第26話 全ては第三代騎士王のお陰です
夜の
その中を進む事
「これは……」
「やはり、感覚的に分かるのね」
ニーナの言う通り、
非常に
「……
「そう、主に欧米と日本の出身者が多いけど、中国人とかもいるわよ」
要するに
「貴方の事を聞いてから少し疑問に思っていたのだけど、この世界に
「そう
「…… あんまり良くないのよ、私も
途中で逃げ出して、行く当ても無く困っていたのを大聖堂に属する神父に拾われ、幸い言語野に恩恵を受けていた事もあって、最初はそこで孤児らに読み書きを教えていたそうだ。
「私に教師は向かないと実感してしまったけどね、教えるのが苦手なの」
つい自身の感覚で“これぐらい分かって当然”と思ってしまうため、補完すべき説明が抜けていたり、物覚えの悪い子供相手に僅かなイラつきを感じたり、当時はそんな感じだったと彼女は言う。
子供というのは本能的に相手の心情を察する能力があるので、いつの間にか一部の子らに避けられていたらしい。
「それは教師に向かないね」
「おい、レヴィア……」
「
不向きな自覚はあれども、生来の技術者であるニーナの炊事洗濯などの生活能力は壊滅的で、教会に住まわせて貰っている恩を返すにはそれしかなかったのも事実。
故に悪戦苦闘して一月ほど頑張った頃、前領主のゼファルス辺境伯レオニードが司祭から不思議な知識を持つ少女の噂を聞き、有用性を見いだして引き取った。
「そこからは水を得た魚だったから、直ぐに役立つ事ができたわ」
「で、現在に至る訳か……」
彼女がこちらに流れ着いてからの話を交えつつ、この世界における
「我らがリゼルは騎士の国、
「僕らの血筋も遡れば
「現王家の祖も
「寧ろ、それが決定要因か」
奴隷の身分から実力だけで英雄となり、国家の存亡を
だからこそ、リゼル騎士国に
「運が良いわね、クロード殿は…… でも、多くの同胞はそうじゃない」
「だからこの街区を?」
「そう、現実的な問題もあって、役立ちそうな人員しか手を差し伸べてないけど」
「やり過ぎれば、難民問題と同じ現象が起きるからな」
何事も
(地獄への道は善意で
悪意は善意の裏に隠すものだという意味の他、良かれと思ってやった事でも自らの手を離れ、収拾が付けられなくなる事も含む言葉だ。
例えば最初は民主的なデモ活動でも気が付けば暴動に至り、最悪は内戦状態となる場合も実際に地球で起きていた。
自らを正しいとする自覚が集団内部で先鋭・盲信化し、
(馬鹿らしい話だな、正しさなど
主義主張などに囚われず、中長期的な視点を持つ重要性を再認識している間に目的地に着いたようで…… 先頭を歩いていたアインストが止まって振り返った。
「総員、建物の周辺を固めろ」
「「「承知ッ」」」
響いた彼の指示に応え、機敏な動きで騎士達が駆け出し、狭い路地裏などに入り込んで真新しい料理屋の四方へ散っていく。
「ロイド、
「あぁ、引き受けよう」
「ご一緒します、お兄様」
普段から兄と行動を共にする事が多いエレイアも名乗りを上げ、半数の者達を連れて裏側にあるだろう勝手口へ向かった。
残りの半数で出入口付近を押さえたロイドを一瞥し、ニーナに続いて料理屋に入り掛けたところで、ライゼスとレヴィアの二人が騎士長に止められてしまう。
「すまないが、ニーナ様は騎士王殿と密会を所望だ」
「…… そうか、ならば致し方ない」
「あうぅ~、晩御飯が…… お腹空いたよぅ」
少し場違いさも感じさせる可愛い声で赤毛の少女が嘆く中、俺は人払いされたそこに足を踏み入れた。
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