第104話 新たな進化先と再会


 色々と取得したのを一応確認しておこうと思ってステータスを開こうとしたら、いつもとは違う変化に気付いた。これは以前にも覚えがあるな。


「お、ステータスの進化項目が点滅し始めてるぞ」

「って事はケイの進化候補先が出現したのか」

「あ、私もなんか出てる」

「ケイさんとヨッシ、進化先が出たんだ!」

「ヨッシさんもか」

「ケイさんこそね」

「まぁ待ってるから確認してみたらどうかな?」

「おう、そうさせてもらうよ」

「すぐに確認終わらすからね」


 まだ纏樹の進化中なんだし、時間が勿体無いと言えば勿体無いからな。かといって時間切れまで見るのを我慢というつもりも起きないからね。サクッと確認してしまおう。どれどれ、即座に進化出来るような変異進化か、それとも進化階位の上がる進化かどっちかな。とりあえずステータスから進化項目の表示っと。


【進化】


 増強進化ポイント 86P 

 融合進化ポイント 68P

 生存進化ポイント 69P


《変異進化》


 『操りゴケ』

 進化階位:未成体

 進化条件:成長体Lv20、操作系スキルを3つ以上取得、増強進化ポイント20、融合進化ポイント20

 魔法適正は下がるが、その代わりに他のモノを操る事に長けたコケ。自身が戦う事はなく、戦うのは操られたモノである。その力が及ぶのは果たしてどこまでか。


《転生進化》


 『泥魔ゴケ』 

 進化階位:未成体

 進化条件:成長体Lv20、『水魔法』と『土魔法』の2つを取得、増強進化ポイント10、融合進化ポイント20、生存進化ポイント10

 水と土に強い親和性を持ち、なおかつ魔法適正の高いコケ。ただし、土は多く水分を含むものに限られる。乾燥には弱いが、それが可能なのであればすればいい。


 所属ボーナス:生存進化ポイント上昇、増強進化ポイント微減少、融合ポイント微減少



 うぉっ!? 2種類同時に来た!? 『操りゴケ』は……魔法じゃなくて操作系の特化型? うーむ、これはよく分からん……。『泥魔ゴケ』の方は魔法と水と土(というか泥?)の特化型の進化先か。こっちは分かりやすいくらいに今の強化型だな。それにしてもどっちも必要ポイント数がそれなりに多いな……。

 それにしても操作系3つと魔法2つがそれぞれの取得条件か。これはどっちもコケに限定した話でもなさそうな気もするな。あ、でも魔法2つのアルには進化発生していない。種族によるのか、種族固有は除外なのか、その辺は要検証だな。


