1ー43★理想の朝食


『おはようございます、ナカノ様!』


その声は爆睡中の俺の耳にイキナリ響いてきた。

俺は何事かと思い目を覚まして窓から外を確認すると、まだ日の出からそれほど時間が経ってないのでは?と思えるような景色が広がっている。

昨日は夜遅くまで話をしていたので、まだ全然眠い。

と言うか日の出を考えるほどの朝早くなんて普段でも起きることはない時間だ。

こんな朝早くに起こすのは誰だと確認してみたら、そこには昨日散々話をしたアンテロが元気に立っていた。


『ちょっ…あっ…おはようございます、アンテロさん…こんな朝早くにどうしたんですか…?』

『おはようござます。ナカノ様!こんな朝早くではないですよ。もう日が昇ったので起きましょう!』

『えっ…こんな…朝早くにですか…?』

『もちろんです!今日は私のために職業登録所に一緒にいくと約束したではないですか!それに私の事は呼び捨てで敬語も不要と昨日お話ししましたよね』


そう、昨晩の話し合いでアンテロは俺の家に住むということで、アンテロに対しては呼び捨てで敬語も不要というのがアンテロからの要望だった。


(正直、そういう事はどうでも良いんだけど…)


『あー、そう言えば…忘れてた…それより、なんでそんなに朝から元気なの?俺は…まだ眠いよ…』

『なんでと言われても、昨日はゆっくり眠れましたよ!それに日が昇ったら行動するのは当然の事ですから』


そうアンテロが言い終わると俺をベッドから引きずり出そうと手を引っ張ってきた。


『いてっ!いてっ!痛い!分かりました。出ますから!待ってください!』

『また敬語なんですね…』

『昨日の今日ですから…正直、まだ慣れないですよ…起きたばかりだし…』

『そうですね。徐々にですね。それより朝御飯の支度も既に出来ていますよ』

『そうなんですか?それは楽しみです』


朝から強引に起こされたのは正直思う部分はある。

だが朝からこういう会話をしながらというのは、俺の人生には今までになかった経験だ。

俺は多少の眠さはあるものの、新鮮な気持ちでアンテロと一緒にキッチンに向かった。

そしてキッチンのテーブルには今まで俺とは無縁だと思っていた素晴らしい朝食が並んでいる。

今までの俺の朝食というと黒パンと牛乳だけが定番だ。

そのまま食べるには固い黒パンは日で炙って食べるのが普通なのだが朝はギリギリまで寝ているタイプの俺。

日で炙る時間なんてないので牛乳に浸して、無理矢理柔らかくして腹につめる朝食が続いていた。

一方で今日並んでいる朝食というのが、炙ってある黒パンは勿論、薫製肉と野菜を合わせたサラダやスープの類いまで用意されている。

心のどこかで待ち望んでいた朝食がそこにはあったのだ。

昨日の話では家事のほとんどはアンテロがやってくれるということだった。

もしかしたら明日以降もこういう朝食を期待できるのかなと思いながら、アンテロと一緒に美味しい朝食をいただくことにした。

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