第35話 兵士は殺されるのと同程度に殺すことに抵抗を覚える
「お疲れ様、結構激しい戦闘だったようね」
若干、緊張していた気持ちが少しだけ
「………… 出会い頭から散々な目にあったな」
「あぅ~、大変だったよぅ」
溜息を漏らしたレヴィアと一緒に乗騎を
修理が必要な箇所には高所作業車で無機属性持ちの魔術師達が近付き、手にした魔導錬金製の素材に魔力干渉して軟化させ、まるで粘土のように扱って欠損部を補填していた。
さらに強度を上げるためか、共同で作業する鍛冶衆が槌を振り上げて叩きおろし、幾重もの打突音を響かせていく。
無論、塗装とかどうでも良い事は後回しにされているため、段々とツギハギ模様の騎体となるのを眺めつつ、再び貰った
同様に騎体ベルフェゴールへ意識を向けていたニーナの視線が
「
「余り気負い過ぎるなよ、悪いのは襲撃した側だ」
「ありがとう、クロード殿…… 救助活動の願い出も含めてね」
都市防壁東門での戦闘直後、幾つかの死体や潰れた家々を騎体の疑似眼球が
今頃はディノとリーゼが一個小隊規模の兵卒達を指揮して、東門付近の街区で瓦礫の除去や要救助者の捜索などをしている筈だ。
「被害が見掛けよりも少ないと良いな」
「えぇ、本当にそう願いたいわ」
心中は察して余りあるが…… 対人戦闘から知り得た事柄は多い。同じ
「…… 騎体の攻撃魔法とか、中々に厄介だからな」
「ん、もっと日頃から私に頼っても良いんだよ?」
耳ざとく独り言を拾ったレヴィアが頷き、ここぞとばかりに身を寄せてくるので、取り敢えず頭をポフっておく。
それをニーナに
……………
………
…
結論から言えば再度の襲撃は無く、翌日には
因みに俺達が初撃を喰らわせた騎体の専属騎士と魔導士は戦死、ベルフェゴールの鋭い爪で腹部を貫かれた騎体の連中はどさくさに紛れて逃走したようだ。
「アインストやダニエルが仕留めた相手も操縦席で亡くなっていたし、証拠は掴めないけど、首謀者の心当たりは数人あるわ」
執務机に両肘を突き、両手を前で組んだニーナが難しい表情で諸々の状況を説明してくれるが…… 交戦した敵騎体の操縦者達の死亡をはっきりと知らされた事により、意識の集中が乱れてしまう。
どうやら戦場に於いて距離や兵器を間に挟むことで、命を奪う際の心理的な抵抗感が薄れるというのは事実らしいが、後からジワリとくるのも否定できない。
(斬ると決めた瞬間、殺し殺される覚悟はあったつもりだが……)
意外と真っ当な拒絶反応を示した自身に
「顔色が優れないようだけど、大丈夫?」
「今更だが、昨夜の戦闘で初めて人を斬った実感が湧いてな……」
誰かに言いたかったのか、さらりと口から出た包み隠さない言葉にニーナが
「多分、
「ありがとう、
彼女らしい理屈っぽい励ましが少々面白く、肩の力を抜いて謝意を述べた。
背後から“事前に罪人の一人や二人、斬らせておくべきだったか?”などと、ライゼスの物騒な呟きが漏れ聞こえてくるが、面倒なので適当に無視しておく。
「それにしても対人戦が初めてであの動きは素晴らしいですな、騎士王殿」
「無我夢中に過ぎないさ」
俺からすれば瞬時の判断で、
それをオブラートに包まず伝えてやったら、ゼファルス領の騎士長が豪快に笑った。
「お褒めに預かり恐悦至極、私にとっては紛れもない称賛ですよ」
「主従
「心外ね、私まで同じにしないでよ」
“何言ってんだコイツ”という驚愕の表情を向けてきたニーナが抗議を始め、騎士長に対する愚痴を延々と聞かされてしまうものの……
「んんっ、我々も暇ではないのだ、ニーナ卿」
「
わざとらしい咳払いをしたライゼスに促され、御令嬢が自ら脱線させた話を引き戻す。
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