「で、どうだったよ?」

「俺の方は次の進化階位への進化先が2つ出たな。『操りゴケ』っていうよく分からない変異進化と、『泥魔ゴケ』っていう転生進化で今の純粋な強化型みたいなのだったよ」

「『操りゴケ』って、どんな感じなのかな?」

「分からん。とりあえず進化条件は操作系スキル3つ以上ってなってたし、操作系スキルに絡んだものだとは思うけど。あと魔法適正が下がるって書いてあったな」

「物理向けなのかな?」

「そうかも。とりあえずまだ他にも進化先出るかもしれないから保留だな。ヨッシさんの方はどう?」

「私は『王毒バチ』っていう次の進化だね。条件がなかなか凄いことになってたよ」

「ほう? どんな風だ?」


 アルが物凄い興味深そうな声音になっている。まぁ凄いことになってる条件と言われれば確かに気になるよな。俺もかなり気になったよ。


「えっとね、まず毒生成系スキル3種類以上、『毒の操作Lv3』以上、『毒魔法』の取得、『毒魔法』による成長体の撃破だって」

「……いつの間に毒の操作をLv3まで上げたんだ……?」

「ケイさんが岩の操作を鍛えてる時かな。Lv3まではあっという間に上がったけど?」

「なんですと!?」

「ケイさん、私も土の操作はLv3まで上がったよ!」

「……段々手慣れていってたと思ったらそういう事か」


 どうも池作りの時にスキルLvが上がっていなかったのは俺だけらしい。……仕方ないよな、岩の操作は応用スキルだし。


「……まぁいいや。ヨッシさんはその進化は良さそうだな」

「うん、他にもっと良い進化先が出なければ『王毒バチ』にするつもり。ケイさんの操作系3つで出てくる進化ってのも気にはなるけどね」

「確かになー。もうちょい詳細が欲しいとこだけど、一か八かで進化するのも躊躇うんだよな。もう1つの魔法強化も魅力的だしな」


 やっぱり魔法は使いたいんだよな。操作系はあれはあれで便利だけど、俺はどちらかというと魔法に拘りたい! ……魔法増やしたら更に進化先とか出ないかな……? それならポイントを使っての魔法取得も考慮に入れるぞ。

 

「はっ!? そういえばケイさん、操作系スキルって投げた物にも有効なのかな!?」

「どうした、突然?」

「ハーレ、何か思いついたの?」


 何かハーレさんが思いついた様子である。操作系スキルの話も出ていたからそこからの思いつきか? まぁ視界内なら操作出来るはずだし、多分不可能ではないとは思うけど……。あ、違う。行動値を普通に消費するスキルの同時使用は不可能だから無理だ。でも、このやり方だとどうなんだろうか?


「……操作中の物を『投擲』するのは無理だな。同時にスキルの使用は出来ないし」

「あ、そういやそうだった!」

「ただ、投げた直後ならどうなるかは分からない。投げるまでが『投擲』なのか、どこかに当たるまでが『投擲』なのかによる。投げるまでのような気はするけどな」


 そうじゃなきゃ、連続で投げれないからな。それなら投げた直後に操作の支配下に置けばいけるはず。


「ちょっと試してみるねー! 『投擲』! 『土の……。 あ、間に合わない!?」

「まぁそうなるか……」


「くそっ!? なんでバレた!?」

「「「「「え……?」」」」」

「……え、もしかして偶然……?」


 投擲された石の向かった先には、木の枝に擬態したカメレオンがいた。カーソルは赤で、受注マークの光点付き。まさしく競争クエストの相手そのものになる。っていうか赤の群集のプレイヤーに受注マークがあるって事は、赤の群集の森林エリアも群集拠点種が誕生したのか。

 っていうか、単なる偶然だろうけどハーレさん、ナイス! このクエスト中ならばやる事はただ1つ!


「よし、みんな仕留めるぞ!」

「よしきた!」

「ちょっ!? まっ!?」

「まぁそういうクエストだしな。『根の操作』!」

「問答無用! 『ポイズンクリエイト』!」


 即座に根の操作でアルがカメレオンのプレイヤーの捕縛に移る。ちょこまかと逃げ回っているが、ヨッシさんの毒を受けて動きが鈍る。これは麻痺毒だな。


「アル、そのうち取得出来る樹木魔法のLv3を見せてやるよ」

「……なに? ケイ、どういう事だ?」


 纏属進化である纏樹の今だから使える樹木魔法Lv3。そういやアルにはまだ話せていなかった気がする。とりあえずアルへの説明は後回し。これは俺だと大型相手には通用しないけど、あまり大きくないカメレオン相手なら問題はないだろう。


<行動値3と魔力値12消費して『樹木魔法Lv3:コイルルート』を発動します> 行動値 22/25(上限値使用:4): 魔力値 44/56


「うわ!? なんだ、これ? 根が巻き付いてくる……!?」


 『コイルルート』の性質は攻撃ではなく、根で絡みつき敵の行動を封じる点にある。根の操作と違い、自動追尾性能付き。ただし、影響範囲は木の大きさに依存する。小さい俺じゃ『常闇の洞窟』で複数体相手だと役に立たなかったんだよ……。だけど、アルがこれを覚えればかなり便利になるはずだ。


「……なるほどな。ケイのその大きさじゃ本領発揮は難しそうな魔法だな。それにしてもその進化、樹木魔法Lv3まで使えんのかよ」

「ま、1日1時間の時間制限付きだけどな」

「それじゃ恨みはないけど、覚悟はいいかな?」

「良くない!? ルアー、助けてー!?」


 サヤが根に絡まって捕まったカメレオンに向けて、伸ばしたツメをチラつかせる。あーあれを敵側から見たら怖そうだ。……ん? ルアーって言ったか、今? って、ヤバい!?


