第173話 みんなの状況


 しばらくロブスターを操作してみて気付いた事。ロブスター、全然泳げない!? いやいや、まさかの大誤算。えー、エビって普通に泳げてなかったっけ? ロブスターってどうやって泳いでるの? ……でも、海底を走る速度は中々のもの。とりあえず移動は走っていこう。一応、移動しながら泳ぐ手段も模索していくけどさ。


 群集拠点種目指してはいるけど、少しずつでも使い方は慣れていく方が良いだろうから程々に一般生物を倒しながら進んでいこう。単純に試したいという気持ちももちろんあるけども。


<行動値を1消費して『獲物察知Lv1』を発動します>  行動値 9/10


 さーて、索敵用スキルは使ったことが無いからどんなものやら……? お、視界内に矢印が表示されてその先に一般生物の小魚を発見! ふむふむ、一般生物だと矢印は緑色か。お、黒い矢印も……あ、表示が消えたから時間切れか。効果時間は10秒とかその辺りだな。

 まぁいいや。とりあえず見つけた小魚を仕留めてみようっと。こっちには気付いてないみたいだし、そーっと、そーっと近付いて、よし今だ!


<行動値を1消費して『はさむLv1』を発動します>  行動値 8/10


 左右どちらのハサミを使うかは任意か。右のハサミで『はさむ』を発動して小魚の捕獲完了。一般生物だと小魚以上の細かい分類はないのかな? 見た目的には色んな種類がいるみたいだけど、名称は一律小魚である。サイズ的には5センチくらいの小魚。

 あ、このスキルは徐々にハサミの力が強くなっていくのか。そして小魚がそんな力に耐えきれる訳もなく、ハサミによって潰されて死んだ。流石は幼生体Lv1、一般生物でもそこそこ経験値が入ってきた。


 幼生体の黒の暴走種は倒さずに温存しておこうかな? 折角の2枠目だし、討伐称号で何かスキルを取ろう。土とかは少しくらいなら掴めそうだし、土の操作の取得でも狙ってみようか。海底部分が岩場でなくて土なら巻き上げてぶつけるのでもいけるはず。作って早々、1枠目での情報が役に立ちそうだ。


 ロブスターは物理攻撃向けっぽいし、コケと違って魔力集中も自己強化も、操作属性付与も取得出来る可能性はある。その辺を目指して頑張っていこう!

 あ、みんなにも一応連絡を取っておこうか。アルはヨシミのとこにいるから戦闘は多分してないと思うので後回し。まずはサヤにフレンドコールだな。あ、すぐに出てくれた。


「ケイ、どうしたのかな? 群集拠点種で待ち合わせだよね?」

「おうよ。一応確認の連絡だな。そっちはどんなもん?」

「うん、無事にタツノオトシゴを選べたかな。ステータスは攻撃が低めだから、成長体になって魔法が使えるようになるまではちょっと弱いかも? あと、思ったより移動速度が遅いね。ケイはどうかな?」

「タツノオトシゴは魔法向けって言ってたからそれは仕方ないか。俺の方はちょっと誤算はあったけど、まぁ1枠目の知識と合わせて鍛えたらどうにかなる範囲だから問題ないよ」

「え、誤算ってどんな事かな?」

「ロブスターでの泳ぎ方がよく分からない……」

「あ、そうなんだ? でも全く無理ってことはないだろうし、何とかなるんじゃないかな?」

「おう、それは探りながらやるつもり。んで、本題なんだけど」

「ん? 何かな?」

「幼生体の討伐称号は可能な限り温存しないか? みんなで何か操作系スキルでも取ろうぜ」

「あ、それはいいね。うん、分かった。合流まで黒の暴走種とは戦わないように気をつけて、合流地点に向かえばいいんだね」

「おう、よろしく! みんなの方にも俺から連絡入れとくから!」

「分かった。よろしくね、ケイ」


 サヤへの連絡はこれで良し。ふむ、タツノオトシゴは移動速度はそれほど早くないならアルに迎えを頼むか……? いや、それはみんなに連絡し終わってからだな。

 次はヨッシさんにフレンドコールしてみよう。……あれ、出ないな? もしかして戦闘中とか? 黒の暴走種と戦闘になってなければ良いけど……。よし、繋がらないから先にハーレさんにフレンドコールをしよう。お、こっちはすぐに出たな。


「どしたの、ケイさん!?」

「んーみんなの状況把握と連絡事項だな」

「おー! みんなどんな感じ!?」

「サヤは無事にタツノオトシゴになって、ヨシミのとこに移動中。魔法解禁まではちょっと弱そうだってさ」

「魔法向けって言ってたもんね! ヨッシとアルさんは!?」

「ヨッシさんはフレンドコールしたけど出なかったから、何か取り込み中じゃないかと。アルはもうヨシミのとこにいるから一番最後でまだ連絡してない」

「フレンドコールは1対1だからその辺は仕方ないかー!」

「ま、そういう事。ハーレさんの方はどうだ?」

「海流に流されながら移動中だよー! そろそろ、ケイさんに追いつきそう!」

「えっ!? 海流に乗るって手段があるのか!?」

「『傘展開』で流れを受けるのさー!」

「あれって初期の固有スキルなのか?」

「うん、そうだった! ケイさんはどう?」

「順調に海底を歩いてるぜ!」

「海底を歩くロブスター……。ロブスターってオマール海老なんだよね……じゅるり」

「頼むから俺を食材として見るなよ!?」

「一口くらい駄目?」

「駄目だ! っていうかプレイヤーが他のプレイヤーって食えるのか!?」

「その実験も兼ねてやってみようよ! ねぇ、ケイーー」


 なんだか収拾がつかなくなりそうなので、強引にフレンドコールを切る。……ついさっき食ったばかりだから、余計に狙われてる気がするぞ……。うん、流石にプレイヤーがプレイヤーを食べるのは無理だろう。っていうか無理であってくれ! そうでないとハーレさんに俺が食われる! あ、黒の暴走種との戦闘を避けろと言うのを忘れた。……俺を食おうと目論んでたし、ハーレさんが駄目になっても仕方ないって事にしておこう。

