2ー71★亜人能力解放状態
話し合いの結果、三人の中で都市まで目指すのは俺とグリエルモの二人だけということで落ち着いた。
とは言ってもトーレは別邸で待機ということではなく、途中までは三人行動となる。
どう言うことかというと…
先ずメインの移動方法は俺がグリエルモさんに吊られる形で空中から二人で都市になるべく近い場所を目指す。
開始は明日の朝からで期限は同日の夕方まで。
ただ、その場合はトーレが言っていた外的要因に弱くなる。
また空中に吊られた形だと俺の方も地図を広げてナビゲートなどをしにくい。
なので、都市までの道案内と地上周囲の様子見をかねて、トーレがその役割を行ってくれると言うのだ。
周囲の見回りも兼ねるとなると、もちろんモンスターとの戦闘も視野に入れる必要がある。
そうなると最初は俺とグリエルモの二人は彼女が危ないのでは?と思ったのだが…
そんな心配は無用のようだった。
と言うのも、彼女は都市までルーに乗っていくことになるのだが、こいつは非常に移動速度が早く、リエン山に潜むモンスターでは追い付くことができないと言うのだ。
恐らく道順はモンスターを避けながらなので最短ルートと言うわけにはいかない。
だが、安全に目指すということであればかなり有効な方法なのではないかということになった。
どうやら普段、彼女はここにいるらしく呼ばれたり用事があると何度も屋敷と都市を往復しているらしい。
話を聞いた俺たちはそれならばと言うことで、彼女に道案内の方を任せることにした。
ただし、とは言っても彼女にも自分の都合というのがある。
別邸での仕事の方も優先したいということだったので、彼女の方は明日半日になるか数時間になるか目標地点まで移動した後、俺たちとは別れここに戻るということで話は落ち着いた。
彼女と別れた俺たちは、後は
不安があるとすれば俺の力量だけなのだろう…
ここは無いと信じたい!
そして空中を飛んで移動するのはグリエルモの役目になるのだが、地上のトーレたちをどの程度まで上空から見ることができるのかを一度確かめておく必要がある。
と言うことで俺たち三人は屋敷の外に出て、一度予行演習をしてみようということになった。
『よーし!よーし!良い子だよぉ~!はい、大丈夫だよぉ~』
トーレが俺たちの二人の前で、ルーと名付けたグレートウルフに餌をあげながら言いきかせている。
ルーは最初に会ったときから、多少周囲を見回したり低いうなり声をあげたりはしているがトーレが声をかけると途端にに大人しくなる。
なので俺にはルーが彼女にかなりなついているように思えた。
『へー、上手いもんだなー…そこで言うこと聞くんだな』
『はい。ほぼ毎日、やってますからね』
『なるほどね。でもさ、このルーの小屋?って言うか巣ってこの屋敷の裏側には無かったよね?何処に住まわせてるの?』
『はい、この子はちょっと特殊な事情がありますので住みかは用意してませんよ。呼べば来るようにしているだけです』
『呼べば来る?遠くにいたりとかはないのか?』
『その辺は、ちょっと秘密で!と言いますか…それよりも何よりも外に出てるのって…』
彼女が若干白い目をしながら俺の方を見てきた。
無駄な話はするなと言うことなのだろう。
だとすると確かにごもっともだと思う俺はグリエルモの方を向いた。
『では、ナカノ殿。準備が宜しいのであれば始めましょうか』
『そうですね。お願いします』
俺の言葉を聞くとグリエルモは頷き、そのまま上を見上げ両手をゆっくりと広げた。
そして両手が肩と平行となる位置まで上がったと思うと、次の瞬間、グリエルモが輝き出す。
一瞬何が起こったのか分からず、周囲を見回しているとトーレと目が合う。
目が合った彼女は俺に冷たい視線を送りながら、彼から視線を反らすなとばかりに右手でグリエルモを指す。
俺は少し慌てて視線を戻すと彼の周囲の輝きはみるみる小さくなり、気がつくとそこには一匹の大鷲がいた。
恐らく、いま見ていた動作は話に出ていた
事前に聞いた話では別に近くにいても問題はないということだったので、詳しい話は聞かなかったのだが予想外に光とかが強かったので若干驚いてしまった。
とは言ってもいつまでも驚いてはいられないので
『グリエルモさん!』
先ずは少し大きめの声で彼の名を呼ぶと大鷲がこちらを向く。
どうやらコミュニケーションはとれるらしいのが分かった。
それであれば…
『それじゃー、この辺?』
俺はそう言いながら自分の右の肩を指差すと彼は頷き翼を広げる。
そして、そのまま跳ね上がると俺の着ている鎧の右肩と左肩の繋ぎ目を上手く利用するように足をかけてきた。
彼のとっている行動が、若干ではあるが俺の背中の付近なので細かく見ることはできない。
ただ彼がそのまま動きを止めたことから、どうやら準備ができたのだろう。
『グリエルモさん!準備が大丈夫なら、そのまま飛んでください!』
俺が、そう一言声をかけると彼は両の翼をめい一杯広げ、鳴き叫んだ。
そして、その鳴き声は力強く雄々しい鳴き声で、一瞬にして辺り一面を支配したようにさえ思える。
鷲だけにピィーーッとか、そんな感じの鳴き声を想像していた俺は驚いてしまったが…
すぐにそんな驚きはどこかに行ってしまった。
と言うのも自分の両足が一気に軽くなったこと、自分の視点がいつもとは違う感じで動いていることに、空を飛んでいるという感覚が俺の感情を支配してしまったからだ。
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