第29話 それぞれの得意な事


 とりあえずLv10を目指す事に決まったので、アルをナビゲーターとして他の4人で一緒に固まってマップを埋めていくことにした。出来ればバラバラで埋めて行くほうが効率はいいんだけど『黒の暴走種』を見つけたら単独での相手は無理だろうということで固まって動くことにした。

 Lv10になってリスポーン位置を自由に設定出来るようになれば個別でもいいんだけど、今死ねばこのエリア内のどこかにランダムでリスポーンする事になってしまうからな。


「サヤ、ヨッシさん、こっちにいるぞ!」

「あ! 先越されたー!?」

「オッケー! サヤ、先行して麻痺させてくるね!」

「ヨッシ、任せたよ!」


 そうしてマップを埋めていたら一般生物の鹿の群れを発見したので、一網打尽にすべくみんなが動いていく。索敵は俺とハーレさんと『同族同調』を使ったアル。そして足止めはヨッシさんと状況次第で俺。仕留めるのはもちろんサヤだ。必要がある時はハーレさんが撹乱に回っている。

 おっと、逃げようっていってもそうはいかないぜ。


<行動値を1消費して『スリップLv1』を発動します>  行動値 9/12(−1)


 逃げようとした鹿をスリップで転ばせる。ヨッシさんの麻痺毒をまだ受けていないやつは俺がこうやって受け持っているのである。いやー、足が地についてる相手ならスリップの威力は凄まじい!


<行動値を1消費して『スリップLv1』を発動します>  行動値 8/12(−1)


 今度は別の鹿が転ばされる。だから逃さんって。経験値を逃してどうするよ?


「うっわー、ケイさんの戦い方って地味にえげつないよね!」

「そうか? 似たりよったりじゃねぇ?」

「あーそれもそうかも?」


 毒針で次々と鹿を麻痺させていくハチのヨッシさんと、麻痺した鹿に遠慮なく致命の爪を振り下ろすサヤ。この2人も似たようなもんだ。うん、野生の戦いなんてどれもえげつないもんだろう。


「んーこう見てると私は貧弱だよね。小さいから攻撃力もあんまないし、ヨッシやケイさんみたいに毒もないしね。んー毒爪みたいなスキルないかな?」

「その分ハーレさんは動きは早いだろ? 撹乱にはもってこいだと思うけど」


 あと単純に毒持ち3人はバランス悪いだろう。いや、あって困るもんでもないけど、他の選択肢も増やしときたいしな。多分ハーレさんは鹿とかフクロウと相性が悪かっただけだ。図体がデカいけど動きが遅いモンスターとかだと撹乱役としていい感じなんじゃないか? 


「ハーレさんは投擲上げればいいんじゃねぇか? 俺の上で投げてた時、結構いい動きしてたぜ」

「えへへー! アルさんに褒められたー! そっか、投擲か!」

「なるほど、物理の遠距離攻撃か。それはありかもな」

「そっかそっか。あ、そういや木の実の残り少なかったんだ! ちょっと採集してくる!」

「いってらっしゃい」


 ハーレさんは素早く走って、軽々と木の上に登っていった。流石、リスだな。木登りはお手の物だ。


「あれ? ハーレは?」

「木の実を採りに行った。ヨッシさんは一通り終わったところか?」

「そこのケイさんが転ばせた2匹で終わり。あとはサヤ任せだね」

「そうか。んじゃサヤ待ちだな」


 仕留められるだけの攻撃力を持っているのはサヤだけなのでサヤに任せるしかない。……ん? ちょっと待てよ、本当にそうか?


「サヤ! 1匹だけ残しててくれ!」

「良いけど、どうするの?」

「そりゃ勿論実験だ!」

「うん、わかったよ。そこの1匹残しとくね」


 サヤは俺の一番近くにいる転ばされて麻痺毒を受けて横たわっている鹿を指さした。まぁどの鹿も似たような状態だけどな。よし、実験用の個体も確保したし始めるか。


<インベントリから小川の水を取り出します>

<行動値を4消費して『水の操作Lv3』を発動します>  行動値 4/12(−1)


 さてとフクロウにはずぶ濡れにして防御力と機動力を削いだだけだったけど、本格的に攻撃に使えばどうなるかな。さて、まずは勢いよくぶつけてみよう! 少し高めのところから勢いをつけてっと。

 おぉ!? 狙った位置は外したけど、鹿の足が折れて変な向きになった! これ、そこそこ威力あるんじゃね!?


「へぇ、結構な威力あるんだね。なんか魔法っぽい」

「魔法ではないけどな。そのうち魔法も覚えたいもんだ」


<増強進化ポイントを1獲得しました>


 ……ん? このタイミングで何故ポイント取得? 今までの事を考えるなら、支援ではなく自力で一定量のダメージとかか……?


「なぁ、ヨッシさん。それなりに弱らせたりしたらポイントって貰えるのか?」

「そうだけど、え? 知らなかったの!?」

「え!? そうなの!?」

「ケイさんはともかく、サヤがなんで知らないの!?」

「一撃でしか倒した事なくてね……?」

「はぁ、なるほどね。1日1ポイントだけだけど、止めを刺さずに弱体化で増強進化ポイントは手に入るよ」

「なるほどね。ただ転けるだけとか、微毒だけじゃポイント貰えない訳だ」

「なんか勿体無いことした気分だよ……」


 昨日の1ポイントだけとはいえ、知らずに取り損ねたなら確かに損した気分になるよなー。うん、サヤの気持ちもわかるぜ。さて、それなりの攻撃になりそうな事も分かったし、もう一つ実験で仕留めよう。標的は鹿の頭部。お、怯えた表情してるな。すまんが、これはゲームなんだ。非情に行かせてもらう!

