第446話 移動開始
ベスタからのこれからの活動方針が伝えられ、集まっている人達でPTを編成していく事になった。まぁ今回はPT単位で動くという事だし、俺らは特にその辺は気にしなくてもいいか。
「どっか3人PTと合わせられるとこ、居ないか?」
「あ、こっちも3人! 一緒にやらない?」
「お、いいぜ」
「それじゃよろしく」
「移動種の木が入れるPTってどっかない?」
「おう、こっち空いてるぜ!」
「お、それなら入れてもらっていい?」
「問題なし!」
「私達はもう揃ってるからもう出発しよう」
「だねー!」
「一番乗り、貰いっと!」
「あー!? 一番乗りはズルい!?」
「いやいや、別に競争してる訳じゃないんだからね」
軽く見渡してみただけでも、そんな光景が広がっていた。初めから6人フルで揃っているPTもいれば、ソロの人もいて、中途半端な3人PTや、俺らみたいに5人PTというところもある。この辺は多種多様なものだね。
さてと、俺らは俺らで準備をしていくか。……とりあえず俺は乾燥適応の種を交換しに荒野エリアに行ってこよう。
「それじゃちょっと荒野エリアに行ってくる。すぐ戻ってくるけどね」
「おう、了解だ。その間に俺が乾燥対策の地下湖の水を確保しとくわ。普段からストックしてる分も合わせたら充分だ」
「アル、その辺は任せた!」
俺以外は定期的に水分を摂っていれば良いという話なので、水の確保はアルに任せよう。アルは普段からそれなりの量の水は確保しているみたいだしね。それじゃ手早く荒野エリアに行ってから、ここに戻ってこようっと。
「ケイ、待った」
「サヤ、どした?」
「転移を使うなら、ここに戻ってくる必要もないんじゃないかな? 草原エリアの群集拠点種の前で合流にしない?」
「確かにその方が無駄がないよね!? 賛成です!」
「そりゃそうか。アル、ヨッシさん、それで良いか?」
「おう、良いぞ」
「うん、その方が時間は無駄にならないよね」
「んじゃ、草原エリアで合流って事で!」
「「「「おー!」」」」
とりあえずすぐに合流するとはいえ、一旦俺だけ別行動だね。ササッと荒野エリアまで行って、乾燥適応の種を交換してこようっと。
という事で、さっき一番乗り争いをしていた2PTが転移を終えた後はまだ空いているエンの分身体に近づいて転移をしていこう。って、ベスタはエンの分身体の横で待機したまま動かないのかな?
「ん? ケイ、1人か?」
「ちょっと荒野エリアまで行って、乾燥適応の種を交換してこようかと思ってな。ベスタはどうすんの?」
「なるほどな。俺は今回は単独で動くぞ。瘴気石を預かってるのは俺だし、各PTがバラバラで動くからな。状況に合わせて臨機応変に動けるようにしておく」
「あー、確かにその方が良いのか」
今回はバラバラにLv20の成長体を探すのが大前提になるし、どこのPTが見つけるかは全く不明だもんな。ベスタはそれらが見つかり次第、即座に対応出来る状態を整えておくって事か。うん、確かにそれは重要だし、リーダーのベスタが一番適任な役割だろう。
「ともかくそういう事だ。俺は全員が出発してから動き始めるからな」
「ほいよ。んじゃ俺は一先ず荒野エリアに行ってくる」
「おう、行ってこい」
頼りになるリーダーと軽くそんなやり取りをして、転移先を選んでいく。さてと、本格的な乾燥対策アイテムを手に入れに行こう!
<『常闇の洞窟』から『始まりの荒野・灰の群集エリア4』に移動しました>
そして荒野エリアへと転移してきた。巨大サボテンの群集拠点種であるキズナの様子は前と変わらないが、周囲の草花が少ないな……。それでも乾燥しない安全エリアとしては機能しているようなので、コケが弱る様子もない。やっぱりここも共闘イベントの後編で一度悲惨な光景に変わってたんだろうね。
周囲には群集拠点種の場所という事もあり、ちょいちょい人が集まっているけども脱線しても仕方ないので手早く交換をしてしまおう。
交換アイテムの一覧を開いてっと……。お、あったあった。乾燥適応の種とか呼んでたけど、正式名称は『特性の種:乾燥適応』だったね。まぁ、何を示しているかが分かれば良いから、この辺は呼び名の差異は別にいいか。
今持っている情報ポイントは1773ポイントだから余裕はあるね。ササッとキズナに情報ポイントを500ポイントを渡して『特性の種:乾燥適応』をゲット! これで残り情報ポイントは1273ポイントだけど、まだ未提供のマップで情報ポイントも手に入れられるしまだまだ大丈夫だな。
これでここでの目的も終えたので、サクッと草原エリアへと移動していこう。地味に草原エリアにはまだまともに行ったことないんだよね。今日は完全に未知のエリアばかりである!