 あ、ヨッシさんから折り返しのフレンドコールがやってきた。即座に出ようっと。


「あ、ケイさん、さっきはごめんね」

「いや、大丈夫だけど、なんかあった?」

「あったというか、ちょっとスキルの扱いに失敗して身動き取れなくなってて、それどころじゃなくてさ。あ、今はもう大丈夫だよ」

「それなら良かった。ヨッシさんはランダムで結局何になったんだ?」

「ウニになったよ。でもかなり移動速度が遅くてね? 『針伸縮』って固有スキルがあったから、これでどこかに突き刺して一気に移動出来ないかって思って試したら、全部の針が一気に伸びちゃってさ」

「あ、もしかしてそのタイミングでフレンドコールしちゃったとか?」

「うん、そうなるよ。今は元に戻ったからもう大丈夫だけどね。それでなんだけど、みんな揃ってからでいいから迎えに来て貰えないかな?」

「あー移動に時間かかるならその方が良いか。よし、その辺はアルに伝えとく」

「ありがと。それで他に何か用事があったんじゃない?」

「あ、そうだった。操作系スキルの取得狙いの為に黒の暴走種の討伐称号を温存しとこうって提案だな」

「それはいい案だね。ウニだと土の操作と移動操作制御が欲しいかも。それならどこかで隠れながら待ってるね」

「おう、分かった。みんなと合流したら迎えにいくよ、アルが」

「うん、ありがと」

「それじゃまた後で」


 ヨッシさんはランダムでウニになったのか。移動速度は遅めだけど、針の伸縮は結構強力かもな。まぁ移動速度については仕方ないから、アルに迎えに回ってもらうか。サヤとヨッシさんをどっちに先に迎えに行くかが問題だな。距離的にはヨッシさんの方が遠いから、近い順にかな。

 さて次はアルに連絡していこう。お、アルもすぐに出てくれた。


「おう、ケイ。どうしたよ?」

「みんなの状況確認と連絡事項をやってるとこだ」

「……位置関係的には俺が最後か?」

「お、アル大正解!」

「そんなとこだと思ったぜ。で、どんな状況だ?」

「俺とサヤとハーレさんは順調に向かってる。多分ハーレさんが一番早いと思うぞ」

「あれ? ハーレさんはケイより遠くなかったか?」

「海流に乗って移動中だとさ」

「あーそういうのもありか。ヨッシさんはどうなんだ?」

「ウニになって、移動速度が遅いから迎えが欲しいってよ。サヤも少し遅めらしいから、サヤも迎えに行った方がいいかも」

「ウニやタツノオトシゴなら移動に時間がかかるのも仕方ないか。って事は順番に俺が迎えに行く方が良さそうか?」

「多分な。俺も遅いわけじゃないけど早いとも言えないし」

「まぁまだ幼生体だから仕方ないだろ。それじゃ近い順にハーレさんとケイを迎えに行って、その後サヤの方に行って、最後にヨッシさんの迎えに行くか。思った以上にクジラの移動速度は早いしな」

「そうして貰えるなら助かる。それとだな」

「まだ何かあるか?」

「おう。幼生体の黒の暴走種の討伐称号を温存しようって話だ」

「あー、それか。確かにそれは良さそうだが、そう都合よく行くか?」

「問題ないぞ。ロブスターには威嚇と索敵用の固有スキルがある!」


 そうとも、さっき思いついたばかりだけど威嚇で敵を散らしつつ、獲物察知を併用すれば遭遇率はかなり下げれるはずだ。だから極力早めに合流出来たほうがいい。


「固有スキルか。よし、その案に乗ろうじゃねぇか。……俺はハーレさんが辿り着く前に色々と情報を仕入れとくわ」

「おう、任せた! 海底が土になってる場所を聞いてくれると助かるぜ!」

「なんだ? こっちでも土の操作を取るのか?」

「ロブスターの泳ぎ方が分からなくてな……?」

「……ロブスターってかザリガニ系って確か泳ぐのには向いてない歩行型の種類だったはず。いやでも、跳ねるように移動は出来た気はするな?」

「……アル、知ってたのか!? え、って事は跳ねるように移動すれば良いのか?」

「まぁな。……万が一の為に土の操作辺りで移動操作制御狙いってとこか」

「はい、その通りでございます。あとサヤの使ってた操作属性付与も狙う」

「あー確かにロブスターのハサミには向いてそうだな。ま、一応跳ねるのも試してみてくれ」

「後で試してみるよ」

「とりあえず事情は把握した。ハーレさんが到着し次第、俺は動くぞ?」

「おう、任せた!」


 よし、これでみんなへの連絡と状況把握は完了。アルとハーレさんと合流した時点でサヤに迎えに行く事をまたフレンドコールで伝えればいいだろう。そしてその後にヨッシさんを迎えに行って、みんなで2枠目の育成開始だな。目標は本日中に成長体まで進化ってところにしておこう!

 さて、途中でアルが迎えに来るとはいえ、少しでも距離は縮めておこう。その方が無駄が少ないしね。

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