死にたがりの灰かぶり姫とガラスのくつ

作者 千石京二

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★★★ Excellent!!!

飛び降り自殺を図った流々子は命を救われた。空中を歩く奇妙な男、黒飴亜目個によって。
流々子の存在を全面的に肯定してくれる亜目個の意図はなんなのか。
生きることに疲れ切ってしまった心優しい灰かぶりと、一風変わった王子様の美しい愛の物語。


読み終えた今、しみじみと満足感に浸っています。
主人公である流々子の目を通して切り取られる世界は、本当に痛くて、悲しくて、暗い。けれどもそこに、亜目個が現れることで魔法のように彼女の景色がきらきらと輝くものになる。描写される世界観、痛みを知っている二人のなんでもない会話、ちょっとした仕草。全てに心を奪われました。
特に終盤、亜目個の意図が分かるシーンでは思わず涙するほどでした…。

冒頭にも書きましたが、この物語は真実、愛の物語です。恋愛小説というよりも、愛というものの形を描いた物語。
それは男女の愛というところもそうなのですが、親愛とか敬愛とか、そういう全てのものを流々子と亜目個が体現しているのです。だからこそ、読み終わった時に余韻に浸りながら、あれこれと考えさせてくれるのだと思います。

本当に、良作でした。
心震える物語をお探しの方、ぜひ一度、お読み下さい…!

★★★ Excellent!!!

 ぜんぜん普通じゃないお話だけど、よくよく考えればわたしたちごく「普通」の人間のお話でもある、とわたしは感じました。

 わたしたちの大半は、もっとささやかな苦しみと、もっとささやかな救いとの間で生き(たり死んだりし)ているわけですが、突き詰めればわたしたちも、もっとささやかなレベルでこの二人と同じことをしているのだと思います。

 小説的に見るなら、もっとディテールを書き込んで大長編にすることもできたでしょうし、そうしても読み応えがあったかもしれない、とも思ったのですが、ただそれでは苦しみばかりが目に触れることになって、読むのが辛くなりそうですね。仮にそういう形だと、わたしは読み通せなかったかもしれません。

★★★ Excellent!!!

救済される女の子と、彼女を救うことによって救済された男の物語。
これでもかと彼女に降りかかる困難が、二人の関係の中で次々と昇華されて行くこのお話は、見かけによらず正統派のラブ・ストーリーなのです。
あと、バックボーンとなるSF要素が、実はかなりしっかりしていることが、読み進めていくと分かります。この点も魅力的だと思います。