<『始まりの荒野・灰の群集エリア4』から『始まりの草原・灰の群集エリア3』に移動しました>
そして、やってきました、始まりの草原! 俺の方は手早く用件は終わらせたから、アルたちは流石にまだかな? うん、軽く周囲を見回してみたけど、まだっぽいね。
っていうか、軽く見た感じ空飛ぶクラゲとか魚とかカメが結構いるな。それにあちこちにランダムリスポーンしているクジラの姿も見える。……比較的平坦な初期エリアだから飛行の練習場所になってるのか。一番とんでもない光景になってないか、草原エリア。
そういうプレイヤーの特徴ではなく、エリアとしての草原エリアは荒野エリアに隣接していた草原エリアと同じような雰囲気だね。背の低い草花が生い茂っていて、ちょっとした小規模な水溜まりがあり、疎らに木々が植わっている。
大きく違う点があるとすれは、エンと同じような巨大な木の群集拠点種である……えーと、名前なんだっけ……? あ、思い出した。ここの群集拠点種の名前はユカリだったね。そのユカリの存在感が凄いくらいかな。森林の中にある巨大な木と、草原の中にある巨大な木では、見た目自体は良く似ていても雰囲気はかなり違うものだね。
「お、そこに居るのはコケの人ではないか? なぁ、疾風の?」
「そうみたいだな。迅雷の」
エンとは違った雰囲気のユカリに少し気を取られて見上げていると、背後からそんな声が聞こえてきた。そういや草原エリアといえば風雷コンビのホームだし、居ても別に不思議じゃないか。
というか、前は『ライオンの』とか『ヒョウの』って呼び合ってたけどプレイヤー名に呼び方が変わってるんだね。えーと、ライオンが迅雷さんで、ヒョウが疾風さんだったな。
「おっす! 疾風さん、迅雷さん、俺の事はケイで良いぞ?」
「そうか。ならばそう呼ばせてもらおう。なぁ疾風の」
「そうだな。迅雷の。それでケイさんは例の検証への参加か?」
「おう、そうだぞ。2人は参加しないのか?」
「すまんな、検証というのはどうにも苦手なのだ」
「そういうこった。つーことで、検証結果を楽しみにしてるぜ」
「あー、まぁそういう人もいるよな。よし、任せといてくれ!」
誰もが積極的に検証していくという事ではないか。この前の風雷コンビが成熟体との戦闘で称号を発見したのは、検証をしたかったのではなく、ただ挑んでみたかっただけなんだろう。まぁそれでも重要な情報は出てくるから、情報ってものは大事なんだけども。
「それでは我らはLv上げに狩りにいく。また会おうではないか、ケイさん」
「何かの機会があれば一緒に暴れようぜ、ケイさん!」
「おう! その時はよろしくな!」
そうして風雷コンビは転移をして、消えていった。風雷コンビとはそのうち何かの機会でまた一緒にやる事もあるだろうな。うん、その機会が今から楽しみだ。まぁいつあるかは分からないけども……。
そして風雷コンビと入れ替わるようにサヤ達も転移してきた。みんなが転移してきたって事は、これで出発準備は完了だね。
「あ、ケイの方が先に来てたかな」
「まぁ、アイテム1個交換するだけだしそんなに時間は掛からないって。アルは水の確保は問題ないか?」
「おう、問題ないぞ」
「それにアルさんはねー!」
「ハーレ、それはまだ内緒って話!」
「はっ!? そうだった!」
ハーレさんが何かを言いかけたのをヨッシさんが止めていた。ふむ、俺が荒野エリアに行ってる間に何かあったのか……? うーん、あの場所で出来そうなこと? いや、今日は俺はまだアルと情報交換をしていないから、ついさっきとは限らないのか。……そうなると心当たりが無くもないな?
