第264話 新たな手札
とりあえずの間に合わせとして応用スキルの『殴打重衝撃』は取得した。後から『凝縮破壊Ⅰ』は取るとしても時間はかかるから、今のうちに持っておいて損はないだろう。先に他の属性の昇華も狙いたいから、自力獲得を狙うといつになるかわからないしね。
「フラム、アーサー、他のみんなももういいぞ!」
「結構時間かかったな!?」
「行動値の大半使ってたんだから仕方ないだろ! 未成体相手だと成長体相手とは勝手が違うんだっての!」
「コケのアニキ、頑張って!」
「おう、任せとけ」
未成体の方が圧倒的にHPや防御があるんだから、1人で倒さなきゃいけない状況ってのを少し考慮してくれ。通常攻撃をしながらでも行動値は回復するけど、回復速度は遅くなる。一気に畳み掛けるなら行動値は他の人に任せて全快させた方がいい。ついでに必要があれば焼き魚や果物でHP回復も出来るしね。
それにしてもアーサーは思った以上に成長していたようだ。まだぎこちない所も多いし、上手い人に比べればまだまだだけど、それでも以前ほどの向こう見ずさはなくなっていそうである。……むしろフラムの方が動きが悪い気が……。そういやオフライン版もそれほど操作が得意じゃないって言ってたような気もするね。
まぁ決して足手まといな程に下手って訳でもないし、別にいいか。やるべき事はしっかりやってくれた訳だしね。次は俺の番である。
「さて、さっさと仕留めてPT再編だ!」
<行動値上限を2使用と魔力値4消費して『魔力集中Lv2』を発動します> 行動値 51/51 → 49/49(上限値使用:4): 魔力値 108/112 :効果時間 12分
<行動値1と魔力値4消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 48/49(上限値使用:4): 魔力値 104/112
<行動値上限を1使用と魔力値2消費して『操作属性付与Lv1』を発動します> 行動値 48/49 → 48/48(上限値使用:5): 魔力値 102/112
よし、下準備は完了。時間稼ぎに専念して貰っていたから、クモのHPは全然変わっていないけど何とかなるだろ。回復されているよりはマシだ。
<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『未成体・瘴気強化種の討伐』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『未成体・瘴気強化種の討伐』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
あ、未成体の瘴気強化種の討伐称号が出たって事はガストさんが寄生してたのを仕留めたか。……うん、まぁこれは仕方ない。今は称号取得でスキルを増やせそうな案もないし、ポイントも大量にあるからね。いやほんと、今回のバラバラでの戦闘はここに関しては良かったのかもしれない。みんなの方に未成体が出てなければだけど。
とりあえずさっさと仕留めて、PT再編してしまおう。未成体が出始めたなら不満があるって事以外にも単純に戦力としてもPTを元に戻したほうがいい。
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 47/48(上限値使用:5): 魔力値 99/112
残り行動値は47。ま、ぎりぎり足りるかな。これで仕留められなきゃ、昇華魔法を使うしかない。あんまり昇華魔法は見せたくないから、倒せてくれよ!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を19消費して『水流の操作Lv3』は並列発動の待機になります> 行動値 28/48(上限値使用:5)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を20消費して『殴打重衝撃Lv1・土』は並列発動の待機になります> 行動値 8/48(上限値使用:5)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
<『殴打重衝撃Lv1・土』のチャージを開始します>
よし、水流の操作と殴打重衝撃の同時発動は成功! あ、どっちのハサミを使うかは指定できるんだ。ここは右のハサミでいこうか。よし、指定完了。そして直前に生成した大量の水を水流の操作で支配すると同時に殴打重衝撃のチャージが始まった。水流の操作で動きを制限しつつ、チャージ完了の時間を稼がせて貰おうか!
