ハンガーにかからないほどに


同じTシャツを20年以上着続けると、ボロボロになってくる。

まず、首回りが破ける。

次に、横腹に丸い穴があく。

最後に、腹の部分が縦に裂ける。

まるで死体を解剖するかのように……。

私と同じクズみたいな人生を送っていれば、同じ経験をする奴も多いだろう。

もうこの時点で、すでにボロボロ。

何度も何度も縫い合わせているけど、縫い合わせているところから、再び、裂ける。

家族なし、友人なし、恋人なし、結婚なし、子供なしの人生。

見栄えを良くするという概念が、徐々に無くなっていく。

異性に対する可能性がゼロになった時点で、それが消滅する。

捨てる気力も無くなり、買い換えない。

別にいいじゃん、誰も見ていないのだから……、死ぬまで。

どう思われていようが、もう関係ない。

ファッションの一部として、わざと破れているのとは違う。

破れている箇所が違うから、誰にでもわかる。

転落という言葉には底がないな……。

ちょっと頑張ればまた元に戻れる……なんて思っているうちに時間だけがムダに通り過ぎ、何もできずに人生終わってる。

そんな奴が元ファッションモデルだなんて笑えてくるわ。

洗濯機はTシャツよりも前からあるのに、まだ壊れない。

そんな老老介護みたいな洗濯を終えて、Tシャツを干す。

ハンガーにかけて、カーテンのレールに引っ掛けて吊るす。

ああ……、ボロボロ過ぎて、ほとんど全てのTシャツがすり抜けて床に落ちるわ。

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