「0」

午後11時過ぎ

まだ外は冷たい風が吹き荒れている

窓ガラスを揺らすその音を聞きながら

ふと ベランダに出てみた

ものすごく明るい

庭へ降りる戸の格子がくっきりと足元に影をつくる

もちろん自分自身の影もくっきりと

なぜこんなに明るいのかと思うほど

あたりはまるで冷たい光に照らされた昼間のよう

手を差し伸べれば光がつかめそうなほど

凛とした光があたりに降り注いでいる

ちょうどあのとき 10月14日の真夜中のよう

この光源は一体何処から? と思いながら空を見上げる

高度77度 月齢13.6の月がそこにあった

風に流される雲を払いのけながら十五夜が正中を迎えていた

……

何かがわかりかける

何かがつかめそう

この月が教えてくれる何か


ずっと引っかかっていた一昨日の日記に書いた「第五の書」にあった言葉


「私は自らの意志を働かせるために我が道を行く」


I will to will thy will.

そんな言葉が浮かんだ

深紅のバインダーの1ページ目に書きつけた言葉のひとつ

このことを突き詰めよとそう言いたいのだろうか?


「私は<全>である。

何故なれば、

私にとって存在するものはすべて、

私の本質の或る傾向を考えることに必要な表現であり、

すべての私の思考は私の<名前>の文字に過ぎない。」


                    by「第五の書」 最終の所作

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