第443話 夜からの予定


 話の流れで夜からの予定が決まってしまったけども、まぁ気になるところではあるし別にいいか。とりあえず一段落ついたという事で、集まってきていたみんなも解散していっている。


「よし! ソラ、瘴気石を拾いに行くか!」

「そうだね、紅焔。これから需要が増えそうだし、ボスの周回をしに行こうか」


 そうして紅焔さんとソラさんも飛んでいった。確かに数は必要になってくるだろうし、ボスの周回で数を集めるのが良いんだろうね。ヒノノコとの再戦なら瘴気石1個で再戦出来るし、連結PTで人数を増やせば瘴気石も……ってドロップ率はどのくらいだ?


「桜花さん、ベスタ、ボスでの瘴気石のドロップ率ってどんなもん?」

「あー、連結PTの人数が最大で1人辺り5%前後じゃねぇかって推測だな。どうやら参戦人数で確率が変わるらしいぞ」

「そうなるな。ちなみにだが瘴気石を使ってのボス戦は挑むのに未討伐者が必要という制限はなくなっていて、ソロ討伐ならおそらく確定で瘴気石は2個入手になっている。無駄に時間がかかるからおすすめはしないがな」

「……その言い方だと、ベスタ、もしかして試した?」

「あぁ、二度とやりたいとは思わないが……」

「……やっぱりか」


 うん、ベスタは相変わらずとんでもない事を平然とやってるよ。でもそれをしてくれるからこそ分かる情報っていうのもあるものだしね。移動妨害のボスは未討伐の人がいないと再戦できないけど、その制約もないんだな。

 それにしても18人参戦で1人当たり5%前後か。運には左右されるけど、瘴気石を使っても増える可能性が結構あるね。そして参戦人数が少なければ少ないほど入手確率は上がるけど、その分難易度も上がるって事なんだろう。これは瘴気石を増やす事を前提にした調整かな?


「あ、そろそろログアウトしないとまずいかな?」

「そうだね。私とサヤはそろそろご飯食べてくるね」

「ほいよっと」

「はーい! サヤもヨッシも行ってらっしゃーい!」


 そういえば6時寸前なんだった。一旦これで夕方の部は終了かな。話の流れで大きく予定が変わったけど、夜からはフィールドボスの再発生の検証に……あ、そういえばサヤとヨッシさんにまとめで経験値稼ぎに良い場所の確認をしてもらったのが無駄になったんじゃ……?


「あー、サヤ、ヨッシさん……なんかすまん。無駄な調べ事になっちゃって……」

「ケイ、その事なら別に気にしなくても良いかな」

「まぁ、確かに気にする必要はないよね」

「そう言ってもらえるとまぁ助かる……」


 情報収集は確実に望んだ情報がある訳ではもないから無駄足になる事はあるのは承知はしてるんだけどね。ただ話の流れでかつ、かなり重要な内容とはいえ盛大に脱線して方向性を変えたのは若干の申し訳なさを感じる……。


「ケイ、少し勘違いしてるかな。別に私とヨッシの情報収集は無駄足にはなってないよ?」

「……はい? え、どういう事?」


 でも完全に夜の行動の流れは決まってしまった……って、もしかして? いやいや、まさかそんな都合よく一致するはずがないよね?


「夜からみんな揃った後で説明しようかと思ったけど、これは言っておいた方がいいかな?」

「そだね。えっとね、ケイさん。私達が確認した範囲では灰の群集が優先的に行きやすくてLv12前後の敵が多い場所は、海沿いの砂漠エリアと、海の海底火山エリアと、岩山エリアだってさ。ベスタさん、命名クエストが発生したのって海沿いの砂漠エリアだよね?」

「あぁ、そうだ」

「え、マジか!? そういう偶然ってあるもんなんだな」


 まさかとは思ったけども、候補の1つの場所が夜からの目的地と同じだったのか。確かにそれならサヤとヨッシさんの情報収集も無駄だった訳ではない。

 そっか、さっきまでは状況が状況だったから言い出せる状態じゃなかっただけで、夜にアルも含めて勢揃いした後に話すつもりだったんだね。……という事は、今の状況って無駄に足止めしちゃってる?


「ケイ、偶然だと思ってるならそれは勘違いだぞ?」

「……ベスタ? あ、もしかして俺らに合わせてくれた……?」

「今回の発案はケイとハーレだったからな。このくらいの特別扱いは問題ない。それに条件として適切なのも確かだからな。土の昇華を取得するには砂漠はちょうどいい場所だし、Lv上げもしたいんだろう?」

「そういやそう書き込んだっけ。流石、ベスタ! ありがとな!」

「ベスタさん、ありがとー!」

「お前らが強くなる分には何も困らないからな。この程度の事は気にするな」


 そうか、ベスタがわざわざ海岸沿いの砂漠を検証の場所に指定してくれたのはそういう事だったんだな。流石は灰の群集のリーダー、気が利く! 土の昇華の取得条件は変な勘違いをしてしまったけど、操作出来る天然の砂が必要なのは間違いないしね。