おぉ、石に覆われた右のハサミから銀光が放たれ始めてきた。茶色い光も少し混ざっているから土属性になっているね。って、ちょろちょろと動きまくるな、クモ!? あぁ、もう! 動きが素早い! チャージの方に気を取られて、水流の操作が少し甘かったか。ちょっと難しいな、応用スキルの併用。
「ったく、他の連中がまだまだ弱すぎるな。『コイルウィンド』!」
「まだ成長体のやつのほうが多いんだから仕方ないだろ!?」
「フラム兄、事実だから仕方ないって」
「お、ガストさん、サンキュー!」
確かに問題点はガストの言うようにまだ成長体の人の方が多い事か。共生進化や2ndを育成中って感じの人が多いもんな。まぁこのイベントで結構未成体まで行く人は増えそうな気もするけどね。とりあえず、動きを止めてくれたのはありがたい。
クモの動きが止まったところに水流の操作をぶつけて、再び地面へと叩きつける。さてと、後はチャージが終わるのを待ってからだな。
<『殴打重衝撃Lv1・土』のチャージが完了しました>
しばらく待てばチャージが完了する。銀光もかなり強まっているけど、斬雨さんの銀光に比べると光が弱いかな? こうなれば任意のタイミングで解き放てば良いだけらしい。ま、チャージ中でも発動は可能みたいだけど、その場合は威力は下がるか。
攻撃準備も整ったので俺自身も水流の中へと飛び込んでいく。ガストさん相手には近接技の育成が足りてなかったから大した有効打にはならなかったけど、応用スキルのこれならその心配はいらない。
「コケのアニキ、いっけー!」
「くたばれ、無駄にでかいクモ野郎!」
水流で加速させ、魔力集中と操作属性付与で土属性になった殴打重衝撃とその追撃効果の衝撃波で一気にクモのHPを削り切る。水流の操作で地味に削って4割程になっていたHPも全て無くなり、勢い余って地面に軽い陥没が出来た。……削りきれるか怪しい気もしてたんだけど、思った以上に威力があったっぽい? 勢いって大事なんだね。
そしてHPが全て無くなったクモは、ポリゴンとなって砕け散っていった。よし、無事撃破!
<ケイが未成体・暴走種を討伐しました>
<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・暴走種を討伐しました>
<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『未成体・暴走種の討伐』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
「……ケイさん、それって俺相手に使ってたやつだよな? ……まさかとは思うが、手抜きしてたんじゃねぇだろうな?」
「いやいや!? まだまだ手の内はあるけど、この攻撃はついさっきポイントで応用スキルを取っただけだからな!?」
地味にガストさんの声音が怖かった。……あの時は無かったスキルというか、あの時に足りないと思ったスキルを今取得しただけだからあの時は手の抜いた訳じゃない。降参されなきゃもう少し何か使っていただろうし。
「……そうか、ならいい。途中で降参したのは俺だしな」
「それを言うなら、ガストさんだって昇華を持ってただろ?」
「一応俺の切り札だからな。簡単には見せられんが、どうにもケイさんは他にも色々持ってそうなんだよな」
「無いとは言わないけど、内容は教えないぞ?」
「無理に聞く気もねぇから別にいいぜ。どっかで使った際に分析するだけだしな」
「油断ならないな!?」
そりゃ光の操作とか岩の操作とか色々あるけど、現状で1番使い勝手が良いのって水なんだよな。それにしてもガストさん相手には油断大敵だな。
これは赤の群集までやってきて隠れていた強者を見に来て正解だったかもしれないね。今のルアーの強さや騒動を起こしていた連中がどれだけ強いのかは分からないけど、その影に隠れてこの強さの人がいるのが分かったのは大きい収穫だろう。
「ケイ、お疲れ様かな。代わってくれてありがとね」
「ま、苦手なものの相手をする時の気持ちはよく知ってるからな。よーく知ってるからな?」
「だから悪かったって!?」
フラムの方を見ながら念入りに言っておく。重要なことなので2回繰り返しておかないと。次に何かやったら、常闇の洞窟の虫エリアに放り込んで……あ、群集が違うから流石に無理か。
「ケイ、その辺にしといてやれ」
「ケイさんは怒った時は怖いからね!?」
「ハーレは経験済みだもんね」
「あれは2度とやりません!」
そしてみんなもそれぞれのPTが片付いたようで、集まってきていた。……ん? なんか敵の数がかなり減ったか? なんだか先程までの大量の敵が居たのが嘘のように妙に閑散としている。……かといって瘴気が消えた訳でもなく、禍々しい雰囲気はそのままだ。
