1ー73★トーレ再び

『今回のお話では奴隷制度についてではなく、従属のトゥリングについてですよね?』

『はい、そうです』

『それでは従属のリングを必要とする場合ということで説明させていただきます』

『分かりました』

『先程の手の指にまつわる思いというのはご理解いただけましたでしょうか?』

『もちろんです』

『それは良かったです。この効果を有効利用することにより、先人たちは様々な困難に立ち向かっていったらしいです。そして効果をもっと有効利用するために今まで以上に研究などが盛んに行われるようになったと聞いております』

『そうでしょうね』

『研究が進むにつれて指の効果というのは様々な応用が出来るのが分かってきました。そして研究が進むにつれて…いつの時代・あらゆる分野において善からぬことを考える者というのはいるようです』

『何か対策というか、取り締まりというのはされなかったんですか?』

『もちろん多くの取り締まりなどが行われたようです。ですが、そういった連中も色々と考え、研究の対象を手の指から足の指に切り替えたと言います』

『足の指……??』

『はい、足の指です。連中の研究は取り締まりの目を上手く欺けたということなのでしょう。もう言わないでも分かりますよね?』

『これが従属のトゥリングの始まりということですか?』

『そういうことらしいです』

『それで従属のトゥリングというのは具体的に、どういった手順を踏むのでしょうか?』

『先程、私は右手の小指には安穏無事の効果と伝えましたよね?』

『はい、聞きました』

『手の指の場合は、左右が別々で数えることになるのですが、足の場合は両足セットで考えることになります』

『ということは手は10個の効果で、足は5個の効果ですか?』

『手も足も効果は複数の効果が確認されているようですが…仮に一種類と考えるとそうなります』

『あっ…すいません。つい自分勝手に解釈してしまいました』

『いえ、いいんですよ。ここでは1種類とした方が理解しやすいと思います。それでは話を先に進めましょう』

『はい』

『そうだ、ここからは実際に見ながらの方が理解しやすいのかもしれません。すいません。少し席を外しますが、すぐに戻ります』


そうトラボンは言うと俺が返事をする前に、どこかにいってまった。

幸い青透明の領域は崩れていないので、スキルの範囲外というほどの遠くに離れたわけではないようだ。


『いやー、ナカノ様、お待たせして申し訳ありません』


そう言いながら待つこと数分ほどでトラボンは戻ってきた。

横には、以前ショックを受けた相手、トーレを連れている。


『ナカノ様、以前は申し訳ありませんでした』


彼女は右手で小綺麗なメイド服のスカートの端を持ちながら可愛らしいお辞儀をしてきた。

前回の衝撃知っている者とすると雲泥の印象を受ける。

だが、今回はトラボンがわざわざ連れてきた存在だ。

何か意味があるに違いない。


『連れてきて言うのも何ですが…ここから先はトーレもいた方が理解しやすいと思います。宜しいでしょうか?』

『俺の方としては、外に誤解を招くようなことにならないのであれば問題ないですよ』

『それは勿論、私のほうでも徹底させますので、トーレ!大丈夫だよな?』

『はい、ナカノ様、旦那様の不利益になるようなことは一切しないと誓います』


今度は、両腕を前に出した。

左手があれば両方の手が揃っている礼儀正しい一礼のように見えたはずだ。


『大丈夫です。トラボンさんのことは信用していますから』

『そう言っていただけるのであれば、何よりです。ではトーレ、素足になって私の横の椅子にかけてくれ』

『はい、畏まりました』


トーレはトラボンから指示を受けると俯き、トラボンの後ろの方へ移動した。

俺の位置からでは、何をやっているのかハッキリとは確認がとれない。

だが、トラボンの指示の内容からすると靴を脱いでいるとか、そんな感じのことなのだろう。


そしてトーレは準備ができたようで、素足のままトラボンの隣に座った。


『ナカノ様、トーレの足を見て何か気づくことはございませんか?』


トラボンが優しい表情で俺に聞いてきた。


『足ですか?えっと…細くて綺麗な足ですよね…』


俺は、どれだけ馬鹿なのだろうか!

彼はそう言うことを聞いてきたのではないだろう。

失敗したと思いながら前を確認すると…

トラボンは笑いを堪えるような表情だったのに対し…

トーレの目つきは何とも冷めたものだった…


『ナカノ様、出来れば視線の方を足全体から、足の指辺りに集中させていただけると宜しいのですが』

『あっ…そうですよね。さっき手の時も指それぞれに効果があるみたいな感じの話でしたからね…』


言われた通り、俺は自分の視線を足全体から足の指へと落としてみた。

すると…トーレの足の異変に気づく。

トーレの足の指が4本しかないのだ。

いや…待て!

トーレは以前の会話で猫人族だと言っていた。

と言うことは…猫人族の特徴っていうのは指が4本なのか?

いやっ…

でも無い指は中指…

真ん中がないというのは変な気がする…

それもちぎれているような形で…

ん?何かがおかしくないか?

俺はトーレの足の指を見ながら自分の考えが混乱していくのを止めることができなかった。

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