「……アル、水の操作のLvはどうなった?」
「……ケイ、察しが良すぎじゃね? まぁ想像通りで、水の操作はLv6になって俺も称号での取得待ちにはなったぜ」
「やっぱりか。それならミズキの森林で小さな湖でも荒らしてきたら?」
やっぱりそうだったか。俺がその手段で水の昇華を手に入れたから、アルもそうすればすぐにでも取れるんじゃないかと思うんだが……。
「あー、それに関してはこの先の平原エリアでやろうかと思っててな。水の操作がLv6になったのって、今日ケイとハーレさんと合流するのを待ってた時なんだよ」
「なるほど、Lv6になったばっかなのか」
そういう事ならまだ水の昇華に出来ていないのは納得かな。それに目的地の望海砂漠へ行くまでの途中のエリアが平原なんだから、そこで何かしらの水場はあるだろう。
まぁ常闇の洞窟にある地下湖でも良かった気もするけど、周りに結構な人数も居たから自重した感じなんだろうね。
「とりあえず状況は分かった。そういやヨッシさんの氷の操作はどう?」
「うーん、もう少しな気はしてるんだけどね。熟練度は見えないからなんとも言えないよ」
「まぁそりゃそうか……。サヤとハーレさんは?」
「私は連鎖増強Ⅰを狙ってます!」
「私は凝縮破壊Ⅰ狙いかな」
「なるほどね。サヤもハーレさんも持ってない方の応用スキルに強化スキル狙いか」
「私達は操作系を鍛えて昇華にするメリットも薄いもんねー! だよね、サヤ!」
「うん、そうなるかな。ベスタさんみたいにチャージ系と連撃系の同時使用も考えてるよ」
「おぉ、そりゃいいな」
サヤがチャージをしながら連撃を使うとなれば、かなりの戦力アップになりそうだもんな。ハーレさんも連撃系で威力が上がれば色々と役立ちそうではある。
みんな今の強化が一段落付き始めたから、違う方向性で更なる強化を模索中なんだね。俺も今日中に可能であれば土の昇華にして岩の操作と砂の操作を鍛えたいところ。そこまで行けばちょっと物理系を鍛えたいね。
さてと気になる事もまだあるにはあるけども、その辺は移動しながらでいいか。
「とりあえずこれ以上の雑談は移動しながらにしよう。アル、移動はどうする?」
「……そうだな。飛行の練習をしている人も多いみたいだし、草原エリアを抜けるまでは陸路でいくか」
「ぶつかったら、大変だー!?」
「まぁダメージはないから大丈夫だとは思うけどね」
「ま、避けられるとこは避けて行こうぜ。このエリア自体には特に用もないからな」
「それもそうだな。んじゃ、草原エリアを抜けるまではアルの樹洞の中にいるか。アル、いいか?」
「別にいいぞ。初期エリアには狙いのLv20の成長体はいないだろうしな」
ぶっちゃけこの草原エリアはただの通り道だもんな。北側のエリア移動を阻むボスは倒さなくてはいけないけど、それ以外に特に用事はない。
「それじゃ準備するぞ。『樹洞展開』『樹洞投影』!」
「お邪魔しまーす!」
「ケイ、出来れば灯りをお願いかな」
「サヤ、そんなに灯りって必要?」
「……ただの気分的なものだけかな?」
「気分的なものなんだ」
「まぁそれくらいなら問題ないぞ。熟練度稼ぎにもなるしな」
みんなでアルの木の樹洞に入ったら、サヤからの灯りの要望があった。多少は樹洞の入り口から陽光は入ってくるけど、樹洞の中は昼の日でも薄暗いからね。
夜の日は極力あった方がいいけど、別になくても困るほどでもない。でもまぁ、要望されたなら使っておこうじゃないか。眩しすぎない程度にLv3での発動にするけどね。
<行動値上限を3使用して『発光Lv3』を発動します> 行動値 62/62 → 59/59(上限値使用:3)
よし、これで良い。適度な明るさでアルの樹洞の中を照らせているし、樹洞投影で外の様子もバッチリだ。それにハーレさんも巣に行ったので、索敵も大丈夫だな。
まぁ草原エリアを抜けて平原エリアまで行けば、アルにクジラを元に戻してもらって進むのが良いかもしれない。獲物察知を活用しまくってLv20の成長体を探さないといけないしね。
「ケイ、ありがと」
「いえいえ、どういたしまして」
このくらいの要望なら全然問題なし! さてとみんなも樹洞に乗り込んだ事だし、出発だね!
「アル、出発だ! とりあえず北側のボスを目指すぞー!」
「「「「おー!」」」」
来たことのないエリアだから、移動妨害のボスの排除は必須だもんな。まぁLv低い成長体だから全然敵じゃないけどね。そういやここのボスってなんだろう? 確認してないから知らないけど、行ってみれば嫌でも分かるか。
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