第299話 灰の群集のボス、殲滅完了
それから灰の群集、最後の1体である瘴気強化種のボスを倒しに荒野エリアへと向かっていた。ここは大きなカメの半覚醒を支配していたのは小さなヘビとの事である。まぁ今は大型化しているとかいう話だけど。
苦手なヘビだけど苦手生物フィルタでただの木の根のように見えるようだから問題ないはず。さてとどんな状況だろう。
<『始まりの荒野・灰の群集エリア4』から『ソヨカゼ草原』に移動しました>
ここもかなり瘴気は薄れている。以前来た時と同じような雰囲気に近くなっていて、もうすぐ終盤だというのを実感させられるね。さてと、肝心のボスはどうだろう……? お、いたいた。曲がりくねった丸太みたいなのに攻撃しているのが見えるね。
<ワールドクエスト《地の底にいるモノ》のボス戦に参加しました> 参加回数:6
そしてボス戦の参戦回数もカウントされた。だけど、見た感じではもう終盤っぽい……? 次々と流れる砂に乗って、荒野の人達の銀光を纏った攻撃が決まっていく。あれって水流の操作のあの手段が砂で代用されてるのか? そうか、流せれば良いんだから理屈としては砂でもありだよな。
「よし、止めは任すぞ! 風雷コンビ!」
「「おう、任された! 『エレクトロクリエイト』!」」
そして大詰めとばかりに大量の砂に大蛇の動きを封じていき、そこに大きな雷鳴を轟かせながら複数の落雷が降り注いでいく。その苛烈な攻撃により俺には曲がりくねった丸太に見える大蛇は、HPが全て無くなりポリゴンとなって砕け散っていった。
<ワールドクエスト《地の底にいるモノ》のボスを1体撃破しました> 23/30
はい、何もしないうちに撃破終了でしたっと。まぁメンバーを見たら納得ではあるけどね。少なくとも昇華持ちが3人はいそうだ。うん、やっぱり知らないうちに昇華持ちはどんどん増えているようである。
そして戦闘を終えたサボテンのシンさんがこちらへとやってくる。その後ろには風雷コンビの姿もあった。さっき砂の操作を使ってたのはシンさんっぽいよな。
「お、ケイさん達来たのか?」
「来たはいいけどすることないまま終わったけどね。っていうか、水流に流しての攻撃方法が砂で作られてたのがビックリなんだけど」
「『ビックリ情報箱』のケイさんに驚いてもらえたってのは、大成果だな」
「それに風雷コンビは揃って電気の昇華持ちになってるしさ」
「当たり前だろう。なぁヒョウの?」
「そうだな。ライオンの」
「まー、なんとなく納得」
風雷コンビが電気の昇華を持っている事に疑問を挟む余地は欠片もない。土の操作持ちが多いっていう荒野エリアで土の昇華持ちがいるのも特に違和感もないかな。まぁ風雷コンビがいて、結束の強い感じの荒野メンバーがいれば苦戦はないよね。
「これで灰の群集は終わりだねー!」
「後は他の群集の終了待ちだな。ベスタ、待つか乗り込むか、どっちにする?」
「……増援が必要なら行ってもいいが、まずは必要かどうかの確認をしておくか」
「あ、それもそうだな」
他の群集だとフレンドリーファイアの危険性があるし、無理にいなくても倒せるという事でこの段階では共闘は一旦解除しているんだし、まずは確認が先だね。となれば、共闘戦略板か。
「ここにいるやつは聞いてくれ。今の段階だと個別に動けば迷惑がかかる可能性がある。どうしても行きたいというのであれば無理に止めはしないが、少し確認を取るから待機しててくれ」
「はい! 了解です!」
「ま、それが無難だな」
「邪魔になっても駄目だしね」
「うん、私も同感かな」
そのベスタの言葉に、俺のPTのみんなを筆頭にこの場にいたみんな頷いている。自由行動で制限はないとはいえ、状況に合わせて動く事は大事だしね。今は待つのが最善だろう。
「俺は他の群集状況を聞いてくる。その上で必要な情報は伝えるから、そこから先は自由にしてくれ」
そこまで言ってベスタは言葉を切った。おそらく、共闘戦略板に書き込みに行ったのだろう。みんなも異論はないようで、とりあえずは寛ぎモードに入っていた。ま、休憩する時はしっかり休憩しておかないとね。
「俺はちょっと様子見て来るけど、みんなどうする?」
「あ、私はちょっと魚と肉を焼いてくるよ。またシンさんが焼かれてるしね」
「おー! 私もそっちに行くー!」
「はいはい。少しレモンでも使って味付けしてみようかな」
「おー! レモン味だ!」
「私もそっちに行こうかな」
「俺がケイに付き合って行っとくから、ハーレさん達はのんびりしてていいぞ」
「やったー! サヤ、ヨッシ、バーベキューだよ!」
「あ、こら! ハーレ、待ちなさい!?」
「あはは、食べ物が絡むとハーレは凄いかな。それじゃ行ってくるね」
「おう、行ってらっしゃい」
とりあえずサヤとハーレさんとヨッシさんはそこそこ使ったアイテムの補充へと向かった。まぁ補充してるのは主にヨッシさんだろうけど。そして無意味にアイテムの数は減りそうでもあるけども。
っていうか、シンさんが焼かれるのは相変わらずか!? うーむ、何か妙な光景が定着してしまっている気がする。
「んじゃ、俺らも確認しに行きますか」
「だな。ベスタだけに任す事でもないだろうからな」
確かにそりゃそうだ。さてと共闘戦略板を見に行こうかな。
ベスタ : 灰の群集は全て倒し終えた。増援は必要か?
