第11章「確かな憩い」その13


「両親には感謝してるよ。言っていることも間違ってはいないと思う。


でも、私が通いたいなんて一言も言ったことないし、


何でそこまで名門にこだわらなきゃいけないのか、わからなかった」


西山はしばらく語り終えた後、深く息を吐いた。


「だから、ここは楽しいよ」


そう言って、ただひたすら遠くを見ているようだった。


彼女が一体何を思って、何を言いたかったのか、僕にはわからない。


けど、その言葉は以前よりも神妙さを帯びているような気がした。




「ごめんね、愚痴みたいになっちゃったね」


少し困ったような顔を向け、僕に笑って見せた。


なんで謝るんだろう?


君は自分を変えようと努力し続けているのに。



「それで心が軽くなるなら、僕に話せばいい。


僕は西山が変わるのを見ていたい」



何かが見つかるかもしれない。



こんな僕でも女の子の涙を止めることができるかもしれない。


特別とはいかないとも、誰かのささいな支えにはなれるかもしれない。


それから、たくさん馬鹿話をした。


昨日、ソファで寝ている時に母や妹に蹴飛ばされたことや


そうめんを食べてむせた直後に鼻からめんが出てきたこと。


いつも四組の委員長として、一軍の長として、


完ぺき美少女として教卓笑ってくれる西山とは違う。


「心から」、かはわからないが、いつもと違うというだけで嬉しかった。


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