【エピローグ】第1章 逃亡奴隷、薬を作る。


 結局、リーリスさんの梅毒は、僕の作ったペニシリンを4週間と2日飲んだ所で、

完治した。


 あの斑点はもちろん、奇麗さっぱり姿を消し、【鑑定】を使っても、ステイタス異常は出ない。


 なお、この薬ペニシリンは、エリシエリさんの薬屋でも取り扱って貰えるようになった。

 リーリスさんが、貰ったリポキロを返却し、身をもって効果を証明した事が大きいようだ。


 価格はリポキロの10分の1。つまり、大銀貨3枚。

 それでも、十分良いお値段なんだけど、これより安いと逆に薬として信用されないのだとか。


 原料費を考えると、すさまじい利益率である。


 その内、僕とリーリスさんの取り分が大銀貨2枚。

 半分づつ分けても一人大銀貨1枚。

 中々立派な収入源である。


 一応、サービスで、僕が【鑑定】して必要量を渡している。

 数週間分がまとめて大銀貨3枚なのだから、悪くない買い物のはずだ。


 ただ、「抗菌剤」には注意点があって、キチンと処方された分量、全てを飲み切らないと「耐性菌」が発生してしまい、薬が効かない細菌を生み出してしまう事がある。


 それを防ぐために、エリシエリさんから、キッチリ飲み忘れのリスクを説明して貰っている。


 この手の脅し……もとい、怖さの説明は、僕みたいなチビだと侮られるんだよね。


 その点【嘘発見】を持っているうえに、長らく薬屋を営んでいるエリシエリさんは、信頼感と安定感が違う。


 作り方については、秘匿にするつもりは無かったので、教えて欲しいと言われた人には説明したが、他の薬屋が同じものを作ろうとした場合「有効なカビ」を見分けるのがほぼ不可能な点がネックであまり広がって行かなかった。


 いや、本気で作りたいって言う人には、894倍のおカビ様を分けてあげたんだよ?


 でも、その「タネ」であるおカビ様の継続育成に失敗して別のカビや細菌を混入させちゃったりする例が多数発生。


 安定した薬作りをするのには、カビを見分けるための【鑑定】が必要、と言う事が

分かっただけだった。


 そうだよな。……僕だけ「電子顕微鏡」持ってるようなもんだもんな。


 そんな訳で、この新薬「ペニシリン」は、ほとんどウチの専売特許状態である。

 『リシスの薬屋』の評判は上々だ。




 ……カララン。


 薬屋の扉が開く音がした。


「あら~? 今日もお弟子さんなのね? エリシエリさんは居るかしら?」


「あ、ハイ、エリシエリさ~ん!」


 まったりと原材料の区分けをしながら店番をしていた僕は、奥で作業中のエリシエリさんに声をかける。


「おや、ウィーリン、どうしたんだい? 今日は雰囲気が違うね。」


 そう、このお姉さん、以前「梅毒」が第2期まで進行していた遊女のお姉さんだ。

 いつも、色っぽい煽情的な衣装を身に纏っていたのに、今日は地味で質素な色合いの服装だ。


 季節がもう夏真っ盛りだから、流石に薄着ではあるものの、胸やお尻を強調した派手な感じは無い。


「うふふ。実は、先週で借金を返し終わって、遊女を卒業したの!」


「おや! よかったじゃないか。おめでとう、ウィーリン。」


 ふんわりと微笑んだお姉さんは、遊女の時より、よっぽど色っぽい。


「それでね、わたし、ここで『ペニシリン』を買って飲んでいたでしょ?」


 そうなのだ。

 こちらのお姉さん、エリシエリさんのお勧めで、ペニシリンを購入してくれたお客様の一人でもあったのだ。

 今、彼女を【鑑定】しても、ステイタス異常は、無い。


「そうしたらね、遊女を卒業する時に『リポキロ』を貰ったんだけど、お前は飲む必要が無いって言われて……」


「なるほど、それを売りに来たって訳かい?」


「うふふ。そうなの。……ダメかしら?」


 お姉さんはいたずらっぽくウインクをする。


「なに言ってるんだい。『リポキロ』は貴重品だし、新生活には何よりお金が必要なもんさ。」


 エリシエリさんは、そう言うと小金貨をいくつか、奇麗な紙に包んでお姉さんに渡す。

 気のせいかな? 3枚より多い気がするんだけど……ま、良いよね。


「『ペニシリン』は魔力回路系の疾患には効かないし、『リポキロ』はそっちにも強いからね。助かるよ。」


 ……カララン。

 

 紫色の長い髪を揺らして、明るい陽射しの中に帰って行く彼女の横顔は、今まで見た中で一番きれいで、僕は、ほっぺたが緩むのが止められなかった。


<第1章おわり>


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 ここまで拝読いただきありがとうございました。

 第2章以降は現在書き溜め中なので、毎日更新は一旦、停止となります。


 ここまでで、お気に召していただいたら☆や感想をくれても良いのよ?

 (ちらっ、ちらっ……)

 つーか、むしろ、☆と感想下さい。お願いします。

 

 ずざっ!!(流れるようなスライディング土下座)


 だって、自分で書いていると、何処が読みにくくて、何処が読者様の性癖に刺さったのか分からないんだもんッ!!(血涙)


 「本好きの下克上」とか「レディーガンナー」シリーズみたいな面白い作品を書けるようになりたいんです!!

 割と弱い系の主人公が頑張って下克上する王道ストーリーがめっちゃ好きなの!!

 

 でもねぇ……伊坂は、中々自分の作品を客観的に見れないダメな子でねぇ……

 お願いします、このポンコツに愛の手を……!


 もちろんお褒めいただいたり☆をいただいたりすると、このおだてられた何とやらに化けますよ。ぶひっ!

 作成速度もアップします。ぶひ、ぶひっ!!


(おしまい!)

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小鳥な鑑定士の起死回生 ~カビから作る下克上~ 伊坂 枕(いざか まくら) @q6v6j

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