2ー73★見過ごせない光

『ナカノ殿、飛んだ感じはどうでしたか?』


グリエルモは地上に降りると、大鷲の姿から元に戻り俺に訪ねてきた。


『はい、はじめての空中で最初はちょっとと思ったんですけど…慣れると何とかなる感じはありました。後、コミュニケーションとか自分の動きとかが制限されるのも想像以上でしたね』

『コミュニケーションは、私があの状態ですと会話が出来ないので…申し訳ない』


そう言うと彼は黙って頭を下げる。


『いや、頭を下げないで下さい。でも、なるべくこまめに地上に降りる感じにすれば、そう困ることでもないと思いますよ。飛んでいる間、地上はトーレがいるわけですし』


俺はそう言いながら横を見るとトーレも満更でもないと言うような表情をして、こちらを見ていた。


『それでナカノ殿。一度、降りるように言ったのは確認事項のみと言うことですか?』


(確認事項のみ?)


グリエルモの言葉に俺は何か引っ掛かりを覚える。

発言の内容的に話の展開を変えることを望むものに聞こえたからだ。


(もしかしたら彼も気づいているのか?)


『えーっと、ですね。実は空中にいる間、何やら光みたいなものが見えた気がして…』

『ナカノ殿もですか…』


俺の言葉にたいしてグリエルモが軽く頷く。

やはり彼も俺が見た光が見えていたようだ。


と言うことは…

証人がいることから少なくとも俺の気のせいと言うことではないのだろう。


一方でトーレはと言うと…


『光ですか?どんなです?』


どうやら俺たち二人が見た光には気づいていないようだ。


『えーっと、トーレの位置からは見えなかったか…』

『ナカノ殿、でもそれは仕方がないのでは』


グリエルモの言葉の後、俺たち三人は周囲を見渡す。

今三人がいる位置は、トラボンの別邸で周囲は割りと大きな木に囲まれている。

恐らく俺とグリエルモの二人だけが光を確認することが出来たのは、空中からの視界のために障害物になるものが無かったためだろう。


『あっ、いや、別にいいんだ。見えてなかったのであれば見えてなかったで、ちなみになんだけどこの山の中で自発的に光を放つ現象とかモンスターとかっているか?』

『え?現象とかモンスターとかって随分と幅が広い質問なんですけど…どんな光だったんですか?』

『俺が確認したのは二回で、二回とも一瞬でついたり消えたりといった感じかな』

『うーん…一瞬ですか?それ、お二方ともが確認したのですか?』

『はい、ナカノ殿の言われる通りに私も確認しました』

『そうですか…?うーん…今のこの日暮れ前でも確認できるほどの強い光ですか…』


俺の質問にグリエルモが同意するような様子を見せると、トーレは腕を組み明らかに反応に困ってしまった。


だが理由は分かる。


怪しい光を一瞬だけど二回見ました何てことを、もしも俺が言われたとしたら恐らく俺も反応に困ってしまうからだ。

とは言っても、多分ではあるが三人の中でこの山のことに最も詳しいのは彼女のはず。

なので、駄目を承知で俺の方も聞いてみるしかなかった。


『やっぱり返事に困るよな…でもなー、あの光を無視していいのかどうかもわからないとなぁ。正直もう少し確認しておきたいこともあるしな』


グリエルモに掴まれて飛ぶことに少し慣れてきたとはいえ、それは万全ではない。

恐らく彼は明日、結構な速度を出した飛行をしなければいけないはず。


そう考えると彼との打ち合わせや練習といったものは今の段階では不十分と言わざるを得ないものだった。


『確かにまだ一回しか試してないですからね。これで今日は終わりと言うには早すぎですよね』

『だよね…』


明日の行動というのは、ある意味で一発勝負に近いところがある。


特に途中まで進んでしまった場合、簡単に戻れるような位置にいない可能性があるからだ。


多分、最終的に行動するかどうかと言うのは明日に行われるはず。

その際に、なにかの要因で後日に伸ばそうというのであれば、それは問題がないのだろう。

だが実行をしてから途中で引き返すと言うのはなるべくならしたくはない。


その為には

出来るだけ俺はグリエルモとの飛行には慣れておきたい。

前もって予想できそうな外的要因については、原因を調べておいたり対策をとることが必要なはず。


『方角とか距離とかは、およそですが分かったりしますか?』

『方角はあっちの方かな?』


恐らくトーレも基本的な考えは俺に賛成なのだろう。


俺はそう思いながらある方向を指した…


『あっちって、確かグリエルモ様やフィリア様と出会った洞窟とかある方ですよね?』

『多分ね、でもあるけどあの位置からは、もう少し突き抜けてるかな』

『それは間違いないですか?』

『あー、上から見た感じだと間違いないよ。でも何で?』

『多分ですけど…そっちの方角であれば確かめに行けるのではと思いまして…』

『えっ?なんで…?って…そうなの?』

『はい。洞窟とここはナカノ様が、往復しましたよね?』

『あー…、グリエルモさんを運ぶ時に確かにスキル使ったね』


俺はトーレに言われて僅か数日前の記憶を遡った。

確かにスキルを使ったのでここと洞窟の位置情報と言うのは分かる。


『それであれば、一度確かめた方がいいのではないですか…』


(んー…確かめにか…)


俺は彼女の言葉に何と返答して良いのか詰まってしまった…

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