2ー85★優先すべきこととしたいこと
『あっ…、いたぁ…』
自分の左足首の辺りに何かがぶつかる。
そして、思わず「いたぁ」なんて言葉を出してしまったが、実際にはほとんど痛くはない。
恐らくは予想もしないタイミングと角度から、何かがそれなりの速度で当たったことで反射的に言ってしまった一言のように思う。
俺は念のためにと思い左足の様子と周囲の地面の様子を軽く見るのだが、やはり自分の左足にはダメージを負っているわけではないし、地面に不思議なものなどが落ちているわけではない。
多分だが足に当たった何かと言うのも小石とかそういったものなのではないかと思う。
思うのだが…
何かが当たることで別なことも考えてしまった。
この左足に当たった何かだが、ある程度には勢いがあったように思う。
と言うことは誰かが投げた?
もしくは誰かが地面を蹴ったとかなのか?
投げたか蹴ったかは分からないが恐らく他によって力が加えられたと言うことは、ほぼ間違いがないのではないかと思う。
となると誰だ…?
今の状況を考えると、のんきに冗談を楽しむ時間とは言い難い。
となると、俺に悪意など何らかの形でマイナス的なイメージを持つ誰かであろう。
周囲を見渡してそれが可能なのは…
姿を見えないアスタロト…?
でも当たったのが足?
モンスターと離れている距離で、足を狙うのか?
逃げ惑っている状況や周囲を囲まれて戦っている状況であれば、足を狙うのはかなり効率的に思えるのだが、今の状況は俺たちとモンスターは結界によって遮られている状態。
そんな状況で、足を狙ったところで何になると言うのだ?
追撃の手段がない状況で狙うとしたら、一発目は最も効果的にダメージを狙えるところを攻めると思うのだが…
もしも、俺がアスタロトの立場なら頭を狙うはず。
そう思い俺はもう一度自分の視線をもう一度下に向け地面を見回した。
すると…
地面には、いくつかの小石が飛んでいるのが確認できた。
高さはかなりない、地面スレスレの位置で横にある程度の速度で飛んでいるが、いかんせん小石。
靴や服の上からではやはりダメージなどは負わないであろうなと言う勢いでしかない。
やはり俺が先程うけた何かと言うのは小石が正体なのであろう。
と同時に…
誰が…?
と言う考えが頭の中をよぎる。
俺は小石の軌道を逆に追い掛けながら小石を飛ばしている正体を突き止めようと歩こうとしたところを思いっきりフェンに止められた。
『ちょっと、アタルさん!何やってんですか!』
『えっ?えっ?』
彼は俺を後ろから強引に止めてきた。
俺が装備している軽鎧の首と右肩の間の繋ぎ目部分を力任せに押さえつけるほどに…
押さえられた俺の方としては、突然のできごとだけに上手く返事ができなかった。
『え、じゃないですよ。なんで不意に前に距離を詰めるのかって聞いてるんです』
『えっ…、いや。足の辺りに小石が当たってな。誰が投げてきたのか知るためになぁ』
『誰が投げたって、そんなのモンスターの足に当たったりして跳ね返ったとかそんな感じなんじゃないですか?とりあえずモンスターの近くにはあまり近寄らないでください。結界の中とはいえ油断は禁物です』
『あー、ごめん。分かった』
フェンの言葉がかなり強い口調のものだったので、俺は素直に謝罪して自分の位置を確認してみたところ、結界の外まであと3歩ほどと言った距離まで進んでいたようだ。
かなり無意識の状態だったとは言え、確かに彼の言うように俺の行動は不用意なものだったのかもしれない。
『分かればいいんです。とりえずもう少し下がりましょう。』
『でも…他のみんなのことも気になるし、どうにかしてアイツらを追い払うか何かはしないとダメなんだよなぁ…』
そう思いながら、ノルドの部屋にあった投擲系の武器やマジックアイテムなどを俺は思い浮かべた。
恐らく小石が飛んできていると言うことは、結界を通さないのはモンスター本体のみを通さないと言うことなのだろう。
魔法など特殊攻撃についても検証してみたかったが、今さらそんなことを確かめる時間などない…
幸いにして、今モンスターからの遠距離攻撃などは受けていないので、とりあえずは考えないものとする。
となると…
こちらから弓矢などを打っていけばモンスターを倒せるのでは?
とは思うだが…
いかんせん数が多すぎる。
恐らく部屋に置いてあった武器やアイテムなど総動員したところで、全てを追い払えるのか疑問に思うほどのモンスターの数が確認できているし、それに数を減らしたら減らしたで更に増加したりなどと言うことがあったらもはやお手上げ状態になってしまう。
かといって時間がたつとモンスターがいなくなってくれると言う保証もない。
もしかしたら夜明けくらいにはいなくなってくれるのか?
そんな保証と言うのは、どこにもない。
安全だからと言っていつまでも小屋に籠城と言うのも、なんだか不安な感じがする…
それに、他のみんなの様子も気になってしかたがない…
『確かにそうですね。ただ、だからと言って不用意に行動しても良いと言うことにはならないですよ』
『うん、それは本当にそうだね。ごめんね。それで一つ気になったことがあるんだけど…』
俺は一か八かになるかもしれないが、フェンに思っていることを全て伝えることにした。
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