○ルアー : 早いな、灰の群集。自分のとこに専念すりゃこうなるのか。
○ガスト : あー、増援なら必要ねぇぜ。どういう気まぐれか、奴らが動き出したから殲滅速度は上がっている。
ベスタ : あぁ、表に出てきてなかったっていう連中か?
●クビナガ : 人伝に聞いてはいるが、そいつらってサファリ系で群集に興味はないって話じゃなかったか?
あ、どうやら赤の群集では表に出てきていなかった人達がボス討伐に参戦してきているのか。それにしても無関心っぽかったのに、動き出すとはどういう事なんだろう?
○レイス : あー、こっちはこっちの事情があってな。競い合うイベントには興味はねぇが、今回のイベント特有の演出やボスってのには興味が出た。
ケイ : という事は、興味の惹かれる事があれば参加の意思あり?
○レイス : ……例の人か。まぁ俺も全員に面識がある訳じゃねぇし、共通見解でもないが今参加してる奴らについてはその認識で構わねぇ。
○ガスト : 意外だな? 名前は伏せていくつもりかと思ってたぞ。
○レイス : 別に俺らは俺らで好きに楽しんでるだけなんだがな。まぁ例の件で思うところが無い訳じゃねぇからな。
なるほどね。あのウィルさんとの例の茶番も全くの無意味ではなかったのかもしれない。多分対人系のイベントには参加してこなさそうだけど、そうでなければ今後は少なからず戦力として出てきてくれるのかもね。
●ジェイ : 詳細は分かりませんが、赤の群集の方は問題ないのですね?
○ルアー : まぁな。並行して倒している最中だから午前中……遅くても今日の昼間には全部終わるだろう。
ベスタ : 赤の群集については増援は不要でいいんだな。青の群集はどうだ?
●ジェイ : こちらも問題はありませんね。残っているどこのエリアも後1度か2度で終わりますので、午前中には終わるかと思います。
●斬雨 : ま、ちょっと待たせるが増援までは必要ないぜ。
ケイ : それじゃ、終わるまでは灰の群集は待機?
ベスタ : そうなるな。
この感じであればボス討伐は今日中には終わりそうである。どこも増援は必要ないって事だし、しばらくは待機だね。ちょうどいい休憩時間ってとこかな。
ケイ : そういえば、前半戦ってここまでで終わり?
○ルアー : どうだろうな? そんな気はするが、まだ再接触は出来ていないしな。
●ジェイ : ……そうですね。なにやら勘違いがあるようですが、向こうの目論見は失敗した事になりますからね。撃破完了した事により、向こうから再接触をしてくるという可能性もありますか。
○ガスト : その可能性は充分あるな。だが、再接触しに行くのが次に始まってそれが終わったら後半戦へと突入かもしれんぞ?
○レイス : 俺にとっては後半戦のボスが何になるのかというのが、一番興味のあるところだな。それを間近で見るというのも出てきた目的ではある。
後半戦のボスを見に行きたいっていうのが一番の本音っぽいな。まぁそれこそサファリ系プレイヤーって気はするけどね。確かに後半戦でもボスは出てくるだろうし、そこは気になるところだよね。
ベスタ : まぁそればっかりは始まってみないと分からないだろう。前半戦に次があってもなくても、今の段階を終わらせなければ意味はないからな。
●ジェイ : それはそうですね。灰の群集の方々は少しお待たせする事にはなりますが、出来るだけ早く片付けましょう。
○ルアー : 確かにそりゃそうだ。ま、こっちも早めに片付けるとするか。
○レイス : そうだな。
よし、これで一通りの確認は終了かな。特に他に確認しておくべき事は何かあったっけ?
