第16章「作られた囲い」その11
日が傾き始めたころ、東海が僕らのところにやってきた。
「筒ノ木さんは?」
「体調が優れないとのことで保健室に行きました」
後ろを見ると、彼女の姿はなかった。
こんなにあっさり終わってしまうと、なんだか呆気にとられて、言葉がすぐに思いつかない。
平木が一体どんな言葉で彼女を救ったのか、僕は知らない。
今まで何が起きて何をしていたのか、詳しく聞きたかったが僕の虚栄心がそれを遮った。
他人に何も知らないことを知られるのが嫌だった。
東海が何やら顎に手をあてて、考え事をしているようで数秒間の沈黙が続いた。
「部活を作りましょう」
文脈のない台詞に僕は何の意図があるのか、理解ができなかった。
「この世の謎を解き明かすのです」
今度は僕を指差して言ってきた。
ダメだ、こういう電波系の人間はこういうことを平気で言えるから苦手だ。
自分の知らないことや
自分の信念を曲げない芯のあるそんな人間が羨ましくて嫌だ。
「ええ、いいわよ」
平木はあれからずっと冷静で、さも当然のように僕が言うべき台詞を奪った。
「よろしくお願いします、平木さん」
「他人の悩みに触れるのは簡単なものじゃないわよ」
「ええ、それでも悩み部屋というものが一体何なのか私も詳しく知りたいのです」
こんな真剣な会話を聞いていると、ここにいることに居心地が悪くなった。
「あなたはどうしますか、羽塚さん」
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