第16章「作られた囲い」その14


ここで参加しなければ「あいつはこのクラスに興味がないんだな」と、みんなから白い目で見られると同時に、三軍であることに対して太鼓判を押される羽目になる。


三軍以下は学校生活において不利になることは確かだ。


授業中に発言をしても誰かに拾われることは皆無だし、


遅刻しようものならさっきまであんなに楽しそうに話していた一軍らが押し黙るほど変な空気になる(僕の実体験)。


何を悪いことをしたわけでもないはずなのに、待遇の差は誰の目から見ても明らかだ。


しかもそれをその他のクラスメイト、ひいては教師でさえも納得していることに僕は背中に嫌な汗が流れるような嫌悪感を抱く。


だから許される、だから許されない、


世の中にはこういう残酷ざんこくなことが暗黙の了解として存在している。


そんなことを受け入れていくことが「大人になる」ってことなのかもしれない。


僕は深いため息をついて自分の名前に丸が付けていないことを確認して、教壇にいる西山に名簿を渡した。


みんなが帰っていく中、屋上ににいた時と同じようにボーっとしていた。


ポケットにあった『月』のタロットカードの意味を調べてみた。


不安定、現実逃避、幻滅、今の僕の状況にぴったりだな。


「わかるわよ」


右隣には屋上で別れた彼女がいた。


「自分の無力さに打ちひしがれているんでしょう?」


どうして僕の気持ちがわかるんだろう。


「自分が嫌いな人って見ていて辛くなる。私は羽塚くんを不幸にしたくない」


どうして彼女の目はこんなにも美しいんだろう。


「今すぐにじゃなくていい。ゆっくりでいいから、羽塚くんが誰かを幸せにできることを信じて」


胸の高鳴りが平木にも聞こえるんじゃないかと思うほど、心が熱くなった。


「さぁ帰りましょう。今日あったこと、たくさん話したいの」


彼女は立ち上がって、そして微笑んでいた。


考えていたことが急に馬鹿馬鹿しくなった。


窓から見た秋空は僕の心を赤く染めてくれたようだ。

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