第27話 蕎麦屋にて、時空連続体を学ぶ
「これは……」
扉をくぐり抜けた瞬間、この世界に迷い込んで一月程にも関わらず、既に多大な懐かしさを生じさせてくれる和の内装に感嘆する。
「リゼル騎士国に派遣した教導技術者達から、貴方がジャパニーズだと聞いていたから…… ふふっ、その表情を見る限り正解のようね」
「
「あ、でも座敷席はお断りよ、正座なんて足が痛くなるじゃない」
微笑を浮かべたニーナが振り返り、板の間座敷と置かれた座布団を眺めていた俺に気付いて、そっちじゃないと釘を刺す。確かに彼女の大胆なドレス姿では浮いてしまうだろう。
(細かく言い出したら、俺自身も内装に合ってないしな……)
その外套を外して片手に持ち、
「いらっしゃいませ、ニーナ様」
「久しぶりね、源蔵、元気にしていたかしら?」
「お陰様で…… そちらが例の?」
「えぇ、クロード殿よ」
藍色に染めた
「前領主に拾われる前のからの知り合いでね、源蔵は頑固だけど良い奴なの」
「褒めても何も出ませんぜ」
ぶっきらぼうに言い放って茹で上がった
「まさか、
「大半の料理は頑張れば再現できるんじゃない? ここ実は
「…… なん、だと!?」
思いがけない発言に凝視するも、彼女はしてやったりな表情で詳しい話は待てという。
仕方ないので折に触れて感じていた食べ物や風習などの類似性、断片的に得ていた地理的な情報を統合して、先ほどの言葉の
暫し詮無きことを考えている内に海老や
「本来、
一通りの品を
きっちり扉が閉まるまで確認してからニーナと向き合い、この世界が地球だという根拠を聞こうとするも彼女は器用に箸を扱って
「ん、サクサクして美味しい、
「あぁ、そうだな」
美しくとも普段はきつめの表情を
「それ、私の好物だから……」
「奇遇だな、俺も白身魚は好物だ」
ちゃんと二人分が用意されているので遠慮なく振り切り、確保したそれを天つゆに浸けてから
「ぐぬぅッ、レディファーストという言葉を知らないのかしら、東洋人は!」
「…… ニーナ殿の分も一切れあるだろう」
理不尽な台詞にぼやきつつも残った白身魚の
「それで此処が地球という話だが……」
「ん~、詳しく説明するとややこしいのだけど、時空連続体って分かる?」
「三次元に時間軸を足して、四次元多様体として考えるだったか」
要点だけ
「概ね、その認識で構わないわ…… ずずッ」
双方の
時空連続体の内部に於いて微細な変化が収束点、つまり現在に
「派生した直後の世界だけど、別の時空連続体として拡散する前に
「つまり、俺がさっき白身魚の
「へぇ…… 貴方、頭良いのね、説明の手間が省けるわ」
関心を見せながらも彼女は不敵に
「実は私が無類の白身魚好きで、譲って貰えなかった事が許せず、人族の天敵がいる状況下でリゼル騎士国に敵対宣言するとしたら?」
「大局に影響するかもな…… あぁ、バタフライエフェクトの話だな」
どこかで蝶が
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