第482話 次の予定へ
ベスタの指示で使ったスチームエクスプロージョンにより、若干暴徒となりかけた灰のサファリ同盟のみんなは落ち着きを取り戻していく。ふー、一時はどうなるかと思ったよ。
もしあのままだったならアルに乗って、全力で逃げるしかなかったもんな。ほんとにベスタは良いタイミングで来てくれたものである。
「ひとまずは落ち着いたみたいだな? お前ら、ケイ達に言う事があるだろう?」
「「「「「「「「「「すみませんでしたー!」」」」」」」」」」
うおっ!? この大人数で異口同音で謝られるとなんか迫力が凄いな!? うーん、まぁ悪気は無かっただろうし、こうやって謝ってくれるなら糾弾する必要もないか。
「そうだよー! 地形を荒らすのは良くても、さっきのは明確にマナー違反だからねー! ほら、ラックもちゃんと手綱は握っておいてよ?」
「……あはは、レナさんもごめんね。今回の件については後でしっかりと反省会をしておきます……」
そしてついさっき俺達の方に意識を逸らせて逃げていたレナさんが、しれっと戻ってきてラックさんにそんな事を言っていた。……うん、標的の変更から逃げに徹するまでの一連の動きは凄いと言っていいんだろうけど、褒める気は一切しないのは仕方ないよね……?
「……レナ、気持ちは分からんでもないがあの逃げ方もどうかと思うが?」
「いやー、ケイさん達なら大丈夫だと思ってね! それにほら、ベスタさんが来るのも見えてたし?」
「ちっ、気付いた上での行動か」
「レナさんって、あの状態でベスタが来てるのに気付いてたのか!?」
よくあの混乱状態から即座にベスタが来ている事に気付けたな、レナさん!? いやでも、ベスタが来ているのに気付いてたのなら、俺らに意識を移させたり逃げる必要も無かったのでは……?
「うん、まぁねー! それにしても流石ベスタさんだね! よっ! 灰の群集のリーダー!」
「……はぁ、まぁその件はいい。おい、灰のサファリ同盟、さっきの光景を見た限りだと次の群集イベントについてはやる気は充分だな?」
「さっきはついテンションが上がり過ぎたけど、それは間違いないぜ!」
「だよな! スクショのコンテストとか、気合が入らない訳がねぇ!」
「でも私達って強くないからねぇ……」
「……そうなんだよなぁ。つい強い人達が側にいたから暴走しちまった……」
「はいはい、みんなの意見は分かってるから! その辺りの護衛に関しては反省会をしてから、正式に依頼を検討するからね」
「ラックの言う通りか。まずは反省会だな」
「……そだね。こういうイベントが来た時に協力関係を築けるように色々後方支援も頑張ってたんだしね」
「ま、普通に楽しんでた側面もあるけどなー!」
そういえば灰のサファリ同盟の誕生の経緯は、自分達では出来ない事を他のプレイヤーにやってもらう事になるから、その支援をしようって事だったっけ。そして今回、サファリ系プレイヤーにとっては待望のイベントである。
そもそもスクショ機能が実装された直後に、いったんの増強が必要になるほど負担をかけたのはサファリ系プレイヤーだったりするもんな。全員が全員って訳でもないけど、拘りが強い人がいるのは間違いない。ちょっとやり過ぎだったとはいえ、テンションが上がる気持ちは分からなくもないし……。
「……さっきの事は水に流すか」
「ま、そうだな。ついテンションが上がるって気持ちも分からんでもないしな」
「そうだね。でもさっきのはビックリしたかな」
「あはは、私もそれは同感だよ」
「私は、みんなの気持ちがよーく分かります! 楽しみだもん!」
「まぁ、ハーレさん的にはそうなるよなー」
やっぱりハーレさんもサファリ系プレイヤーの1人という事なんだろう。まぁハーレさん自体が結構強めだし、俺らもいるからそこまで焦る事もないんだろうけどね。
そう考えてみると、灰のサファリ同盟は色々なアイテム作成とかで後方支援をしてくれているけども、戦闘ではそれほど強くないってのが最大の欠点か。ま、この辺は持ちつ持たれつになる訳だから、さっきみたいな強引な状況でなければ護衛を引き受けるのもいいだろうね。
「そうだよねー! わたしも分かるよ!」
「……レナさんって、結構図太いよな……」
「えへへ、褒めても何も出ないよー?」
「……褒めてはないんだけどね」
「それはそうとして、ケイさん達はこれからどうするのー?」
さらっとスルーしたよ、レナさん……。まぁお茶の検証も終わったんだし、次の行動に移っていかないと駄目だね。えーと現在時刻は9時半か。思ったよりは時間は経ってなかったようである。
アルの水流の操作の特訓については移動中でも可能だし、ここでの用件は済んだからヨッシさんの氷の昇華を取りに行くのがベストかな?
