「Bigthunder Mountain」

今回の旅行は私にとっても 家族にとっても 「彼」にとっても

特別な意味を持っている

それを知っているのは私だけだけれど…


落としめの照明の中にそびえる人工の山

線路を滑走する車輪の音と乗客の歓声

昼間は200分待ちだったアトラクションも

日が暮れるとともに25分スタンバイへ


シンデレラ城のサーチライトの向こうに金星が見える

こちらが南側

リゾートゲートウェイステーション側には三ツ星

こちらが東側

今は新月だから空に月は見えないけれど

この世界のどこにいても空にある星は変わらない

自分の住む街と同じように今までと変わらず瞬いている


空に向かって真っ直ぐ伸びる光の柱にそって視線をあげる

鉱山列車に乗り 角度のついた坂を上りながら「彼」に意識を向ける

私の目を通して「彼」に今から体験する風景を見せることは可能なのか

そんなことを考えているうちに列車は所定の位置から落ち始めた

風を切り走る列車

遠心力で浮き上がる身体

空を飛んでいるような感覚

重力から解放された気分になる

もの凄いスピードで疾走しているのになぜか視線が固定する

目の前にある 曲がりくねった青い線路の向こうへ

藍色の夜空にくっきりと視える白く輝くオリオン座へ

その風景が視えた途端に時間の流れがゆっくりになった気がした

ストップモーションのように

不思議な感覚のまま4度目のフォールダウンが終了

やがて 鉱山列車は現実世界に戻るように停止する


家族みんなで乗った4分間

一瞬でも「彼」と感覚をともにできたのだろうか

私は久しぶりの疾走感で楽しかったよ

「あなた」は?

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