2ー52★良心なき快楽
『元々、レヴィアタンというのは聖杯に力を込めた神の名前です。言い伝えによると、その神の主食は感情と言われていて、特に嫉妬が好物であると伝えられています。当然、聖杯の力を得るためには、レヴィアタンの好物となる嫉妬を多く捧げなければいけません。そこで昔のとある呪術師が、レヴィアタンの力を得るために不特定多数の者の同意を得ずに嫉妬を集める
『ん?力を集めるために嫉妬を多く集めるんだよな?でも、それが何故、快楽につながるんだ?』
『はい、それがこの方法が呪詛として認識されたポイントになります。人は心に様々な感情と言うのを持っているのはナカノ様も分かりますよね?』
『あー、まー、そのくらいは…』
『快楽のみならず怒りや悲しみ、嬉しいことや楽しいことなど人の感情と言うのは数えるとキリがありません。ですが、その中で、どの感情でもいいですが一つだけでも無くなったとしたらどうでしょうか?』
『ん?怒りや悲しみとか無くなったら嬉しいよね。嬉しいことや楽しいこととか無くなったら悲しいよね…』
この時、俺の回答があまりに幼稚だったのか、全員が鼻で笑った…
『ですね。それは心の配分が変わるということになり、気づいたということになりませんか?』
『んー、まー確かに無くなった感情に反応して新しい感情が生まれたということだから、気づいたと一緒だろうね』
『はい、では続いて、その対象が二人。今回、具体的に感情を向けられた対象として
ノルドがフィリアが眠っている方を親指で指しながら言ってきた。
『えっと…、俺がフィリアに色々と思うということね。分かったけど、なるべく分かりやすくね』
若干、頭がヒート気味になってきたような気がする…
『では、先ずはナカノ様は彼女に対してどう思いますか?』
『えっ?俺の方もそんな知り合って時間たってないし…、今はせいぜい可哀想とか、綺麗だなとかかな…』
『はい、ここでナカノ様と彼女がどちらが美人であるのかを決める大会に出るとします。その時どう思いますか?』
『えー、大会に出る?だと、フィリアには勝てないと思うかな…』
アンテロがボソッと「私が近くに居たら絶対に止める」とか言ってたけど、そういうことではない気がする…
『なるほど仮にその時、ナカノ様には何がなんでも勝たねばならない理由があった場合、彼女に対して何らかの感情を抱いたりしませんか?』
『あー、確かに思うかもしれないね。それで嫉妬の感情が生まれるということ?』
『そうです。そしてもう少し細かく言うと、その時にナカノ様の中に生まれる感情は、負けるかもという不安だったり。負けられないという闘争心のような感情だったり様々なものが自身の心に宿るはずです』
『大会とかだったら、まー確かに色々思うはずだね』
『はい。そしてその時に生まれた感情が、彼女が事故に遭えば自分が優勝できるかもと思ってしまったとすると、場合によっては彼女を事故に遭わせたいという感情も生まれてくる可能性もあります。当然、後者の感情は行き過ぎで人としてよい感情と言えません。ナカノ様としては、そういった場合はどうしようとしますか?』
『忘れようとしたり、追い出そうとするかな…』
『そうすると、ナカノ様が全部は無理にしても嫉妬の一部分を自分の外に追い出すということになります。そして、そこに目をつけた呪術師というのが、その追い出された嫉妬の感情を対象となる一人に集中させる方法を思い付いたというわけです。一人や二人の嫉妬では全く気にならないとしても、多くの条件が重なり数えられないほどの嫉妬が重なっていくことで、対象となる者は本能的にですが気づくようになります』
『えっ…、もしかして数えられない人間から向けられる嫉妬の感情が重なっていくと病気になるとか?』
『そうではなく、あまりに多くの不特定多数から自身にとってマイナスにしかならない感情を寄せられて、自分が本能的に気づいた場合、何とかして回避したいとは思いませんか?その結果が彼女の病気という手段だったのです』
『えっ…それじゃー、彼女の本能が呪詛と喧嘩していたので病気になりましたということ?』
『簡単に言うとそうですね。そして、もう少し言うと…ここで彼女が病気になったのはナカノ様も知ることになり快楽の感情を覚えるでしょう。ですが実際のところは、病気の原因はナカノ様が外から追い出した感情が原因です。とは言っても、そういう事情は自分では全く知りません。もしも知っていれば自分の良心が咎められていたのではないでしょうか』
恐らく生まれてから数えられない目にさらされて生きていたであろうフィリア。
外見の美しさは今さらながら言うまでもないはずだ。
そして、僅かな期間ではあるが彼女に携わることによって、彼女の内面的な部分にも多少であるが触れている。
誰よりも優しく、繊細で素直な性格の印象を受けた。
会った時の行動も、自分から他人を傷つけようというものではない。
他人に迷惑をかけるのを良しとせずに、自分の中にある正しいと信じる道を生きているであろうという信念を感じることができた。
内面も外面も完璧だろうという印象なのだが…
聞いてはいないが…
ノルドの話からすると、こういった内面的な部分も人からの嫉妬をもらう原因になるような印象を受ける。
そうすると…
それらも自分を滅ぼす結果になるというのか…
なんとも皮肉な話に聞こえてしまう…
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