 今度は水で出来た矢のような感じをイメージして水の操作をする。うーむ、まだこんな形にするには難しいか。不格好な枝みたいになってしまった。まぁいいや、そのまま行こう。頭部に目掛けてせーの!


 あー衝撃は伝わって鹿は絶命したけど、狙った貫通は無理か。もっと精度を上げないとこりゃ無理だな。


<増強進化ポイントを3獲得しました>

<増強進化ポイントを2獲得しました>

<ケイがLv5に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント1、融合進化ポイント1、生存進化ポイント1獲得しました>

<鹿の肉3個、鹿の革1個獲得しました>


 お、Lv上がった。よしよし、順調だな。ヨッシさんの暴走みたいな事がなければ一般生物を探すのはそれほど難しくもなさそうだし、このメンバーなら取り逃しも少ないからいいな。サヤと2人の時は結構取り逃がしたし。って、あれ?


「なんで2回に分けて増強進化ポイントが入ってるんだ?」

「ふふふ、ケイよ。その秘密、知りたいか? 知りたかろう!」

「いきなりなんだそのキャラは!? なんかアルは知ってんの?」

「情報共有板で仕入れて来たぜ。ワールドクエスト始まってから情報の秘匿が減ってきたみたいでな。それで簡単に言うとだな、敵を倒した時のポイント取得タイミングがいくつかあるんだよ。まず、敵を弱らせた時。これはさっきヨッシさんの言ってたやつだな」

「あ、アル、すぐに元のキャラに戻るんだね」

「サヤさん!? そこはスルーして!?」


 スルーして欲しいなら初めからしなきゃいいのにな。それはどうでもいいから続きが気になるんだよ。


「アル、早く続き!」

「ごほん! それでだ、自分で倒した時にも貰えるな。これは2回までだ。基本的に1回目3ポイントで2回目2ポイントってなってるそうだ。2回目に減ってる理由は『灰の群集』の所属デメリットの可能性大だな。だからケイはあと1回は貰えるはずだ」

「そういや、所属でポイントの増減あったな。よし、次見つけた時は仕留めようか」

「んで、最後は支援で貰えるポイントだとよ。PT組んでる時に仕留めたモンスターでの先の2つのポイントの総和の半分がもらえるとさ。端数は切り捨てだと」

「へぇ、そんな風になってんだ。やっべ、すぐ忘れちまいそう……」

「まぁいいんじゃねぇの? 毎日全部取ろうとしてもそれはそれで面倒だしな。多分Lv上げと称号の方が重要だと思うぞ」


 あっさりとそう言い放つアルだが、そうやって甘く考えてたら痛い目見るんだぞ! 土壇場でポイントが足りないとかそういう羽目になるんだ!


「たっだいまー! あれ、サヤさんなに落ち込んでるの?」

「あ、ハーレさんおかえり。ちょっと無駄にしたポイントで凹んでただけだから大丈夫だよ?」

「それならいいけど。あ、果物食べる? 美味しいやつ見つけたから採ってきたよー!」

「美味しい果物とかあるのかよ!?」

「モンスターのみのゲームなのに味覚ありとか作り込み半端ないな……」


 文句言いつつも、みんなで果物を食べましたとさ。俺とアルは食えなかったけどな! ちなみにHP回復アイテムだったそうだ。うん、ゲームとしては地味に重要なアイテムだ。ハーレさんは回復担当も向いてるかもしれないな。

 果物の中に大きめの種がある種類だったので、それはハーレさんの武器としてインベントリに仕舞われていた。あと硬い木の実もいくつか採ってきたらしい。自由に動く割に案外ちゃっかりしてるな、ハーレさん。


 まぁとにかく、Lvも上がってステータスとポイントはこんな感じになった。結構ポイント貯まってきたし、何かスキルを取ろうかな。


【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:コケ

 所属:灰の群集


 レベル 4 →5

 進化階位:幼生体


 群体数 573/1000 → 573/1100

 行動値 0/13 → 0/14


 攻撃 4 → 5

 防御 11 → 13

 俊敏 4 → 5

 知識 7 → 9

 器用 11 → 13



【進化】


 増強進化ポイント 17P

 融合進化ポイント 18P

 生存進化ポイント 7P


《変異進化》

 『水棲コケ』 

 進化階位:成長体

 進化条件:Lv10、『淡水適応』Lv1以上、融合進化ポイント5、生存進化ポイント5

 水中での活動に特化したコケの一種。主な活動場所は陸地から水中へと変わる事となる。水中へと進む道を選ぶのならば、この進化を受け入れるといいであろう。


《転生進化》

 『ミズゴケ』

 進化階位:成長体

 進化条件:Lv10、『水の操作』を使いモンスターを倒す事、増強進化ポイント5

 通常のコケよりも水との親和性が高くなったコケ。陸地にありながらも、水と共に過ごす道を歩む事を選んだ姿。正当進化系統で属性適応型の進化である。



 所属ボーナス:生存進化ポイント上昇、増強進化ポイント微減少、融合ポイント微減少


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る