 それに集まってたみんなの中にも共生進化っぽい人もそこそこいたし、悪い話ではないんだろう。特にLvが高くなってる単独での進化の人を除いて考えれば未成体のLv12前後ってのは結構美味いLv帯のはずだからな。


「それじゃ今度こそログアウトかな!」

「うん、もう6時だしね」

「2人とも、足止めみたいになってすまん! また後で!」

「うん、また後でかな!」

「ちょっと急がないと」


 そうしてサヤとヨッシさんが大慌てで桜花さんの樹洞から出てログアウトしていった。そういや樹洞の中ではログアウトってどうなってるんだろう? ……普通に考えたら不動種の人がログインしてないと樹洞の中にはどうやっても入れないからログアウトは無理か。


「とりあえず一段落ってところか。で、ベスタさん。強化した瘴気石はどうすりゃいい?」

「瘴気汚染が発生する+5は残していくが、残りは俺が預かっておこう。桜花が纏浄を使えるようになるのは9時頃だな?」

「時間的にはそのくらいだな。段階的に検証って感じか?」

「あぁ、そのつもりだ。瘴気汚染が発生する+5の瘴気石でも検証も必要ではあるから、少しだけは持っていくがな」

「あー、確かにそりゃそうだ。って事は、俺は残った瘴気石の汚染除去か?」

「基本的にはそれで頼む。俺は8時までの間にログインした奴や、灰のサファリ同盟、オオカミ組とかの連中に協力要請をしておく」

「ほう。それで協力者が確保出来れば、汚染なしの+5以上の瘴気石の量産に移ればいい訳か。運搬はオオカミ組か?」

「……まぁ、今日は灰のサファリ同盟もオオカミ組も雪山での検証で忙しいから断られる可能性もあるがな」

「ま、その時はその時だな! その辺は臨機応変に対応していくぜ!」

「あぁ、その辺り調整は任せる」


 とりあえず横で聞いていた限りでは、可能な範囲で協力者を増やしつつ増産を計画しているようである。それにしても運搬はやっぱりオオカミ組の出番なんだね。完全にオオカミ組は何でも屋になってるな。


「はい、質問です!」

「ハーレ、どうした?」

「他のエリアの灰のサファリ同盟の支部の協力要請はどうですか!?」

「あぁ、それか。それも含めての灰のサファリ同盟への協力要請だ。……全エリアの灰のサファリ同盟で強い奴が雪山での支部立ち上げに動いているからな」

「あー! そういえばそうだった!」


 ハーレさんは失念していただけかい! っていうか、雪山の件は思った以上にかなり大掛かりな事になっているんだね。……でも雪山なら、荒野エリアの人達とかは相性が悪そうな気もする。あ、でも1stだけに拘る必要もないから、2ndで動いたりしてる人もいるだろうし別に問題もないのか。


「まぁ協力が得られるかは運次第だ。一応他にも情報共有板で協力は呼びかけるが、不動種は他の種族より人数は少ないからな。あまり期待はするな」

「あー、そういやそうだっけ」


 ちょいちょい初期エリアでログアウト中の不動種の人を見かける事はあるにはあるけど、ログイン時間が合わないのか会話した事がない人も結構いるんだよな。それに動けないという性質上、不動種ではなく移動種を選ぶ人も多いしね。

 期待出来るとしたら、たまに中継をしているの見かける人くらいかもしれない。そう考えるとベスタから桜花さんに真っ先に検証の協力依頼があったのは当然の成り行きか。一番初めに候補に挙がりそうな灰のサファリ同盟が別の案件で活動中だとすぐには動けないしね。


「そういう事だから、俺は一度ログアウトして飯を食ってから協力要請に移る。ケイ達はしばらく自由にしててくれていいぞ」

「ほいよ」

「はーい!」

「おう!」


 それだけ言うとベスタも樹洞から出ていき、ログアウトしていった。中途半端な状態にするよりは先に食事を済ませてから協力要請に移るつもりなのだろう。……下手に手を出すとベスタの邪魔になりそうだし、ここは全面的にベスタに任せようかな。


「……そういや他の検証グループってどうなってんの?」

「私達とほぼ同じ状態だよー! ベスタさんがさっきの間に夜からの検証の告知もしてたね!」

「……俺らと話しながら書き込んでたんかい!」


 ベスタの同時並行作業がとんでもない水準だな。普通に話してただけかと思ったら、並行して同じ内容を告知していたとはね。


 さてと、7時までに微妙な空き時間が出来たけどどうしようかな? うーん、本格的に色々やるには微妙な時間だね。

 そういや砂漠の乾燥対策も考えとかないとね。俺の場合は水のカーペットの形を変えて水球にしてその中で入ればいいか。サヤとハーレさんは多分水を持って行っておけば大丈夫だと思うし、ヨッシさんは氷で乾燥は防げそうか? ……アルは荒野の乾燥は大丈夫だったけど、砂漠の乾燥は大丈夫なんだろうか? 


