属性の付与が出来れば違うかもしれないけども。
「よし、サヤ、竜の大型化は解除して、水のカーペットに乗ってくれ。全力の速度で操作するから」
「あ、うん、分かったかな」
「……さてと、ちょっと細工をするか」
水のカーペットをそのままで全力で動かせば、まず間違いなく勢いに負けて落下する。そうなると困るから、ここは手を加えて行こうじゃないか。
今回は下の視界は無視して、上空を盛大に飛んでいけばいい。ふっふっふ、ここでも岩の操作の出番だな。昨日のかまくら作りの時にロブスターの足を岩で埋めるのは安定感抜群だったもんな。あれを改良に加えてやろう。
「……ケイ、どうするのかな?」
「あー、ほら、昨日、俺が自分のロブスターの脚を岩で固定してたじゃん? あれをみんなにやろうかなって思ってな?」
「なるほど、速度に対する落ちない為の安全策って事か。そういう事ならケイさん、いい案があるぜ?」
「ほほう? どんな内容だ、ダイクさん?」
「俺を固定してくれるというのなら、俺が魔法砲撃での風の昇華で推進力を作ろうじゃねぇか」
「お、良いな、それ!」
ふむふむ、理屈としては前にサヤの竜で風を推進力に使えないかと目論んだ時のものと同じか。でも魔法砲撃での昇華となれば、推進力としては申し分なさ過ぎる。よし、その案は採用!
「ケイさん、速度の出し過ぎは要注意だよ!?」
「昨日も盛大にやり過ぎたしね……」
「なに、そうなのか?」
「……さーて、そんな事もあったような……?」
「あったんだな!?」
「まー、まー、良いじゃない、ダイク! 何事も検証あるのみだよ!」
「そうそう。レナさんの言う通り、限界を調べるという意味でも重要だからな! 大急ぎで移動したい時の手段にもなるしさ!」
「……確かにそれはそうかな?」
「まぁ今更と言えば今更だったね!?」
「あはは、それは確かにね」
「……なるほど、こうして色んな新発見が出てくるのか」
こら、そこのダイクさん。自分でも移動速度の強化の提案をしておいて、他人事みたいに言わない! 今回はダイクさんも共犯だからなー!
「それじゃ始めますか!」
「「「「「おー!」」」」」
みんなも何だかんだ言いながらも、やる気いっぱいだね。それじゃ早速、空中突撃移動の実験でも始めていくか!
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 67/68(上限値使用:2): 魔力値 197/200
<行動値を19消費して『岩の操作Lv3』を発動します> 行動値 48/68(上限値使用:2)
水のカーペットの上に岩の板を生成していき、みんなの脚周りを特に多目に生成して固定していく。そして水のカーペットの形を変化させ、その周囲をラグビーボールみたいな形にして、中は空洞に水のドームに形を変えていく。
土台と足場を固定する為の岩の板と、防風用の水のカーペットの応用利用。下部への視界は悪くはなるけど、そこ以外は水の防壁越しなので視界はそれなりに良好。
「おー!? なんかよく分かんないけど凄いことになってるー!?」
「ケイさん、私は固定が微妙みたいなんだけど……」
「あ、ホントだな……」
ふむ、ヨッシさんが一番小型という事と、元々飛んでいるという事で固定がしにくいね。ヨッシさん自身に氷の昇華で自分自身を固定してもらうという手段もある。だけど、かなり慣れてきた様子ではあるが、こういう速度系のものはヨッシさんは苦手だしな。
「よし、サヤ! ヨッシさんを抱えといてくれるか?」
「……そうだね、その方がよさそうかな。ヨッシはそれでいい?」
「確かにその方が良いかも。サヤ、お願いね」
これでヨッシさんの方の固定の問題は大丈夫。この移動手段は上手くいけばいいな。昨日の雪山での失敗を新たな手段として活かしていかないとね。
さてと、後は推進力となるダイクさんなんだけど、ちょっと確認しなければならない事があるのでまだ固定はしていないんだよね。そっちも調整していこうじゃないか!
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