第9章「集わぬ参加者」その7


次の日も放課後に残ることになった。


しかし、昨日よりかは数人くらい減っているように見えた。



正直、僕も今すぐに帰りたいのだが、


部活動も習い事もしていないから言い訳なんて思いつかないし、


家の用事なんて、いかにも胡散臭い嘘に思われそうで怖い。


それになぜか、平木が今日も残っている。


そのことに違和感が覚えるせいか、帰ることをさらにためらってしまう。


今日はさらに、みんなから話しかけられている。


どうやら、平木は美術が得意なようで、塗り方や水の配分をみんなに教えている。


僕は特にやることもないまま、何かをやっている感を出しながら、


平木とその周りを眺めていた。


すると、あるクラスメイトの男が僕に近づいてきた。



「おい、羽塚」



何やら、少しイライラしながら僕に声をかけてきた。



まずい、何もしていないのが、ばれたのか。



「羽塚、先生が視聴覚室でお前を呼んでいるぞ」



ばれていないことにホッとする暇もなく、焦りと不安を覚えた。


秋山先生か?何だか怖いな。


先生が生徒を呼ぶのに、経験上、吉報なことはあまりない。



「マジで?何かやらかしたかなぁ」



「言ってたろ、昨日から面談だって。先生、首を長くして待ってるぞ」



「あぁ、そうか。ありがとう」



僕はホッとしながら教室を出て、廊下を歩いた。


うちの高校には学期ごとに一度、面談があるそうだ。


学生相談ってやつだろうか。


それにしても、秋山先生と一対一で話すのは初めてだな。


鼓動が高鳴ることを確認して、扉を開けた。



「羽塚か。遅かったな」

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