アルマース : あ、ちょっと待った。少し確認良いか?
●ジェイ : なんでしょうか?
アルマース : ボス戦の参加回数があるだろう? あれを増やす為にそっちに行くのはありか?
●ジェイ : あぁ、その件ですか。問題はないですが、辿り着いた時に終わっていたり、フレンドリーファイアを受けても文句は言わないで下さいね。
○ルアー : 赤の群集も同じだな。来るのは問題ないが、その辺だけは気をつけてもらいたい。
アルマース : ま、その辺は当然と言えば当然だな。了解した。
そういやその件もあったっけ。アル、ナイス質問! それにしてもボスの参加回数はどういう役目があるんだろう。多ければ困らないとは思うけど、多くなければ困るって事にはなってなさそうな気がする。
まぁゲームは楽しみながらが信条だし、無茶をしてまで回数を稼ぎに行かなくてもいいか。
ベスタ : ま、こんなところか。それじゃ任せたぞ。
●ジェイ : えぇ、お任せください。
○ルアー : あぁ、何とか自力で片付けよう。
よし、赤の群集も青の群集のどちらも終わるのは時間の問題だね。後半戦についてはベスタの言った通り、始まってから考えればいいや。
さてと、今は11時過ぎだし少しまったりしてから昼休憩にして午後からまた頑張るって事で良いだろう。……よし、少しの時間だけどスキルの熟練度稼ぎでもしておこうかな。
「確認が取れた! 赤の群集、青の群集共に増援は必要なしだそうだ。早ければ午前中、遅くても今日の昼間には今の段階は終了する。アイテムが減ってる奴や、用事がある奴は今のうちに済ませとけ!」
「よし、シン! 12時まで続行だぞ」
「だからなんで俺の棘に刺して焼く!?」
「地味にやりやすいから!」
「火の操作の練習にもなるしな」
「網も鉄板も無いしねー!」
「地味に理由がちゃんとあるのが困る!?」
シンさんは相変わらずバーベキューの鉄板代わりになってるね。何度見てもサボテンの棘に魚や肉を刺して焼いているのは妙な光景である。
うちの女性陣も混ざってるし、サヤは火の操作の練習もしているようである。ヨッシさんは出来の良い焼き魚を量産中か。そしてハーレさんは他の人の少し失敗したの食べていると。……極端に焦げたのとかは流石に避けているけど、多少焦げたくらいの失敗なら別に良いのか。
「それと、今のうちにボス戦の参加回数を増やしておきたい奴は行ってこい。辿り着いても終わってたり、攻撃に巻き込まれても問題がなければ良いそうだ」
「お、そりゃいいね。ダイク、行くよー!」
「え、俺はちょっとのんびりしてたいんだけど!?」
そしてレナさんに連行されていくダイクさんの姿があった。……なんだろう、ダイクさんって地味にレナさんに気に入られてるのかな。
「俺らも行っとくか」
「ライルが地味に回数少なかったもんね。2回だっけ?」
「リアルが少し忙しかったですからね」
「僕らも付き合うから、行こうよ」
「皆さん、ありがとうございます」
「あ、でも赤の群集は勘弁な?」
「え、何故ですか?」
「……赤の群集には苦手なやつがいるんだよ」
「あぁ、例の人だね」
紅焔さんPTは回数を増やしに行ってくるらしい。そして紅焔さんはやはり赤の群集には行きたくないようだ。やっぱりキツネの人が相当苦手みたいだね。
それでもライルさんが回数少なかったのなら、青の群集のとこにでも行っておいたほうが良いかもしれない。まぁ具体的な内容がわからないからなんとも言い難いけど。
「で、アル? 俺らはどうする?」
「ハーレさん達があの様子ならのんびりで良いんじゃないか?」
「それもそうだな。んじゃ、ちょっとスキルの熟練度上げに付き合ってくれない?」
「おう、良いぜ。俺もちょっとやっておきたかったとこだからな」
「よし、それじゃそういう事で!」
とりあえず午前中はそれぞれ自由に過ごすという事で良いだろう。今の灰の群集としてしなければならない事は特にないからね。
折角できた空き時間だし、まだ全く育てられていない電気の操作と電気魔法を今のうちに鍛えておこうかな。
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