「Last Year」

日曜日 午後から出掛けて

誰もいない職場にひとりっきりで残務整理

ネットワークに接続 キーを打ちながら

ついつい時計に目をやってしまう

どの時刻も どの時刻も

どの瞬間も どの瞬間も

私に1年前のことを思い起こさせる

今日という日が

どんな時も どんな時も

どんな場面も どんな場面も

私に1年前のことを思い起こさせる

意識が半分に分かれているような感じ

ここにいるようで ここにいない

意識がどこか彷徨っているような感じ


廊下に影を落とす光を見ては街並を思い出し

階段を上りながら歩いた道のりを思い出し

窓から見える山並みを見ては咲いていた桜を思い出し

携帯を見てはあのときやりとりしたメールを思い出す


ずっと話していた

あの場所で 時間が過ぎるのも忘れて

ずっと話していた

誰にも1度も話したことのない自分自身のことを


誰もいない この広い部屋で

ガラス越しに夕闇に変わっていく空を見て

そんなことを思っていた


本当に1年 経ったんだ…

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