第60話 高砂紫吹の「カントリーロード」 その①
60.
「私たちの所属する組織『マザーグース』には裏がある」
三つ編みが特徴的な少女、
これは、
鎮岩こと子と高砂紫吹。
同じ学年で『マザーグース』内部での同じ系統のグループに所属しているふたり。ふたりは特別に仲がいいということはなく、顔見知り程度の間柄だった。
そんなふたりが『マザーグース』の革命のために同盟を結ぶことになった。
きっかけがなんだったのかは憶えていない。
何か話をしているうちに意気投合。知らず知らずのうちに『マザーグース』に対して疑問を提唱するようになっていた。
「鎮岩ちゃんは『
「知っているも何も、同じ学校の後輩よ」
直接の面識はなかったが、ひとつ下の学年にいたのを憶えている。
「私が思うにね、この古平優って子は、もう死んでいるわ。別に死体を見たってわけじゃないから、憶測の域を脱しないけど」
「どうしてそう思うんですか」
「なんとなくよ」
「…………」
そう言われてしまえば、こちらは黙るしかない。
ちなみに。同じ学年であるにも関わらず、鎮岩こと子が高砂紫吹に対して敬語を使っているのは、高砂が『マザーグース』内部において古参のメンバーだからである。
時折そんな敬語も崩れてしまうくらいには仲良くなっているが、鎮岩は基本的に敬語で話をしている。
「『マザーグース』の勢力拡大も、その古平優って人がいなくなってからなんだよね」
「……それは、いささな強引なのでは?」
「私もそうは思う。だけど、偶然じゃないって感じる」
「どうしてですか?」
「古平優、彼にも『能力』があった。それを彼は『マザーグース』と呼んでいた」
「同じ、名前……」
「私も又聞きレヴェルだから本当かどうかわからないけど……これを無関係だって思うことは私にはできない。鎮岩ちゃんや、次のリーダーになる
「…………」
「彼女らに『マザーグース』の『歴史』が引き継ぎされていないのって、引き継ぎの体制が
鎮岩は正直なところ、この『マザーグース』には居心地の悪さを感じていた。
学校にやってきているスクールカウンセラーを利用して、少し話をしたら気分は楽になったが、それは決して根本的な解決をしているわけではない。
『なんとなく』で
「私は……この組織の在り方は、『誰も望んでいないもの』だと思っています」
鎮岩は言う。
『この組織の在り方』と言えば、『みんな仲良く』だ。
「誰も望んでいないけど、組織がそういう名目で存在する以上……『誰も望んでいないもの』を『誰かが望んでいる』とみんな思っている。そんなふうになっていると思っています。それを、私は変えたいと思っています」
「私も変えたいと思っているわ。だけど、望んでいる存在がいるのよ。この組織には。『こうあらねばならない』と思わせている何かが、『マザーグース』の奥に潜んでいるのよ」
「リーダー以外に、ですか」
「『マザーグース』……その発端はわからないけど、私たちが一年生のときにはなかった。私が加わったのも、鎮岩ちゃんが加わったのも二年生になってから。『マザーグース』の歴史は二年程度に過ぎない。だというのにリーダーは既に三度も移っているわ。それだけ新陳代謝が活発ならば、リーダーに何かがあるとは考えにくい。リーダーのようにグループを統治することなく、私たちに『在り方』を強要している人物がいる」
「…………」
「そして、明日からは春休み。これは逆に考えればチャンスだと思わない?」
「チャンス?」
「話し合いの鉄則よ。集団を相手にするときは、ある程度のきれいごとが必要。だけど、一対一なら腹を割った本音の話が効果的。春休みなら、ひとりひとりに腹を割った話をしていく時間もあるし、その行動が必要以上に伝播していくことはない。かなり隠密に行動できると思わない?」
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