2ー102★契約者フィリア

【お主は先程から何をそんなに迷っておるのじゃ?】

『えっ?迷って…?』

【そうじゃ、考えが出んから手持ちぶさたに妾で遊んでおるのじゃろう?別に迷うことない、構わずにやればよかろう。お主にはそれだけの能力があるんじゃからなぁ】


状況を理解できない彼女を尻目に勝手に話を進めようとする自称碧玉。

だが、そんなことをされてはなおさら混乱するばかりなのは目に見えている。


『えーっと…申し訳ありません。その…』

【ん?なんじゃ?】

『はい、えーっと…碧玉様とお呼びすれば宜しいでしょうか?』


彼女はとりあえず右手の数珠に、そう話しかけていた。

もしも誰かが遠くから見ていたら実にシュールな光景に見えたことだろう。


【あー…、妾か?妾はなぁ…レヴィアタンじゃ】

『えっ…確かその名前は…』


彼女は一瞬考える、最初は知らない声がして「誰か?」と答えたら碧玉と言われ、碧玉に話しかけたらレヴィアタンと言われたのだが…


彼女の記憶によるとレヴィアタンと言うのは神の名前だと記憶していた。

確かノルドが言っていた気がする。

それも…


『聖杯の神様だった気が…』

【正確には聖杯に力を与えた神の名じゃ】

『えーっと…申し訳ありません。何か違いがあるのでしょうか?』

【お主、腰を低くしているわりには意外に物怖じせんのう。とは言っても、もしかして何にも考えてないだけか?まー、良いか…その方が話も進みやすいしのぅ。聖杯の神だと妾が聖杯を司っていることになろう。じゃが、その聖杯は実際のところ妾の力を受け継いでいる道具にせん。別に聖杯である必要性などは最初から無かったんじゃよ】

『えっ?えっ?聖杯が必要ないですか?でも、ワタクシ今こんな状況なのですけど…』


自称神の言うことが理解できなかったのだろう。

フィリアは混乱の色を露にしながら喋っていた。


【まー、良い。そのうち分かるじゃろう。もう妾とお主は一生の付き合いじゃからな】

『えっ?一生の付き合い??どういうことなのですか?』


一向に説明を使用とせず自分のペースで話そうとする神。

そして、その状況をただただ困惑しながら相手をする元王女。


【お主、確か数日前にあのエルダードワーフが言っておったことをもう忘れたのか?全くもってどうしようもないアホウじゃのぅ】

『エルダードワーフ?もしかして、それは…ノルド様のことでしょうか?』


エルダードワーフという言葉を彼女はしらない。

初めて聞いた言葉ではあるが…

彼女は元々ガルドの者ではない。

なので、この時の彼女はドワーフにはそういう種類があるんだ…

というくらいにしか感じていなかった。


【名などしらん、妾は契約者であるお主以外の名など覚える気もない】

『えっ?契約者?ワタクシがレヴィアタン様と?いつから?』

【ふん、そんなのは妾が今決めた】

『えっ?今?それは一体、何故なのでしょうか…』

【そんなのは、お主がその資格があるからじゃ。良かったのぅ!】


レヴィアタンの言葉の後、どこからともなく手を叩く音が聞こえた気がし、フィリアは周囲を見回すが…

周囲には何もないし誰もいない。

そして彼女は何度も首をかしげる。


【なんじゃ、お主まだ慣れておらんのか?本当に要領のえんヤツじゃ】


知り合ってという言葉がまだ早すぎるのではないか?

と思えるほどのやり取りしかしていない神は彼女に対して理解しろというような言葉を言ってくるのだが…


正直なところ理解などは誰であってもできないだろう。

だが分からないとはいえ、彼女なりにも一つだけ察することもある。


『えーっと…それは聖杯の影響ということでしょうか?』

【んー、まー、そういうことになるかのぅ。とりあえず宜しくなぁ】

『宜しくとは言われても何にも分からない状況で、そんなハイそうですかとは…』

【なんじゃ、意外と細かいヤツなんじゃな?まー良い。説明してやろう。そのノルドとか言ったかのぅ。エルダードワーフが聖杯の影響の果てにある結果としていくつかあると言っておったを覚えておるか?】


ノルドと初めてあった日、彼女は個室でノルドから色々なことを聞かされた。

その時のことを彼女はゆっくりと目を瞑りながら思い出す。


『えーっと、聖杯の影響ですね…それなら、モンスター化。後は、亜人、後は…治るでしょうか?』

【キサマ!妾を病気か何かと勘違いしているのかぁ?】


フィリアは一瞬、全身が寒気のような感覚に襲われた。


『えっ…それは…』

【全く、お主は…本来、妾に目をかけられるということは素晴らしい名誉なことなんじゃぞ。それを…まー、良い。そうは言ってもお主に資格があることは間違いない事実じゃからな】

『資格ですか…?それは契約者としての資格ということなのでしょうか?』

【そうじゃ、そして神器アークと言うのは、それを見定めるための道具にすぎんというわけじゃ】

『は…はぁ…』

【なんじゃ?返事が暗いぞ?】

『えーっと…少しづつわかっては来たのですが…』


とは言っても状況を把握しだしたとは言ってもそれはほんの一部。

彼女の中では他にも聞きたいことが多くある。

だが、あの自称神の性格…

彼女は一体どうすれば良いのか、具体的な方法が分からずに途方に暮れるしかなかった。

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神業(マリオネット) tantan @tantan3969

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