幽霊には足がない

作者 千石京二

86

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★★★ Excellent!!!

ごく普通の(ただし幽霊が見える)女子高校生と、焼死体の幽霊と、轢死体の幽霊のお話。
面白かったです。読み手の意識の誘導の仕方というか、物語の見せ方や方向づけがもう完璧でした。
冒頭、あからさまに不自然な連呼により表される『普通』への執着。ほのぼのとした世間話の合間に徹底して挟み込まれる、三浦さんについての鮮烈な描写。物語世界の法則、どこかほのぼのとした感覚をつかみかけたところで、でもそれをもうひとまわり広げるかのような中村さんの呻き。なにより、表題にもなっている、『足がある/ない』という要素の使われ方。
序盤だけでもこれだけの弾幕、こんなの面白くないはずがありません。
きっとそれそのものは素直なはずの話の筋に、でも読んでいて楽しい起伏をつける。物事を語る順番や焦点の絞り方、ある種のミスディレクションのような手法で展開を彩り、先へと読み進める行為の一歩一歩を面白くする。その上で、というか、だからこそ生きてくる、軸を捉えた素直な物語。
最高でした。ストーリーを文字で語ることの意義、すなわち小説であることの武器を最大限に活用した、とても素敵なお話だと思います。

★★★ Excellent!!!

 めちゃくちゃ丁寧に編まれた話でした。
 主人公あかりさんが自分のことをどう定義するのか、そこがお話の肝であったように思います。
 冒頭からしばらく、あかりさんは「自分は普通の女子高生だ」と自らに、そして世界に言い聞かせています。
 幽霊は見えるけど普通の女子高生なので何もできない、という意味でもあり、同時に幽霊が見える異常性をしっかりと自覚しているからこそ出てくる意識です。

 ここから先は中盤以降の話に触れます。
 あかりさんは中村さんに何かできないかと考えて、実行することで、自らの定義を変人へと改めます。幽霊が見えるから、とも言っています。
 二話目の最後にある「幽霊が見えるだけの私にも、まだできることがある、そう思いたかっただけだった。」という思い、これは中村さんへのものであり、それ以上に三浦さんへのものでもあるのですね。たぶん。
 きっかけとなったのは中村さんだけど、その思いの火種は三浦さんと接した日々の中でじっくりと育っていたもののように思います。たまたまそれがこの日だったから、この日のお話が小説として切り取られた。その塩梅がとても素敵です。
 ここであかりさんが変人として、幽霊が見える人として生きていく。そこで終わったとしても十分に良作だったのですが、作者さんはさらにその上を行きました。
 最終話「三浦さんと私」の完成度が強すぎました。
 三浦さんがあかりさんに望んだのは、「幽霊が見えなくても出来ること」なんですね。それをあかりさんがしてくれたら十分だと。
 そこをあかりさんもまたちゃんと、受け止めて、理解したことが分かる。だから結びの文章がすとんと胸に落ちるんですね。
 素敵なお話をありがとうございました。

★★★ Excellent!!!

霊感の強いあかりちゃんは、三浦さんという仲良しの幽霊と一緒に図鑑を読むために、本屋に出向いた。
しかし道中で新たな幽霊と出会う。会話を通して何かを思ったあかりちゃんは、「自己満足」という名目で行動を開始する。

あかりちゃんは何をしたのか。
新しく出会った幽霊にはどんな未練があったのか。
三浦さんは何を願ったのか。

自称普通の女子高生の、全然普通じゃない話。

★★★ Excellent!!!

 死んだらどんな想いも無意味になるというのが持論なのですが、この物語の登場人物は誰もが優しくて、生きていようと死んでいようと人を想う気持ちを持っています。それでも、やはり死んでしまえばどんな気持ちも届きません。
 この物語は、死者と生者の間に横たわる「想い」を繋ぐ、優しい物語なのです。

★★★ Excellent!!!

ヒロインのあかりちゃんは、心優しい普通の高校生です。
「お化け」が見えることを除いては……。

空地にいる、焼けて死んじゃった三浦さん。
記念日に交通事故に遭った中村さん。

お化けだって、お化けになりたくてなったんじゃない。突然の死を受け入れられなくて、まだまだやり残したことがあるから。

暖かくて切ない、そんなホラーお話です。

★★★ Excellent!!!

もしあかりちゃんのように、自分にも幽霊が見えたら、自分だったらどうするだろうかと、ふと考えました。
『助けたいのは山々だけれども、そんな力はないから助けてあげられません、ごめんなさい』
と、心の中で思いつつ、素通りするに違いありません。

亡くなった人の心に寄り添ったあかりちゃんの『純度の高い自己満足』が、いかに尊いものかを感じました。

優しさとは何なのかをそっと教えてくれる作品だと思いました。

★★★ Excellent!!!

ホラーです。ジャンルがそうなってます。でもホラーなのは一部の描写だけで、登場人物は死者も生者もこの上なく繊細で優しい。一部の描写はたしかにホラーだけど、読んでいただければきっと、この物語の優しさに胸を打たれるはずです。