第12章「冷めた花火」その1


家に引きこもっているうちに、もう八月の半ばになってしまった。


最近は一時間宿題をして、三十分ソファで寝るのを繰り返している。


テレビを付けようかと思ったが、


昼ドラを見るほど男女のドロドロしたものに興味があるわけでもない。


はじめは自分の部屋でやっていたが、次第に飽きてしまった。


本当はこんなことをしている場合じゃないんだ。


僕には宿題よりもやらなきゃいけないことがある。


一ヶ月ほど前、渡された紙を確認して電話をかけようとした。


すると、階段をかけ下りる音が聞こえた。


急いで携帯を机に置いて、寝てるふりした。



「祐にぃ、そこどいてよ」


妹の彩が僕をソファから引きずりおろし、テレビを見始めた。


(一応)勉強中だったので、さすがに怒りが湧き出てきたが、


この間の晩御飯の件もあるし、兄として、高校生として、


妹の愚行を許すことにしよう。



それにしても、最近はこれが日課なんじゃないかと思うくらい、


ソファで寝ていると、母か妹に邪魔される。


ソファで寝ちゃいけない理由でもあるのだろうか。



「勉強ははかどっているのか?」


「う~ん、どうかな。とりあえず、この前の模試はB判定だった」


ちなみに僕はC判定だった。


「高校で童貞卒業できそうなの?」


こういうことを堂々と聞いてくるのは、すごいのか馬鹿なのかどっちだろうな。



「いや、わからん」


彩は、あからさまなため息がついた。


「受験生じゃないんだから、家に引きこもってないでたまには遊びに行ったら?


いつまでも彼女無しじゃ妹としても、心配になるよ」


妹に心配されるようじゃ僕も終わりだな。


さすがにここは弁明した方がいい気がする。



「今週は花火大会に行くんだよ」

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