「Half Moon」

午後4時半すぎ

南に向かって車を走らせる

真っ白な金星と木星が濃紺の夕闇のなかに肩を並べている

月の出から4時間

東の空にそれとほぼ一直線になるように並んだ白い月

360度見回しても

地平線に張りつくように横たわる黒い雪雲が風に流されている

ちょうど上空だけぽっかりと晴れ上がっている

何も障害物がないから綺麗に瞬いて見える


午後6時半すぎ

東に向かって車を走らせる

大きな交差点で右折しようとレーンに入る

私の車は最後尾 あと1~2回信号が変わるのを待たなければならない

フロントガラスにぽつぽつ…と水滴

「雨…か」と思った次の瞬間

小雨は雪に変わっていた

風に舞う雪

舞うなどとかわいい表現は似合わないほど

吹雪のように吹き荒れる雪に変わっていた

一面 雪で白くなる

この地域は12月の初めに必ずこんな雪が降る

冬の女王の降臨

こんな雪でも私は好き

空から降り落ちる雪が好き

こんななかで雪を見ていたいと思う

いつまででも雪を見ていたいと思う

そんな雪の向こうに光輝く上限の月が微笑んでいた

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