「これからの予定だけど、ヨッシさん、氷の昇華を取りに行くのでいい?」
「あ、うん。土器が火にかけても大丈夫なのも分かったし、属性持ちの草の用途もまだ限定的ではあるけど分かったからね。雪山に行けるならそれがありがたいかな?」
「おー! また雪山に出発だー!」
「今日は夜の日だから、前とは違った雰囲気もありそうかな?」
「そういやそうなるな。俺は道中で水流の操作を鍛えればそれでいいか」
「よし、それじゃこれから予定通りに雪山に出発だな」
反対意見も特にないというか、普通にみんなも乗り気だし、本来の予定ではあったからね。とりあえず今回は長時間の滞在は予定していないから、桜花さんのとこで氷の小結晶を数個交換してから出発になるね。
「なんだ、ケイ達は雪山に行くのか。そういう事なら、レナ、一緒に行ってやれ」
「およ? ベスタさん、それは別に良いけど、ケイさん達にわたしって必要?」
「いや、これから俺は灰のサファリ同盟やオオカミ組とかを集めて護衛に関しての最低限のルール決めをしておく。その都合でここのサファリ同盟のメンバーがすぐには雪山に行けないって、赤と青のサファリ同盟に伝えておいてくれ」
「あ、それもそっか。元々はこの後にみんなで行く予定だったもんね。赤も青も群集クエストで予定が変わってる可能性もあるから、その伝達役をすれば良いんだねー?」
「まぁそういう事だ。一番顔が広いのはレナだからな。一応フレンドコールでの連絡はしておく」
「あくまでわたし達はついでの伝言なんだねー! それじゃその役目は引き受けたって事で、ケイさん達もよろしくね!」
「ほいよ。レナさん、よろしく」
「よろしくな、レナさん」
「今日はレナさんが一緒だー!」
「特訓に続いて、よろしくかな」
「レナさん、よろしくね」
とりあえず雪山まではレナさんが同行していくという事で決定である。俺らは今の雪山の状態がどうなってるかを知らないけど、レナさんは知ってるだろうから案内自体は助かるね。
「それじゃ任せたぞ。灰のサファリ同盟、少し集まれ!」
「これから本格的な反省会か……」
「ま、自業自得だから仕方ないって」
「でもリーダーが来てくれて良かったとこではあるよな」
「まぁ、それは確かに」
「ほら、みんな! 反省会もするけど、本題は護衛の方だからね! 全力で楽しむ為にもしっかりしてよー!」
「そうだな、ラックの言う通りだ!」
「おっしゃ、反省してから今後の方針決定をしていかないとな!」
「これってオオカミ組も呼んだほうがいい?」
「他にも呼びかけても良いんじゃね? 小規模な共同体も多分結構あるだろ」
「あ、それもそうか。『ビックリ情報箱』も5人組だしな」
「固定PTがそのまま共同体になってるとこもあるみたいだしね」
「よし、ちょっと情報共有板で呼びかけてくる!」
「おいこら、お前はさっきの反省会に参加確定だろ」
「……あっ」
「冷静だった人で呼びかけかな?」
「異議なーし!」
「ま、それが無難というか、当然の流れか」
どうやら灰のサファリ同盟とベスタを筆頭にして、今後の護衛計画について詰めていく事で決定みたいだね。さっきの暴徒化でも全員が全員そうなった訳ではないから、冷静だった人達は反省会からは除外になるようである。ま、当たり前といえば当たり前だけど。
あっちはあっちで色々とこれからやるようなので、俺らは俺らで目的の事をやっていかないと。
「さてと、それじゃ一旦森林深部に戻って氷の小結晶を調達だな」
「あー、そういやそうだな。それじゃまずは桜花さんのとこに行くか」
「賛成ー!」
「トレードには何を使うかな?」
「さっき作ったお茶があるから、それでいいんじゃない? 桜花さんにサンプル代わりにトレードするのも良いと思うよ」
「あ、それいいねー! それじゃそうしようよ!」
ふむふむ、確かに検証したての成果物ならトレード品としては悪くはないね。ヨッシさんは大量に報酬で貰っているから追加生産にもついても問題ないし、現状では良い選択だろう。流石に全部を渡す訳でもないし、桜花さんとしても新しい成果物に関しては触れておきたいだろうしね。
「それじゃ、無駄足になっていけないから桜花さんのログイン状態を確認して、ログインしてたらフレンドコールをしておくよ」
「おうよ。ケイ、任せた!」
この時間帯なら多分桜花さんはログインしているとは思うけど、絶対とも言い切れないからね。それに桜花さんはメジロで出張取引に行ってることもあるので、この辺の確認はしておかないと駄目だよな。
えーと、フレンドコールをする為にフレンドリストを開いて……あれ? 進化の項目が点滅してるって事は、何か進化先の情報が出た?
