第15章「世界に関わる者」その15
美術室と音楽室に行った後、十二時半になったので自分の教室で弁当を食べた。
教室には三軍の奴らが数人いるだけで誰も話すことなく、日が照っているが肌寒く感じる。
平木はいないのか…、まぁ今会っても気まずいだけか。
僕の右隣の席もあの頃のように生気を失ったように冷たく見える。
食べ終えた後、さっさと六組に向かったが、東海はすでにそこにいた。
「収穫はどうでした?」
「美術部はパレットが盗まれたらしい、吹奏楽部は何も盗られていないらしい」
「調べたのはたった二つだけなのですか?」
「ああ、そうだけど」
不満そうな顔をして、持っていたメモ帳を僕に差し出した。
「私なんて一年のクラス全部を回りましたよ」
そのメモ帳には各クラスの盗品とその状況、時間帯まで事細かに記されている。
本当に探偵なんじゃないのかと思うほどの調査力だ。
七組まであるんだぞ、六組を除いたとして、たった一時間足らずで六組分聞いてきたのか。
「すごいなぁ」
「何がなのです?」
「いやいくら気になることとはいえ、知らない人に聞き込みをして、他クラスの教室にまで乗り込む。
その精神力というか気概というか僕にはとうてい真似できないよ」
「フッフッフ。あなたもようやく私の凄さに気づいたようですね」
うざいな。やっぱりこういううるさい女の子は褒めるとつけあがるらしい。
「まぁ、私が探偵になるのは当然のことですが。なぜなら、世界は私たちの肩にかかっているからです」
まだ知り合って一日も経たない相手にこんな大ボラを言える度胸が僕の冗談として受け流そうか無視をしようか、
一途迷ったが、なぜか僕はその解答に真面目に答えてしまった。
「たかが学生の僕らに何も出来ないよ」
これは否定的な返しじゃない、彼女が大ボラなだけだ。
「なぜあなたは自分をそんなに卑下するのですか?」
そう言われると、何も言い返せない。
僕はこんな自分がそれなりに好きだが、嫌いになる時も多々ある。
それに、平木のことで自信なんてものはとうにガラクタになってしまった。
そうだ、僕は自分を卑下して相手に期待していたのかもしれない。
自分という人間が小さいと思うから、他人を大きいと思ってしまう。
だから他人に期待する、僕以外の人は僕よりも優しくて気が利いて、幸福だと。
でも、違う。本質は僕と変わらない。形と声と息が違うだけだ。
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