第78話 緊急動作停止


     078.


 このあと、連打されていたかもしれなかった『イン・ザ・フレッシュ』だったが、星井ほしい小春こはるによって完膚かんぷなきまでに粉砕されたことによって、虚空の果てに『いる』その存在の躍動は、ひとまず静止する。

 意識とか生命とか。

 そういう問題ではなく、そもそもとして■■■■■『■■■■■■■』という存在そのものがである。

 これが行った攻撃。

 それを言い換えるならば、免疫機能みたいなものだ。人体が外部からきた物質に対して攻撃をするようなものだ。

 だが。

 星井小春の行動。

 これは、世界を構築しているシステムとしては、だった。一発目、二発目ときた。そして、三発目が来なかったのは、このイレギュラーの事態に対して対応できていなかったからである。

 これが、機械的な追撃停止の理由。

 いうならば、エラーによる動作停止だった。


 相剋そうこく渦動かどう領域りょういきは不可逆的な概念である。

 時の流れが絶対であるように、逆流することはあり得ない。

 万物が内包する相剋渦動領域には『終焉』が存在する。すなわち崩壊。

 相剋渦動領域の限界に到達させる『能力』――それが、今この時点で星井小春が持つ『能力』である。


 だけど、響木ひびきは知っている。

 星井小春が、『能力』を持っていないことを。





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少し不思議なマザーグース かきはらともえ @rakud

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