「……ケイ、どうした?」
「あー、うん。メニューを開いたら、進化のとこが光ってる」
「およ? ケイさん、もう次の進化先情報が出たの?」
「おー!? 早いねー!」
「へぇ、もう出てきたりするんだな。……いや、進化階位が変わらない進化の可能性もあるのか」
「……その可能性もあるにはあるのか。ちょっとどういう内容か確認したいから時間もらってもいい?」
「おう、良いぜ」
「いいよー! わくわく!」
「確かに気になるかな?」
「そだね。確認してから動き始めるのでもいいよね」
よし、みんなの許可も出たという事で先に進化情報を確認していこうっと。さーて、どんな進化先が出たかな? 進化の項目を表示っと。
【進化】
増強進化ポイント 317P
融合進化ポイント 317P
生存進化ポイント 320P
《変異進化》
『自在操作ゴケ』
進化階位:成熟体
進化条件:未成体Lv30、応用スキルの『操作系スキルLv3』以上を4つ以上取得、増強進化ポイント150、融合進化ポイント150
直接自身で行う物理攻撃、魔法攻撃が共に威力が下がるが、他のものを操る事に特化したコケ。操作するものによって力を変えるコケの姿である。
なお、この進化の場合は支配進化中であれば支配進化は解除となる。
《転生進化》
現在、進化可能の経路は存在しません。
《複合進化》
【共生進化】
『同調になっているため、選択出来ません』
【融合進化】
現在、進化可能の経路は存在しません。
【支配進化】
現在、進化可能の経路は存在しません。
【合成進化】
現在、進化可能の経路は存在しません。
あ、進化ポイントについてはイベントが終わったからイベント期間中の獲得ポイントと、その前から持ってたポイントは合算されて普通の進化ポイントの扱いに変わったんだね。まぁ、イベントが終わったら提供のしようがないもんな。
さてと肝心なのは進化先か。あー、これは操作系に特化した進化先だな。応用スキルの操作系スキルLv3以上が4つって事は、水流の操作と、岩の操作と、光の操作と、さっき上がったばかりの砂の操作が該当か。流石に成熟体への進化となると条件や必要な進化ポイントの量も増えてるな。
コケの進化項目を見た時点で光も収まったから、ロブスターの方には解放された進化先はなさそうだね。そしてこの進化だとコケとロブスターは分離する進化になるんだな。支配進化から通常の単独ルートへ戻る事も可能なのか。
「ケイ、どうだ?」
「んー、まぁ微妙な進化先。今の同調の状態が解除されて、単独に戻る進化っぽい。ちなみに操作系に特化した感じの成熟体への変異進化。ま、Lvが足りないから現状では意味ないな」
「おー!? 支配進化からの同調って、進化する際に解除出来るんだ!?」
「ケイさん、条件的にはどんな感じ?」
「えっと、未成体Lv30、応用スキルの『操作系スキルLv3』以上を4つ以上取得、増強進化ポイント150、融合進化ポイント150ってなってるな。かなり条件は厳しくなってるぞ」
「Lv上限が上がってる分だけ、条件も多くなってる感じかな?」
「多分そうだろうな」
少なくともこれで未成体がLv30まで上がるのは確定だ。未成体の上限Lvが30っていうのはオフライン版でもそうだったけど、この先も同じようになっていくのかな? ……うん、まだ先の話になるし今は気にしなくても別に良いか。
そういやこの進化をした場合、ロブスターはどうなるんだろ? 同調が解除された状態で待機状態にでもなるのかな? まぁ、それについては気にしなくてもいいか。
「ま、この進化を選ぶ気はあんまないな。条件は分からないけど、今の支配進化からの同調のままで進化したいところだし。……多分あるよな、その進化ルート?」
「多分あるだろうし、ケイの場合だとその方が良いよな。次は俺も支配進化にしたいから、条件が判明したら情報は頼んだぜ」
「アルはキャラの切り替えも多いから、支配進化は向いてそうだよね。私は共生進化で続けて行きたいかな」
「私は前々から思ってたけど、ハチとウニの融合進化にしたいね。いまいちウニの使い勝手は良くないし……」
「ヨッシはあんまりウニは使ってないもんねー! 私はサヤと同じで共生進化を継続が希望です!」
「ほほう? みんなは次の進化の方向性は結構考えてるんだねー?」
「まぁな。そういうレナさんは?」
「わたし? わたしは火属性の蹴り特化で進化を進めていくよー!」
「あ、やっぱりそうなんだ」
レナさんは物理特化型ではあるけども、地味に火属性もあるんだよな。まぁ魔法よりはダメージ量は落ちるとはいえ、敵によっては属性ダメージも割と重要だったりするもんね。
ちらっとまとめを眺めた時に見た情報では、キャラ自体が属性を持ってて物理攻撃に属性が乗る場合だと物理判定らしいけどね。操作属性付与で付与した属性は魔法判定になるらしいけど。微妙な差異もあるもんだ。
さてと選ぶ気はない進化先ではあったけども、操作系の進化は支配進化に繋がってる感じではあったもんな。もうちょい何かの条件を満たせば、成熟体での支配進化の条件も出てくるかもしれない。
まぁ未成体Lv30になるにもまだ結構時間が掛かりそうだし、この辺は気長にやっていこうっと。とりあえず進化情報の確認は済んだし、改めて桜花さんにフレンドコールだね。
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