第9章「集わぬ参加者」その6


「何してるの?羽塚くん」


右隣で声が聞こえた。


「何で残ったんだ?」


「いや、あなたがいたから」


ドキッとした。


入場門の二つの柱が教室に持ってくるまでの間、


僕は平木と話すことにした、いや、話したかった。



「なぁ、平木」


「何?」


「どうやったら、授業中に関係ないことができるんだ?」



「僕は怖いんだ。恥をかくことも、悪者になることも」



「私はやりたいことをやりたい。


理由なんて、それで十分なのよ」



「私は世の中ってつまらないと思うの。だから、勉強するの、本を読むの」


話に引き込まれた。





「羽塚くんがこれから何をしたい?」


その綺麗な強い目で、僕を見ている。


何も言葉が思いつかない。つっかえているわけではない。


本当に何も思い浮かばないのだ。




「あなたは、何のために生まれてきたの?」



そう言って、平木はみんなの手伝いをしていた。


僕は驚いていた、そして、みんなも驚いていた。


なぜなら、平木がそんなことをする人間だとは、


今までの行動からは読めなかったからだ。


でも、みんなに話しかけられている。


あまり反応している様子はないが、とけこんでいるように見える。


傍からみても、平木は誰もが畏敬の念を抱く気持ちを抱かれている。


しかし、そこに、意外な親しみを含まれ、もう無敵艦隊になったように思えた。


なら、一人の僕は、川に流れる笹舟なのかもしれない。


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