第49話 盾の騎士と湿地の羽虫
事後も何やら話し込んでいる者達を見下ろして、観覧席でほっと胸を撫でおろしたレヴィアとは対照的に、初めて騎士王の技量に触れたリーゼは頬を引き
「…… ディノ君、あんた本気でアレに勝つつもりなの?」
「当然だ、正式に認められた場で刃を交える機会があったらな」
大真面目に頷く蒼髪の騎士が日々研鑽しているのは既知であり、引き締まってきた筋肉質な体格は彼女の好みでもあるのだが、人外染みた騎士王と切り結ぶ実力を有しているのか疑問だ。
「多分、互角に渡り合えるとすればロイドさんくらいかなぁ?」
「何故エレイアみたいな台詞を言っているのですか、レヴィア……」
「いや、あの娘なら“兄様には敵いませんけど!”でしょう」
声真似してフィーネに返した幼馴染みを
(もぅッ、そっちにも対抗心があるのね)
彼のセルヴァス家は第三代騎士王に仕えた
凄腕ながら“武を極めるには非才”だと陶芸の道へ進んだロイド達の父親に対して、まだ
それが息子達の代となれば逆転し、父親を凌ぐ
(ちょっと前まで、どうでも良い話だったのに……)
今や同じ騎体を駆る一蓮托生の関係なので、彼女は手の掛かる弟のような相棒を支えていく必要があった。
「先ずは専用騎体の
一昨日、ウィグレス湿地を経由して王都にきた商隊から、全高8m級の中型異形に相当する巨大甲虫を見掛けたとの報告が王城へ届けられており、性能評価試験を終えたクラウソラスL型改“ガーディア”の実戦投入が既に決定していた。
それを駆る二人が準備のためにレヴィア達と別れ、拡張工事中の工房へと足を運んでから少し後……
今回は野良の魔物相手なので大掛かりな戦闘にならず、二騎に随伴する歩兵隊や後方部隊などがいない事もあり、騎体の巡行速度を活かして一刻程で問題のあった地域に到達する。
湿地帯に入ってからは
『そろそろ、討伐対象と出くわしそうだが…… 大丈夫か?』
『騎体のコンディションは良好です、ディノさん』
先日まで準騎士だったレインが緊張して返答するものの、蒼髪の騎士が聞きたかったのは寧ろ彼女自身の事である。
騎士王が騎体を乗り換えた事で、四番騎の専属に抜擢された彼女の初実戦となるため、幾ら
『どうせ統率されてない魔物が相手だ、気負わずにいこう』
『お
恐縮した声音に相棒が苦笑するのを察し、ガーディアの魔力制御を担うリーゼが横合いから
『元を
『………… 仰る通りです、気が楽になりました』
『ふふっ、ヨハン君もね?』
『はい、程々に頑張ります!』
四番騎付きの少年魔導士が元気良く応えるのを聞き、何処か
(それで円滑にいくなら構わんさ……)
そう割り切って暫く騎体を歩ませていれば、遠方でふわりと浮かび上がる巨大甲虫三匹の姿が疑似眼球に映り込んだ。
大きさこそ中型の異形種に過ぎなくとも厄介なのは飛翔能力であり、行動範囲が広いため放置すれば近隣の村や町に被害が出ることは言うに及ばず、
故に限界まで密かに接近して魔法で撃ち落とすのが定石なれども、
「「ギシャアァアアァ――ッ!」」
『ちッ、撃て!』
短く舌打ちしたディノの言葉にリーゼが応じ、騎体ガーディアへ搭載された光属性魔法を発動させるのに連動して、レインの呼び掛けに従ったヨハンもクラウソラス四番機の風属性魔法を放つ。
『穿ちなさいッ、光散弾!』
『切り裂け、風陣ッ』
各騎が構えた片腕から、被弾させること重視の範囲攻撃魔法が中距離より打ち出された直後、警戒状態の巨大甲虫達は中空で散開するが……
飛来する光球が炸裂して
「「ギウゥウゥウッ!!」」
「ギィイッ!?」
不運にも上空へ退避しようとした巨大甲虫が柔らかい腹部に致命傷を負い、地に
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