第125話 とある部隊の長い一日
※今回は114話の「立つ鳥は跡を濁さず、全てを灰燼に帰すもの」で火蓋を切った部隊の話で、幕間のようなものです。
初冬の日暮れは早く、街区を徘徊している小型種の魔獣達より人族の暗視能力が低いことから、帝国兵達は日没前に僅かでも多くの敵を減らそうと奮戦しており、少なくない欠員を出したリグシア領軍の旅団第一大隊第二中隊も例外ではない。
「周囲一帯の路地を
「「「了解!!」」」
哀れな市民の亡骸が散乱する都市の一角、いつもは育ちの良さを
“男子、三日間会わざれば
(
落ち着いた時点で押さえている感情が
それを知覚して自嘲気味に
「… 撃ち漏らした奴、説教ね」
悪態と共に銃口を向け、体躯と不釣り合いな頭部へ
取り急ぎコッキングレバーの操作で
勢い余って滑ってきた魔獣の首筋を無慈悲に振るった軍刀で切り裂き、軍服の
「すみません」
「お手を
「いや、構わない。さっさと済ませて仮設陣地に帰投するぞ」
「休憩がてら、松明やランタンを受領しないと」
薄暗い空を見上げて呟かれた副官の言葉に頷き、一礼した
それから
白化して輝きを失った精霊門を囲むように四体の
「女狐殿の
「同意見だな、現状のラムゼイ男爵には帝国法の戦時特例で強権が与えられているし、暫定的な交渉先として申し分ない筈だ」
領内第二の都市ドレスデを治めるリグシア侯爵の嫡男、セドリック・バレンスタインが惨状を
幸運にも責任ある立場の御仁は武功を上げて出世したクチなので、銃後の貴族らのように見当違いで迷惑な命令を出すどころか、城郭内では一時的に帰還してくる部隊のため簡素な食事と夜間装備、貴重な弾薬が用意されていた。
胸裏で感謝しつつも、伝令に案内された城庭の教会付近へ移動して部隊点呼を取り、生き残った百余名の者達に休息を与える
必要な指示を済ませ、脱力するかのように芝生へ腰を下ろして、ふと視線を上げると異変の前兆となった局所的な地震や、巨大ゴーレムの剛拳で壊された城の残骸が目に付いた。
「何と言うか、疲労感を増長する
「でも、都市内で領軍の拠点になるのは
どさりと背後に座り込んで遠慮なく体重を掛け、
「無駄に体力を消耗するな、まったく困った連中だ」
「…… 不可抗力です、父上」
「
目上の将校に対する一般的な礼儀として起立し掛けた二人を止め、四十代後半の
珍しくも微妙な態度にクルトらが少し戸惑えば、ぼそりと言葉を紡ぐ。
「いや、第一大隊第二中隊が無事帰投したと聞いたのでな……」
「あぁ、親心というやつですか。愛されてますね、中隊長」
「リグシア領はどうなるんでしょうね、先が見えない」
「言いふらす事でもないが… この後、男爵とゼファルス辺境伯の陣中を訪問する事になった。
領地と爵位を継承するセドリック卿の手前、大それた事柄は取り決められずとも、招いた客人を
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