第89話 あの日のままだな?

「ゆ、結衣・・ 俺はあんな大事なことを忘れて・・・」


「いいのですよ・・ あなたは1度記憶を失ってるのですから・・」


「お、俺が⁉︎」


確かに・・ こんな強烈、そして大切な思い出をふつう忘れるか? 確かに結衣と高校で初めて会った時に妙に違和感を感じたけど・・


「あなたはあの後倒れてもう1度病院で入院したのです。その時に1、2年の記憶が途切れ途切れになっていたそうですよ・・」


「・・・・・」


俺がまさか記憶喪失になっていたとは・・ しかも何故親は言ってくれなかった? 結衣との大事な思い出もすべて忘れてしまっていた。俺は後悔してもしきれない・・


「結衣・・ 別に俺を許してくれなくてもいい・・ でもこれだけはわかってくれ! 俺はお前との思い出を1番に思っている!」


あんなに結衣と遊んだのに・・ あんだけ幸せな毎日だったのに・・・ 俺はなんてひどい奴なんだよ・・


「快斗くん・・ いいんですよ・・ こうしてまた会えたのですからね❤️ あなたは私との約束を守ってくれました!」


「あ、ありがとな・・」


もはや言葉が出てこない・・ 怒られて当然なのに、軽蔑されて当然なのに・・ 結衣はすべて許してくれた。こんなに嬉しいことはないだろう。


「快斗くん・・ たとえあなたがあの日々を忘れていたとしても、あなたは私の大好き💕な快斗くんですよ。あなたは優しいところも真っ直ぐなところも何も変わってはいませんよ?」


「ははは・・ そういう結衣は結構変わったな?」


「ふふふ・・ そうですね」


「じゃああの転校初日は知らないふりをしてたのか?」


「ええ、もしかしたらと思っていたのですよ?」


「わ、悪かったよ・・」


俺たちは、しばらくおしゃべりして笑いあった。思い出がなくったって俺と結衣はあの日のままだ。いつだって仲良しだと思う。


「私はいつまでたっても快斗くんが大好きですよ❤️」


「俺も結衣のこと・・ 嫌いじゃねえぞ?」


結衣が俺にキスをしてくる。この温かいキスはまぎれもなくあの日のものだ。


「みなさんには内緒ですよ💚?」


「ああ、そうだな」


また一歩、恋の行方が動き出す・・・




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