第15章「世界に関わる者」その3
小走りで舞台裏のドアを開けて、階段を登った。
役者たちが舞台の暗幕付近でスタンバっていた。
でも見た感じさっきの女の子はいない。
舞台裏の一番隅っこでガサガサした物音が聞こえてくる。
奥の方に行くと、誰かのお尻が見えた。
胴から上はカーテンで隠れている。
おそらく身体の線からして女の子だ思う、そしてこの女の子だ、タロットカードを落としたのは。
何かを探しているようで僕が後ろに立っていることに気づいていない。
「そんな所で何してるの?」
声をかけると、カーテンから出てきた。
その女の子は立ち上がって僕を睨みつけこう言った。
「あなたには関係ないのです」
思ったよりも小柄なことにも驚いたが、それより初対面の相手にこんな堂堂と非難できるのは平木以来だなぁと昔を懐かしむ感情が湧き立った。
これくらいの反応にもう驚く僕じゃない。
「じゃあ、先生に報告するわ〜。舞台裏で何か怪しい生徒がいるって」
勝手に舞台裏に入っている僕もそれに当てはまっている気はするが、物色している方がよっぽど怪しい。
こけおどしだと思っていたが、目の前の少女は一礼して、
「ごめんなさい」
手のひらを180度返すように態度が一変した。
正直こんな簡単に従順になるとは思わなかったので、あっけにとられ罪悪感を感じた。
僕は改めて濃い紫の大きい帽子を付け、黒いローブをまとっている少女を見た。
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