2ー61★万が一?

『でもフェン、この地図の位置情報個数が多すぎる気がするんだけど…この小屋から湖周辺くらいで足りると思うんだけど…これだと貿易都市ルートまで行けそうな勢いで位置情報が記載されてるぞ』

『はい。アタルさんには一度、貿易都市ルートまで戻ってほしいと思いまして』

『えっ?貿易都市ルートまで?なんで?』

『はい。先ず流れの方を説明しますと、トーレさんの小屋まで行っていただきます。そこでアンテロさん作成の薬をグリエルモさんに使って治した後、彼を貿易都市ルートまで運んで頂きます。そして更にティバーの四人に合流していただき、僕の方から彼らに手紙を渡すので、それをバビロンの指定された場所まで届けるように指示をして欲しいのです』

『ちょっ…ちょっと…、それを俺が一人でやるの?』

『はい。と言うか…誰かと一緒に行動しても構いませんが、それだとその分の精神消費が…』

『消費って…たしかにそうなんだけどさ…でも…往復でしょ?それだとフェンの持っている精神回復薬マインドポーションだけだと足りないよね…』

『恐らく貿易都市ルートまでは行けるはずです。なので、移動したらそこで精神回復薬マインドポーションを補充してください。資金についてはノルド様が出してくれます』

『えっ…?ノルドが…?なん…』


そこまで言葉が出ると同時に、俺の中で[もしかして?]とも同時に思ってしまった。

ノルドとフェンは今日一日、俺たちとは別行動だ。

先程の話を聞く限りでは、どうやら昼くらいにノルドは小屋に戻ったみたいなことを言っていた。

と言うことは…

恐らくは…


(二人で何か話しているよな?

何を?)


となるならば…


『アタルさん、すいません。実は昼間…』


フェンが、頭を下げてきた。

やはりそうだ!

彼は先にノルドにギーのことを話したらしい。


『あー、やっぱそうだよね。別に、それはいいんだけど…実際の物とかは確認してるの?』

『はい。昼間、ご飯を食べながら』

『なるほど…でも、ほんとにあれでいいの?』

『はい。大丈夫です。と言いますか、一人で山奥にいると、どうしてもああいった……スパイスと言ったものの類いが不足してしまいますので…実物をフェン君に見せられた時は即決してしまいました』

『そっかー…でも、あれでほんとにいいの?』


ちょっとしつこいかなと思ったのだが…

俺としては、ギーのカラクリを知っているので念を押しておこうと思い二度聞いてみた。


『はい、是非!』


ノルドの笑顔が眩しい…

普段の表情は怪物のようなのに…


『あーそれなら問題ないよ。それなら…多分、明日から動き出すんだよな?それだと作り方を見せると言うよりは…』

『それでですねナカノ様、多分、そういった事を料理できるようになったと言うことは、職業で料理人とか出ていないですか?』

『あっ…、出てるけど…それが…?』

『良かったです』


ノルドが安心しましたと言うばかりに一息つき言葉を続ける。


『はい、それであればティバーに会い用件を済ませた後、貿易都市ルートにいった時に職業登録所へ行っていただき、一時的に職業を冒険者から料理人へ変更してください。変更した後、商業系ギルドの方へ行きレシピの登録をしたいと伝えれば後は解決すると思います』

『レシピの登録?レシピって…、あのアンテロに渡したやつ?』

『はい、そうです。事が全てすんだ後、レシピを貰えると思いますので、ナカノ様は私にそれを渡していただければ取引は完了と言うことで』

『あー、なるほど。レシピって、そういう使い方するのか…って、でも…そのレシピってノルドに渡して完了なの?』

『はい、とは言っても私の方で、もらった直後にレシピのチェックはしますけど…』

『だよね…取引っていうくらいだから確かめをするのは分かるんだけど…でも分かるってことは…だよ…?そのレシピを見るか使用するかは出来るってことだよね?』

『はい、そうですけど…』

『でも、アンテロに渡したレシピもノルドって使用できたりするんだよね?』

『はい。でなければ持っている意味がありませんからね』


(ん?薬師と料理人の両方のレシピを見るか使用できるかするってことか?)


そこまで、とっさに思ってしまった俺だったが…


『あー…、そうなんだ…。取りあえずは分かった』


あまり個人の細かいことまで聞くのは良くないかなと思い、無理矢理話を完結させてしまった。


『はい。では、正式な取引と言うことでよろしいですか?』


フェンのこの言葉の後。


『あー、そうなるね』


俺は何気なく一言だけ喋り頷いた。


『ありがとうございます』


すると、俺の目の前に透明な物の存在が確認できる。

不思議に思った俺は周囲を見回すと横のフィリアとフェンのところには確認できない。

だが、俺のちょうど向かいに座っているノルドの方には俺と同様に透明な何かが確認できた。


『ん?これなに?』


俺は、フェンにふと聞いてみる。


『あー、すいません。つい癖で出ちゃいました』

『癖?』

『はい、ここ僕のスキル空間の中なのは分かりますよね』

『あー、まー。スキル使うの見てたからね』

『はい、このスキルは本来、外部の干渉を受けないように商取引を行おうと言うのが目的なんです』

『えー、商取引って…まさか…』

『はい。つい…いつもの癖で思わず出ちゃいました!』

『って、事は…俺の前に見えるこれって…契約書代わりってこと?』

『はい、あー。すいません。とは言っても、それは契約を結んだ本人同士しか確認できないものなので…』


フェンにそう言われた俺は横にいるフィリアを見てみると、何やら不思議そうな表情で俺の方を見ている。

話の内容が分からないと言った感じだ。

恐らく、本当に俺の目の前の物が見えていないのだろう。


って、それと同時にもう一つ思ったことがある。


先程フェンが言っていた万が一。

これも、その万が一の中の一つなのではないだろうか?

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