第16章「作られた囲い」その4


六組の教室に戻った僕は、東海に話しかけた。


「東海、君の友だちがどこにいるか分かるか?」


「まさか彼女が犯人だと言うんですか?」


睨んでいるようだったが、衣装と童顔のせいで怖くなかった。


「分からない、でも一番有力なのは彼女だと僕は思う」


窓外の景色を見ると、屋台の客が貼り始めているのがわかる、もう二時前だからな。


「私は羽塚さんと数時間、共に行動して信用に足る人物だと思いました。あなたの判断にケチをつけるつもりはありません」


そこまで思われているとは思わなかったので、つい嬉しくてにやけそうになった。


東海にばれないように手で顔を隠したが、窓の方を向いていたことに気づいて手を下した。


「ですが、友だちを疑われるのは納得いきません。だから彼女を探すまでは手伝います、その代わり彼女が犯人だったら、私に話をさせてください」


割と真面目な顔をして言ったので、僕もそれなりに眉間にしわを寄せて真面目な顔になった。


「ああ、わかった」


「…」


「…」


廊下から喧騒が聞こえてくる。


しばらく沈黙が続いたので、先に聞くことにした。


「それで筒ノ木さんはどこにいるんだ?」


「えっと…そうですね…」


「…」


「…」


また廊下から人の笑い声が聞こえる。


ダメだな、こいつ。


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