2ー35★知らない知識


『でもナカノ様、それでいいのですか?』


フィリアから話を聞いた後、俺はみんなの元へと戻った。

すっかり毒気が抜かれた彼女の様子から、話の内容的には嘘はついていないと思う。

であれば、アスタロトに繋がりそうな情報はない。

魔集器により報告する情報も集まった。

なので、あとは彼女にできる限りの援助をする相談に来ていたのだが…

魔集器を再生して、一通りの話し合いをした後…

アンテロが若干不満そうに俺に言ってきた。


『うん、一応本人はそれで納得しているし、あまり悪戯に期待させると言うのもどうかと思うしね』


アンテロの考えでは、彼女にできる限りの力を化してあげたいのはもちろんだが…

それよりも話に出てきて姿を誰も見ていないグリエルモなる人物の方も気になるようだ。

確かに俺も気になることは気になるが、だからといってむやみに首を突っ込むというのはどうかなと思う。


『先程の内容だと、何かしらの問題を確認しているのは確定なんですけど…』

『確かに、俺もそんな印象を受けたけど…でも彼女本人も体力や精神、魔力各種のポーションとか状態異常の薬系で大丈夫って言っているから、それでいいんじゃないの?』

『でも、アタルさん。彼女ってロスロー商会うちの従業員と繋がってるんですよね?』


(フェンまで入ってきた…)


『あー、エイジさんの話だとブレッグさんだっけ?確か、そんな名前の人が繋がってるんじゃなかったっけ?ですよね?エイジさん!』

『おう!ブレッグだ!』

『そうですよねぇ~。多分、ブレッグの知り合いがバビロンの王宮の誰かに繋がっててとか、そんな感じだと思うんですけど…でも、それって…』

『えっ…それって…って何?』

『いや、多分、それならフィリア様もグリエルモさんに状態異常の薬とか試してるんじゃないですか?』

『んー、そんな詳しく聞いてはいないけど…王さまが裏で資金援助してるなら試してるとは思うけど…足りないとか?』

『ですよねぇ~。ちなみにフィリア様は、それで治るとか言ってました?』

『えっ…、そこまで詳しくは聞いてないけど…。こんな感じでの援助でいいですかと聞いたら「うん」みたいな感じだったけど…』

『なるほど~。ちなみにフィリア様って、戦闘とかに関わる知識ってどの程度か分かりますか?』

『えっ…、未知数…って言うか…どう転んでも詳しそうには思えない感じが…』

『それなら、一回見た方がいいかもしれませんね…』

『えっ…なんで…??』

『多分…分かってない気がするんですよね…』

『『分かってない?』』

『『あー!』』


俺とアンテロの揃ってあげた疑問に対して、アンバーとエイジの二人が揃ってフェンの言葉に同意した。


『やっぱ二人もそう思いましたか?そうですよね!』

『えっ…何が??って、そんな分かりやすいことなの?アンバーさん』

『いやぁ~、さっきの魔集器の内容で男が王宮からの特別ポーション二本使ったみたいな内容があっただろう。たしかそれでも全快できなかったとか…』

『あー、ありましたね!』

『そんな重症で人一人を掴んで飛ぶなんて、どんな強者でも不可能な気がするんじゃ…』

『えっ…でも、嘘ついてる感じは…』

『そう!確かにあの話し方では嘘をついているとは思えなくてな…となると…もしかしてフィリア様は怪我の種類を間違えてるのではないかと思うんじゃ…』

『へっ?怪我の種類?』

『そうじゃ!恐らく、重症の結果で特別製のポーション二本使っても治らないのではなくて、元から治らない傷だったのではないかと思うんじゃ』

『元から治らない?グリエルモさんも呪詛か何か受けたってことですか?』

『呪詛じゃなくて、スキルの可能性はある!』

『スキル?』

『そうじゃ、フィリア様の話だと男が傷を受けたのは亜人能力解放状態トランスフォームで鳥になっている時なのは間違いないはずじゃ。でっ、あればじゃ、狩人ハンターをはじめとするある特定の職業のスキルの中には単純に相手にダメージのみを狙った攻撃だけではなく、追加効果を優先させる攻撃手段というものがあってな、それの餌食になった可能性もあるかなと思うんじゃ』

『追加効果?えっ?ごめんなさい。アンバーさん、もう少し分かりやすく…』

『全く…仮にも冒険者名乗るなら…だからお主はアホだ、アホだと言われるんじゃ!』


(いやっ…言ってるのはアンタだけでしょ…)


アンバーのやれやれと言う対応に呼応するようにトーレとアンテロが俺の方をチラチラと向いてきた。

こんな形で人の注目を浴びても嬉しくはない。

だが変に反応して話がややっこしいのも避けたいので、アンバーに続きを説明してもらうことにした。 


『ハンターの中には消えない傷ブレイクショットと言うスキルを使えるものがいるらしくて、どうやらそれに打たれた獣は傷が治らんらしいぞ!』

『えっ?傷が治らない?それって…反則技チートでしょ…』

『いや、実際には制約とかもあるようで、そう都合いいものでもないらしい。肉屋に並べる肉を捕獲する際に毒や麻痺などの効果を使うわけにもいかないから、それの代わりに位しかならないらしいがな…』


(何らかのデメリットは生じるんですか…

そう都合よくはいかないのか。

傷が治らない代わりに攻撃力が低くなるとかなのか?)


『もしかして…それで受けた傷で血が止まらないとか?』

『可能性はあると思うぞ…』


あれ…?

俺はこの時、狩人ハンターって誰か身近にいた記憶がするんだよなと思いながら自分の記憶をたどっていた…


(でもどうしても思い出せない…)


『そっかー、じゃー、その知識をフィリアさんに伝えて物資を送って後は帰りますかねぇ~』


『『『『『おい!』』』』』


俺の言葉に俺、カント、ローレン以外のその場にいるメンバーから一斉に突っ込みが入った…

危ない橋は本当に避けたいのに…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る