「オオカミ組、遅れながらも到着だ!」
「到着っすよ、ボス!」
そしてそこにぞろぞろとオオカミの群れがやってきた。どうやらオオカミ組が到着したようである。えーと、12人いるってことは2PTか。結構な大所帯になってんなー。ボスの蒼弦さんが率いてきたようだ。
「ん? 激戦中と聞いていたけど敵がいない?」
「さっき未成体が出たからな。なんか変化があるかもしれないぞ」
「お、ケイさんか。悪いな、遅くなって」
「まぁ何とかなる範囲だったけど、何かあったのか?」
「あー、エリア移動のボスのとこで絡んできて進行を妨害してくる奴がいたんだよ。どうせ灰の群集で強いオオカミなんて居るわけないとか何とかでな?」
「……うわー、どんな理屈だ、それ。で、ボコってきた訳か」
「そういう事だ。タイマン勝負を12連続程な。ちなみに全勝だ」
「蒼弦さん、それはやり過ぎじゃないかな?」
その絡んできたという奴も変な絡み方をしたもんだな。ルアーに勝ったベスタの存在がそんなに気に入らないんだろうか? 何をどうすればそういう思考回路になるのかは分からないし、分かりたくもないけど変な奴は何処にでもいるものか。
それにしてもオオカミ組は同じ種族で固まってるから、他の集団より種族としての情報共有の密度がとんでもないって事になってそうなのにそこに喧嘩を売るとはね。
オオカミ組と行動を共にしたのは1番最初の競争クエスト以来だけど、ベスタが何だかんだで戦力としても見込んでいるんだからそこらの人達よりもよっぽど強いと思うんだけどな。
「あー、絡んできた奴の鼻っぱしらは遠慮なくへし折ってくれて構わん。これ以上好き勝手な真似をさせる気はないからな」
「あ、ケイ、その手のトラブルなんだけどさ。灰の群集の人達に絡んできてた奴がいれば群集外交流板で情報提供してもらえれば、こっちでも対処に動くんでそう伝えてもらってもいいか?」
「ほいよ。後で連絡しとくわ」
とりあえず赤の群集は赤の群集で対処に動くって訳か。ま、個人的にはそういう風に抑え込むような感じの行為は好きではないけど、流石に放置できる話でもないから仕方ないね。うん、ここに集まってる赤の群集の人達からも非難の声が上がっているし、そのうち淘汰されていくだろう。
さてと面倒な馬鹿の対処の話はこの辺にして、PTの再編をしていこうかな。理由は分からないけど、敵の数が減っている今のうちにやっておかないと。話しているうちに他も灰の群集の増援PTもいくつか来たみたいだしね。
「ねぇ、みんな!? あれ、何!?」
「ハーレ、どうしたのかな? ……あれは不味そうかな」
「何だ、ありゃ!?」
「……瘴気が集まっていく?」
「おいおい、これはボスじゃないのか!?」
「PTの再編を急ぐぞ! 赤の群集2PT、灰の群集1PTの組み合わせで良いな!?」
「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」
平原の草むらの中から吹き出した瘴気が空に吸い込まれる様に渦巻きながら立ち昇っていく。凄い勢いで増えていく瘴気で禍々しい雰囲気がより強くなってきて、いかにもこれから何か起きますよといった演出だ。
『ぐっ! な、な……ニガ……オキタ!? ……グゥァアアア!?』
何かが起きているらしいし何かの声が聞こえたけれど、まだ敵は正体を表していない。薄っすらと瘴気の中で何かが巨大化していくような様子は見えるけど、細かい事は分からない。これは演出的に普通の雑魚敵ではないな。
この状況では再編をして戦力を整えるのが最優先で、とりあえず俺達はいつものメンバーでPTを再結成だ。臨時メンバーがいるのはいいけど、メインはやっぱりこのメンバーじゃないと落ち着かないね。
「ケイさん、悪い! 俺もPTに入れてくれ!」
「辛子さんか! みんな、良いか?」
「もちろん問題ないさー!」
「よろしくかな、辛子さん」
「よろしく、辛子さん」
「頼むぜ、辛子さん」
<甘口辛子様がPTに加入しました>
<ガスト様のPTと連結しました>
<水月様のPTと連結しました>
再編したPTはガストさんと水月さんをリーダーとした赤の群集との混成PTである。未成体をリーダーにした方が良いということでこういう配置になった。フラムとアーサーは水月さんのPTになっている。
「来るぞ! 全員警戒!」
空に立ち昇ったドス黒い禍々しい瘴気を纏った何かが地上へ向けて落ちてくる。そしてそれと同時に周囲へと瘴気が広がっていき、少し前までいた雑魚敵も一気に大量に復活してきた。……イベントが少し進行してボスの1体が登場ってところか!
瘴気が纏わりついていて何がいるかわからないけど、こいつはなんだ……? 一体何が起きたのだろう。
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