<行動値1と魔力値4消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 21/25(上限値使用:4): 魔力値 40/56

<行動値を4消費して『水の操作Lv5』を発動します>  17/25(上限値使用:4)


 即座に水の防壁を展開。そこに撃ち込まれてくる水弾。これは水魔法Lv2の『アクアボール』か!? 不意打ちに咄嗟に対応出来て、なんとか凌ぎきったけど誰の攻撃だ!? 水弾が襲ってきた方向に目を向ければ、そこには見覚えのある姿があった……。


「よう、こんなとこで再会とは奇遇だな。なぁ、ケイとその仲間たちよ?」

「まぁクエスト内容的にも、所属エリア的にもこういう可能性はあるもんな。なぁ、ルアー」


 そこにいたのは赤の群集の川で出会った魚のプレイヤーのルアーである。あの時と同じように地面を歩いていて、いまいち迫力には欠けるはずなんだが、本人からの威圧感がかなり伝わってくる。……なるほど、赤の群集でのベスタ的な立ち位置というのは伊達ではないという事か。

 さっきの一撃、おそらくはルアーの水魔法だろう。中々手強そうだな。


「ルアー、早いって!」

「お前らが遅いんだよ」

「いやいや、魚なのに陸地の移動速度がキツネより早いってどうなのさ?」

「お、こいつらってもしかしてあの時の連中か?」

「まぁな。油断して良い相手じゃねぇぞ?」

「そうですね。油断せずに行きましょうか」


 元々いたカメレオンと魚のルアーに続いて、草花というかチューリップ、キツネ、イカがやってきた。って、イカー!? あ、多分仲間の呼び声で海から森林へやってきたんだろうな。そして陸地への適応進化はしているのだろう。普通にイカの足で歩いてるし……。

 ともかく、向こうも5人PTで全員に競争クエストの受注マーク付き。今回は偶然でカメレオンを発見しただけで、本来は気付きもしなかった。まだ赤の群集の森林エリアに群集拠点種が誕生してないと油断していたのもあるけど、流石に気を抜きすぎていたか……。


「さて、どうする? このまま見て見ぬふりでお別れってのも面白くないだろ?」

「そりゃそうだな。そんな事するならこのクエストは受けていないっての」


 ルアーが半ば挑発じみた感じで声をかけてくる。そりゃまぁ俺たちだって対人戦の可能性があるのを前提にクエストを受注したんだ。まぁ思った以上に早かったし、予想外の相手だったけども、こういう事態そのものはあるとは理解していた。

 それにルアーの言うように競争クエストで遭遇して、挨拶をしてさようならじゃ面白みはない。その勝負、受けて立つ!


「それじゃ、総力戦と勝ち抜き戦どっちがいい?」

「……ちょっと相談してもいいか?」

「それくらいは良いぜ? なに、この状況では流石にこれ以上の不意打ちなんてしねぇよ。んな格好悪い真似出来るかってんだ」

「それもそうだな」


 前に会った時のルアーの性格から考えて言ってる通りなのだろう。おそらくそこは信用して問題ないはずだ。とにかくみんなと相談しよう。


「そういう流れになったけど、どうする?」

「……集団同士の戦いはしたことないし、やってみたいかな?」

「サヤの意見に1票だ。今後もPT同士の戦闘もあるだろうしな」

「私もそれで良いよ!」

「ケイさん、場合によっては私も纏属進化するからね」

「おう、みんなも必要に応じて『進化の軌跡』を使ってくれ」

「おうよ」

「わかったよ」

「うん!」


 よし、話は纏まった。集団戦と行こうじゃないか! 相手もおそらく強敵。油断せずに行こう!


「集団戦で頼む」

「よし、わかった。そんじゃやるとするか」


 こうして競争クエストも始まったばかりだが、ルアー率いるPTと、俺のPTの集団戦が始まった。


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