水たまりを飛び越えた恋する2人のあとで


道を歩いている。

私の目の前には恋する2人の姿。

大学生のカップル。

住宅地の細い道。

時折、抉れているアスファルト。

そこにさっきまで降っていた雨が水たまりを作っている。

解離の症状が酷くなると、無意識のうちに付近を裸足で徘徊してしまう、まるで認知症の老人のように……。

だけど、今日は違う。

なぜここを歩いているかはわからなかったが、普通に意識があり、物事への認知も可能な状態だった。

突然の笑い声……。

考え事の世界から、目の前の現実に引き戻される。

ああ……、そういうことね。

目の前の大学生カップルが、直系1メートルほどの水たまりを、仲良くジャンプで飛び越えた。

飛び越えた2人が一瞬、スッと水たまりを振り返った。

そのあと、チラッと私の顔を見て、何事もなかったかのようにスッと前を向いた。

そこに意図や意思は感じられなかった……、全ての動きが自然体だった。

家族なし、友人なし、恋人なし、結婚なし、子供なしの人生。

殺人願望と自殺願望が交錯する私の表情には、特に興味なしといったところ。

私の動きも自然体……、そのまま水たまりに足を突っ込むと、足首より下はもう水の中。

波が立ってしまったために、私の醜い顔が映ることはなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます