2ー99★もちろん彼女
小屋の周囲の説明をした後、俺とフィリアは軽く朝食を済ませた。
その間も先程同様に不思議な箱のことを喋っていたのだが、結果の方も先程同様に曖昧なのはもちろん、彼女の不審さだけが目立つばかりだ。
とは言っても今の状態、俺が近くにいる人物は彼女だけで彼女もまた然りな状態である。
今の状況で他に頼れる者もいないと言うこともあり、なるべくなら揉め事なども避けていきたい。
そう考えると、彼女にはあまり強く聞けずにいた。
彼女の方としても、朝になっていきなりモンスターの集団の中に自分達が何食わぬ顔で
待機していると言う現実を見せられて、かなり不安になったのだろう。
何やら俺の方に聞いておきたいことと言うのがたくさんあるようだったのだが…
正直なところ、この結界に関しては俺の方でも知らないことだらけでしかない。
なので彼女の質問には聞く前から答えられない自信が大いにある。
それに詳しくは聞いていないが彼女の質問に間違いなく、かつ満足に答えられるのは結界の本来の管理者であるノルドだけだと思う。
とは言っても面と向かって彼女にそんなことを言えるわけもなく、今のところはなんとか彼女を宥めるしか方法が思い付かなかった。
そのため…
朝食後、お互いがこのまま我慢比べのようにいつまでも徹夜状態を続けるわけにはいかないと言うことになり、交代で急速をとろうと言うことで、先ずはフィリアには先に休んでもらっている。
俺の方はフィリアの部屋も小屋の入り口も両方が見渡せる場所にいるのだが…
『んー…、でも怪しいのは間違いがないと思うんだよ…』
やはり考えることと言うのはフィリアのことばかりだった。
昨日夜から明け方と朝食中に話した内容を整理する限り、彼女はあの木箱についての知識と言うのは、ほぼないような気がする。
なのに任せてと言っていて、現に今でも自分の部屋で休むと言うのにも関わらず大事そうに抱えていってしまった。
正直、用途を知っていて大事そうに抱えるなら分かる。
分かるのだが、それなら俺に知らないと言う話をする必要もない。
自分が使い方を知っているから任せてくれと言えばいいだけの話なのだが…
そして、もしそうなら今俺もこういう感じで考えたりはしない。
後は彼女に任せて他に何かないかと考えるのだが…
『でも恐らく、それは違うんだよな…』
俺は彼女の部屋を見ながら、今自分の中で考えたことを打ち消した。
理由はもちろん、彼女からそういった説明がないからだ。
説明がないと言うことは、少なくとも彼女があの木箱に関する知識と言うのは俺と大差がないのだろう。
『大差がなくても俺に預けられない理由か…』
使い方を知らない人間が所持していたい理由。
所持をすると言うことは自分が持っていると言うことで、何故持っているか?
使い方や価値が分からない人間が持っていたがる理由。
それは、何らかの形で価値が上がるとか価値があると言うのを知っていると言うのが最も考えられる可能性なのではないかと思う。
『そうなると、自分一人では絶対に無理なんだよな…』
ノルドやアンテロ、エルメダに聞いての行動ではないとおよそではあるが、見当がついている今となっては思い当たる人物と言うと…
『アスタロトしかいないんだよな…』
俺の方に彼は昨日突然接触をしてきた。
なんの前触れもない
そして勿論その理由と言うのも何一つとして判明していないのだが…
もし仮に今の状態で彼と再び遭遇したとして、理由を聞いた場合教えてくれるだろうか?
恐らくではあるが、ヤツの性格からしてそんなことはあり得ないのだろう。
そして、はっきりと姿形を見たわけではないが、ヤツの方は何らかの形で俺の方を認識できる状態にあったのは間違いがないはず。
では何故ヤツは俺にあれからコンタクトをとろうとしてこなかったか。
それは俺以外にも、と言うより俺よりもコンタクトをとるのに適した者がいたと言うことなのだろう。
その後、フェンがいなくなったことと俺の他にこの場にいるのが彼女しかいないと言うことを考えると…
『やっぱ、フィリアとアスタロトがなぁ…』
ここを結びつけるのがしっかりと来るというのが俺の考えだ。
とは言っても、彼女がアスタロトの手先とかグルといったことまで疑っているのではない。
利用されているだけと言う感じもありうる。
むしろ利用されているだけと考えた方が逆に彼女が木箱のことを知らない説明にも納得がいくような気がする。
例えば「俺が戻るまでこの箱を無事に預かっていてくれ」とか、そんな感じの命令であった場合、彼女には箱の詳細などは伝える必要がないからだ。
とは言っても、彼女の行動があまりにも不審なのも事実な訳で…
こう言っては何だが、彼女の不振な行動により手詰まり感と言うのも感じているような気がする。
そうは言っても俺の方として知識や証拠があるわけではない。
今の自分の考えが正しいのか間違っているのかなど最終的に決めるには今の状況では材料が少なすぎた。
どちらにしろ彼女にはもう少し深くまで聞く必要か調べる必要があるわけなのだが…
『どうすればいいのか…』
かといって脅すわけにも、こっそり忍び込んで調べると言うのもやりたくはない。
綺麗事になるのかもしれないが、出来ることなら後腐れ無く過ごしたいと思っている。
恐らくは部屋の中で休んでいるであろう彼女に視線を向けながら俺は悩んでいた。
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