「ハーレさん、アルって砂漠は大丈夫だと思う?」

「分かんないけど、いざとなったら乾燥適応用の特性の実か種を交換してくればいいと思います!」

「あー、まぁそりゃそうか」


 その為に存在しているようなアイテムだもんな。ふむ、乾燥適応の種とか俺も入手しておくのもありか? ……ちょっとこれに関しては真剣に考えておこうっと。


 そういや今日中に共闘イベントの報酬の追加も考えないとね。まぁ夜にも進化ポイントは結構手に入るだろうし、それからか。今やると二度手間になりそうだもんな。今日の終了前にちゃんと欲しい報酬の指定をやっておかないと、取り損ねてしまうから忘れないようにしないとね。


「ハーレさん、今日のログアウト前には共闘イベント報酬の追加指定をしたいから覚えといてな?」

「了解です! 忘れたら勿体無いもんねー!」


 さてと交換出来るポイント数にもよるけど、追加は何が良いかな? 空白の称号を何かの為に予備で持っておきたいとこではあるけど、その辺はログアウト前に考えようか。


「ところでケイさん、ハーレさん、ちょっと頼みがあるんだがいいか?」

「ん? 少し暇な時間だし、俺らで出来る事なら引き受けるぞ?」

「ケイさんの言う通りさー! それでどんな内容ー!?」


 桜花さんには色々お世話になってるからね。よっぽど無茶な内容でなければ、引き受ける事に問題はない。ちょっと時間が余って、暇なのは間違いないしね。


「それじゃ、ちょっと取引所の開始が遅れて、そこで待ってる人達の順番整理を頼んだ」

「……順番整理?」

「あー!? 行列が出来てるー!?」


 樹洞の外を見てみれば、俺らがいる事に遠慮しているのと、検証の為に同じ群集以外の人の侵入制限をかけていたからか、樹洞の中に入らずに待っている人が並んでいた。

 うん、桜花さんは不動種の商人としての人気は非常に高いらしい。まぁ急な検証に付き合わせた形になったから、その分だけ通常の取引が滞ってたみたいである。あ、ハーレさんが行列の先頭に駆け出していった。


「取引所『桜花』開店です! 灰の群集の検証案件で占領してすみません! 順番に並んでくださいねー!」

「お、ハーレさんは接客経験者か?」

「いや、そういう経験はないはずだぞ」

「へぇ? それにしちゃ堂々としたもんだな」

「……確かに」


 人見知りとは一切無縁のハーレさんだし、案外接客業には向いているのかもしれないね。ハーレさんは今度の土日でもスーパーのイベントでスタッフをやる予定だけども、これなら結構良い感じでいけるんじゃないか?

 よし、土日にはちょっと冷やかしにでも行ってみようかな? ……まぁ、それは良いとして今は桜花さんの手伝いだね。




 そんな風に桜花さんの手伝いをしているうちに、7時目前となった。……うん、ハーレさんの順番整理が的確過ぎてて、俺は特にこれといってする事が無かった……。くっ、こんなところで妹に負けるとは何とも不覚!


「桜花さん、私とケイさんはそろそろご飯だから手伝いはもう大丈夫ー!?」

「大体落ち着いてきたから、もう大丈夫だな」

「了解です! ケイさん、ご飯食べにいこー!」

「……ほいよ」


 俺も別に人見知りって訳じゃないけどな……。まぁハーレさんに得意な事があるのは悪い事じゃないというか、良い事なんだけどね。

 そんな微妙な心境で桜花さんの樹洞から出てログアウトをしていった。しばらく前には土砂降りだった雨も今は完全に止んで、地面が泥濘んでいるだけだったね。



 ◇ ◇ ◇ 



 そしていつものようにいったんのいるログイン場面へとやってきた。今回の胴体部分は『共闘イベント期間はもう少しで終了です。報酬アイテムの指定を忘れないようにして下さい』となっていた。

 あー、こういう所はしっかりと告知してくれるんだね。時々変な内容があるから微妙な気持ちになる時もあるけど、しっかりするところはしっかりしているようである。


「ご飯休憩かな〜?」

「まぁそうなるな」

「あ、そうそう。共闘イベントの報酬の指定を忘れないようにね〜」

「ほいよ。そういやスクショの承諾は来てる?」

「うん、来てるよ〜。はい、これ〜」

「サンキュ」


 スクショの申請一覧を受け取り内容を確認してみれば、昨日の湖での集合のスクショ外部出力可能になっていた。それにみんなも外部出力が可能になった俺のスクショを貰っていってるね。うん、これは良いスクショだし、外部出力しておこうっと。


「そういや承諾申請の方は来てる?」

「今は特にないよ〜」

「そっか」


 昨日は俺自身が撮られたのは既に承諾したもんな。特に追加はないか。


「それじゃ晩飯食ってくる」

「いってらっしゃい〜」


 そうしていったんに見送られながらログアウトをしていった。今日の晩飯はなんだろな?

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