第16章「作られた囲い」その9
「盗んだ備品はどこに置いているんだ?」
「彼女の『部屋』に置いてあったけど、ちょうどさっき出てきたから元の場所に戻っていると思うわ」
淡々と僕の知らない他人について話していく彼女はいつもよりも遠い存在に見えた。
「ちょっと待ってください」
平木との会話にひたすら夢中で
怒っているのか戸惑っているのか、わからない顔で僕に言ってきた。
「一体どういうことか説明してください」
まぁ、その要求は正しいはずだ。
東海はこの事件の解決を望み、僕は彼女の友だちに嫌疑をかけた。
今、彼女が見ているのは屋上で泣いている自分の友だちが知らない他人に寄り添われている光景、狼狽するのは当然だ。
でも事実は小説より奇なりで、筒ノ木さんの起きたことを東海に説明する勇気は僕にはない。
「悩み部屋」を信じる信じないの話じゃない、これを知ってしまえば東海の中で何かが崩れるだろう。
「私から話すよ」
しばらく沈黙が続いた後、最初にその静寂を破ったのは筒ノ木さんだった。
目が充血してるが、声は強くはっきりしている。
制服を着て、髪の毛はポニーテールでスカートはひざ下10センチほど。
顔はよく見えなかったが、東海の友だちとは思えないほど常識的な女の子に見えた。
「少し離れましょう、羽塚くん」
そう言われて僕と平木は校舎側のフェンスに行った。
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