第42話 地球外生命体談義 その②


     042.


『随分と回り道過ぎる質問だったのではないか』と反省する響木ひびきだが、この問いかけに対して思っていた以上の食いつきがあった。


「何をもって『宇宙人』と定義するかに寄りますね。まずはそこを突き詰めて考えてみないといけませんね」


 卯月うづき希太郎きたろうからそんなふうに切り返されて、思わず戸惑う。

「それはまた今度にすることにして――さて、それはどういうこと? 寧々ねねちゃん」

 危うく脱線するところだった話をなんとか軌道修正をしたのは小春こはる。宇宙人について話したそうにしている卯月だったが、気づかないふりをする。

宇井うい添石そうせき。本当かどうかわからないけど、今は『地球外生命体対策局』に所属しているんですって」

「ち、地球外生命体対策局?」

 卯月と小春のふたりは、言葉を繰り返した。

「それ以上は何とも言っていなかったわ。だけど、もし、――そうなると、あの病院での、宇井添石の動きはってことにならない?」

「あの病院に、って言いたいの?」

 小春の問いかけに、響木は頷いた。

「宇宙人の『討伐』か『捕獲』か……そのどちらが目的かわからないけど、もし、その目的で茄子原って人と宇井添石が『ぶつかった』のだとすれば、茄子原なすはらって人が宇宙人って考えられない?」

 あらゆる前提条件がある。

『地球外生命体対策局』なんてものが『存在する』という前提。

『宇宙人』なんてものが『存在する』という前提。

 この両方を『真実』であるとした場合の話である。

「いいえ、寧々ちゃん。それじゃあ噛み合わない」

 小春が言う。

茄子原なすはらあやと宇井添石は、たまたま病院で『衝突』したって印象なんだけど……茄子原綾が、もしも『宇宙人』だったとしても、この病院にやってきていたことと噛み合わない。卯月くんの襲撃は漆川うるしかわ羊歯子しだこだけで、加担してくる感じでもなかった。だから私も、茄子原綾も宇宙人を追っていて、この病院にやってきたんじゃないかって考える。漆川羊歯子による病院内での混乱も、私たちを狙ったというより――茄子原綾が病院内に侵入しやすくさせるための陽動だったんじゃないかって」

「ちょっと待ってよ、小春。それじゃあ、あなたは――茄子原綾は宇宙人を回収して逃げ切ったって言いたいの?」

「そういうこと」

「いくら何でも、宇宙人なんて……、そんな大きいものは……」

「私もそう思っていた。でも、さっき卯月くんが言ったじゃない。宇宙人の定義がどうこうって。あれで閃いたのよ。別に宇宙人って人型に限らないんじゃないかって」





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