第18章「迫り来る選択」その11


「知ってるとは思うが、二年になれば文系と理系でクラス分けがされる。そろそろ進路も考えて、文理選択をしなければならない」


ホームルームで秋山先生が文理選択の話題を振ってきた。


今日は美術の授業で良い絵が描けて良い気分に浸っていたのに、最後の最後で嫌なことを…。


「自分がどちらに進みたいか分からない人がほとんどだと思うが、こういうことは友だちに合わせて決めちゃダメだぞ。


やりたいことを見つけて、真摯しんしに向き合い、努力しなさい」


秋山先生はいつももっともらしいことを言う。


でも自分のやりたいことが役に立たないと分かっていた場合、どうすればいい?


僕はまだ迷っている。今は歴史を学びたいと思う。


でも歴史は社会人として仕事に就く上では、あまり役に立ちそうにない。


役に立たないものを学んでも仕方がないのか。


それなら平木の言うとおり、役に立つ数学や物理を学ぶべきなのか。


誰かに相談してどうこうなる問題じゃないとは思うけど、それでも誰かに相談したかった。


でも誰に?親か、平木か、西山か、東海あずみなのか、よくわからない。


僕は弱い、自分の選択に自信が持てない。


「平木」


「どうしたの?」


「ちょっと用事があるから、部活には少し遅れる」

 

「わかったわ」


平木は特に気にする様子もなく、教室を後にした。


彼女はおそらく理系を選ぶんだろうなぁ。


もしかするとクラスは別になるかもしれない。


でもそれでも、僕は僕の選択をすべきなのだろうか。


歴史の担当である横山先生に会うため、職員室に向かった。

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