僕と幼馴染と元カノ

「こうして三人でどこかに遊びにいくのって初めての経験ですよね」

「言われてみればそうね」

「そうなの当然だよ‼ だって私は今でもこの人の事嫌いなんだもん‼」

「それはお互い様よ」

「なんですって!?」


 初めは咲夜と一緒に連れまわすのを心配していたのだけれどこうしてみると案外大丈夫そうだ。むしろ僕と二人きりの時よりイキイキしている様に見える。さすがは咲夜。人を元気にするのが上手い。


 それにしても初めはただ先輩から昨日の情報を聞き出すつもりだったのに、遊びにいくことになるとは思わなかった。まして咲夜も連れてとなると猶更だ。


「昨日の今日で女の子とデートをしている僕はリア充なのだろうか?」

「……いきなり何を言っているの?」

「いえ、何となくそう思いまして」

「まーくんがリア充か否かどうかは知らないけど、私から言わせてもらえばまーくんの情況は世の男性陣が羨むものだと思うよ」

「やっぱりそうだよな? だとすればそのうち僕は後ろから刺されるのでは……」

「女の子に?」

「……どうして女のなの? この話の展開だと普通男の子じゃない?」

「そうでもないわよ。雅也君ってかなりのすけこましだから」

「しかもナチュラルに女性の喜ぶような事をするところが猶更立ち悪い」

「二人して僕を虐めないでくれる!?」


 二人はやはり性格が似ているということもあって、やることまでそっくりだ。こちらとしてはいつもの二倍ダメージを負うので勘弁して欲しいところだが……


「何かしら?」

「いえ。何も」


 見た感じ先程の陰鬱いんうつな感じは様子は感じられないので、どうにか一安心だ。


「まーくん。浮気?」

「どうしてそうなるんだよ‼」

「だって今のまーくんの表情……明らかに彼氏が彼女に浮かべる表情だったもん‼」

「え!? そ、そうなの!?」

「そんなこと知りませんよ‼」

「……そう」

「まーくんは絶対に渡さないから‼」

「……わかってるわよ」


 その物欲しそうな顔今すぐ止めろ。そのせいで周りの人が僕の事をゴミみたいな眼で見ているじゃないか。そのせいでこっちのSAN値はゴリゴリ削れているんだぞ。


「あ、ついた」

「ここは……?」

「そうです」


 僕たちはカラオケだとかゲームセンターには行きはしたが、体を動かす様な場に来たことはなかった。それは偏に星野さんが運動が苦手そうに見えるからであり、今この場にいる者は僕を除いて皆運動ができる。その僕にしたって平均くらいで、何より体を動かすことは嫌いではない。


「何かもやもやしたときは体を動かすのが一番ですよ」

「それはそうなのだけど……」

「あ、もしかしてボーリング嫌いでした? それなら別の……」

「いえ、問題ないわ。それから木葉さん。人の事を射殺さんばかりにみるのは止めて頂戴。流石に怖いわ」

「咲夜……」

「そ、そんな眼で見、見てないよ‼ 事実無根だよ‼」

「それにしては眼が泳いでいるし、やたら言葉に詰まっていた気がするけど?」

「さ、さぁ? 何の事でしょう?」

「はぁ……本当に……はぁ……」

「ごめんなさい‼ だからガチでため息つくのは止めて‼」

「はぁ……」

「うわぁぁぁぁん‼ ごめんなさい‼」

「雅也君そこまでにしてあげなさい。流石に木葉さんが可哀そうよ?」


 これまた珍しい。あの先輩が咲夜に助け舟を出すとは。でも残念。この状況でのその選択肢は不正解だ。


「何勝手に会話に入ってきているの?」

「ええ……」


 マゾの咲夜さんは僕にこうやっていじられるのが大好きで、むしろ楽しんで乗ってくれていた。そんな時に先輩からの横入が入ったのだ。咲夜からすれば邪魔な行為に他ならない。


「先輩。どんまい」

「……ありがとう」

「ずるい‼ 私には何かないの!?」

「ふざけすぎ。もうちょっとテンション下げろ」

「そんなの無理だよ‼ だってまーくんとのデートなんだもん‼ まあお邪魔虫がいるけど……」

「木葉さん? 貴方さっき私がいてもいいって言ったわよね?」

「忘れました」

「この……‼」

「まあまあまあまあ。落ち着いて。今は早く入りましょう」

「……わかったわよ」

「ふん‼」


 本当この二人は本当に仲悪いな。でもそんな二人のやり取り少し面白い。とばっちりを受けるのは勘弁だけど。

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